標数2(の代数閉体)上の(非特異)2次曲線について
(私はF_2の代数閉包を想定している)

以前に(標数0では)「P^2の一般な5つの2次曲線にすべて接する滑らかな2次曲線は3264個ある」という事実を紹介した。 http://searial.web.fc2.com/aerile_re/chow8.html 今回、標数2では、3264個ではなく51個になるというpdfに出会った: http://www.numdam.org/article/CM_1978__36_1_101_0.pdf" 最終的にはパラメータ空間のブローアップでのChow群を計算するような内容である。 そこまでは追い切れなかったが、標数2の2次曲線を取り扱う経験をしたので計算を書き留めておく。 [A] strange pointという点について知った 標数2ではすべての接線は共通の点を通るということを知った。それを観察した。 [B] 2次曲線のパラメータ空間P^5において、特定の2次曲線に接する2次曲線の集合は、6次の(4次元)超曲面をなすのであった。 (上記ページの[2-1]で書いた。) これが、標数2では、6次ではなく3次の超曲面をなすことが書いてあって、それを観察した。
[A] F = axx+byy+czz+dxy+exz+fyz = 0 で定義される2次曲線Cを考える。
[指摘] d,e,fがすべて0のときは、Fは(sx+ty+uz)^2と分解される。 (標数2ではF_qの元はF_qに平方根を持つ。) 従って以下では [d:e:f]≠[0:0:0] を想定できる。
・strange point と呼ばれる点(和訳語見当たらず、保留・・) C上の点[u:v:w]における接線は、(dv+ew)x + (du+fw)y + (eu+fv)z = 0 と書ける。 そうすると、点[f:e:d]は、[u:v:w]に関わらずこの接線上に存在することが分かる。 すなわち、Cのすべての接線はこの点を通る。これをFのstrange pointと呼ぶ。
[手頃な例] F = xx+yy+zz+xy+xz+yz の場合 ∇F = [2x+y+z:2y+x+z:2z+x+y] であり、[x:y:z]=[1:1:1]で特異 F = xx+yy+zz+xy+xz の場合 ∇F = [2x+y+z:2y+x:2z+x] であり、[0:1:1]で特異
・特異点条件: (dy+ez)=0, (dx+fz)=0, (ex+fy)=0, axx+byy+czz+dxy+exz+fyz=0 が共通解を持つ条件を考察すると、aff+bee+cdd+def=0 を得た。 従って非特異なものには、aff+bee+cdd+def≠0 なものを考えれば良い。
[非特異な例] F = xx+yy+zz+xy の場合 ∇F = [2x+y:2y+x:2z] であり、その零点[0:0:1]は曲線上にないのでCは非特異 曲線CはF_2範囲で3つの点を持つ:[x:y:z]=[0:1:1],[1:0:1],[1:1:1] それぞれの接線は、x=0,y=0,x+y=0 であり、strange point [0:0:1] を通る。
*逆に、strange pointを通る直線はすべて曲線Cに接するか?(連立方程式的には自明でない)
F_q範囲(qは2の冪)で定点を通る直線は(q+1)本ある。 (例えば点[x:y:z]=[0:0:1]を通る直線は、Ax+By=0 と [A:B] でパラメータ付けられる) 一方、https://mathlog.info/articles/2486 のように、 種数0である2次曲線は、F_q範囲に(q+1)点を持つ。 異なる点での接線は異なるので、(q+1)本の直線と1対1に対応する。
[標数0の双対曲線との対比] ・2次曲線の接線族は、双対空間でも2次曲線をなす。 ・定点を通る直線族は、双対空間では直線をなす。 これらは両立しない。

[B] 特定の2次曲線xx+yz=0 と axx+byy+czz+dxy+exz+fyz=0 が接する条件を計算する 接線は、それぞれのstrange point [1:0:0], [f:e:d] を通る直線 dy+ez=0 である。 z=dy/e, x=sqrt[d/e] y を得て、ad/e + b + cdd/ee + d√[d/e] + e√[d/e] d/e + fd/e = 0 √がつく項が打ち消し合って ade+bee+cdd+def=0 を得る。
[標数0の場合の計算の対比] xx-yz=0 上の点は [x:y:z] = [mn:mm:nn] とパラメータ付けられる axx+byy+czz+dxy+exz+fyz = 0 に代入すると ammnn+bmmmm+cnnnn+dmmmn+emnnn+fmmnn = 0 これを[m:n]に関する4次方程式としてみたときの解が交点なので、その判別式が、接する条件となる。 これは手計算では難しいが、a,b,c,d,e,fの6次式となる。
*標数2ではこの6次多項式は (ade+bee+cdd+def)^2 と一致することを計算機で確認した。
2021/07/26 ノート一覧 inserted by FC2 system