4次のガウス和と周辺


2次のガウス和は平方剰余の相互法則の証明の1つのにも使われ、良く知られている。
4次のガウス和の具体的な値についてはネットで調べてもそれほど見当たらない。
ガウス和が分かると、ヤコビ和が分かる。
そしてある種の代数曲線をmod p還元したときの解の個数に応用できる。
この辺りについて紹介する。

内容:
[概要]
[1] 2次のガウス和の場合
[2] 4次のガウス和の戦略
[2-1] c[0]の決定
[2-2] c'-c"の決定
[2-3] 計算
[3] ヤコビ和を得る、ついでにX≡-1 (mod 4)が分かる
[4] 代数曲線への応用
[5] 周辺

[追記:読み返すと√aが2乗してaになる複素数のうちどちらを表すかについて曖昧である]
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[概要]
このノートを通して p=4N+1 を素数, w = exp(2πi/p), χは4次の指標(の1つ), 
A[k] = Σ[χ(d)=i^d] w^d (k=0,1,2,3) とおく。
(2次のガウス和の議論以外では)Nは自然数である。
対応するガウス和G(χ)は、Σ[k=1..p-1] χ(k)w^k で定義され、
G(χ) = A[0]+i*A[1]-A[2]-i*A[3]と表せる。このノートではこれを単にGと書く。

χは具体的には、mod pの原始根rを1つとって、χ(r^n)=i^nと定まる。
例えばχ(a)=1 とは、4乗してaになる剰余類があることを意味する。
nがn=p-1まで動くと、n=0と同じ剰余類r^n≡1に戻り、p-1個の剰余類を網羅し終わる。
ちょうど真ん中 n=(p-1)/2 のとき、r^nは-1 という剰余類を与えるはずである。
従って、p≡1 (mod 8)のときχ(-1)=1で、p≡5 (mod 8)のときχ(-1)=-1となる。
また、指標は、性質χ(u)χ(v)=χ(uv)を満たす。
従って、p≡1 (mod 8)のときχ(-u)=χ(u)で、p≡5 (mod 8)のときχ(-u)=-χ(u)である。

例えばp=13で、mod 13の原始根2を使ってχ(2^n)=i^nで定めるとχ(d)は
d=1,3,9 のとき 1
d=2,5,6 のとき i
d=4,10,12 のとき -1
d=7,8,11 のとき -i となる。
A = [w+w^3+w^9, w^2+w^5+w^6, w^4+w^10+w^12, w^7+w^8+w^11] となる。(wは1の原始13乗根)
ガウス和Gを計算すると G = √( (3-2i)*√13 ) という値となった。

いくつかの素数で計算すると、G^2 = (X+Yi)√p,
X,YはX^2+Y^2=pを満たす整数で、XはX≡-1 (mod 4)で値と符号が決定される,
という結果を観察できた。以下ではこれを示し、周辺について少し紹介する。
なおYの符号はχの取り方に依存する。(χの取り方を変えるとA[1]とA[3]が入れ替わる。)

途中、B(p)という式を使う。後で示すように X=B(p)/2の関係にあり
私の質問(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13196981993)
(いくつかの私のメモも書いてある)で紹介された文献:
https://core.ac.uk/download/pdf/81553650.pdf
で得たものである。(mathmath0626さん紹介ありがとうございます)
この文献で使われている記号 A^k(b) は私の (1+4A[χ(b)])^k に対応する。
例えば Lemma 1 のb=1の場合は私の記号で 1+4A[0] = √p + (2A[0]-2A[2]) という主張に相当する

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[1] 2次のガウス和の決定は調べればいろいろ方法が見当たるが、
後で4次のガウス和のときに使う方法を紹介する。
ここでは p=4N+1,Nは自然数 に限らず、p=2N'+1,N'は自然数 とおく。

2次のガウス和は、G'=Σ[k=1..p-1]χ^2(k)w^kで定義され、
先の記号を使えば A'[0]=A[0]+A[2], A'[1]=A[1]+A[3] により G'=A'[0]-A'[1] と書ける。
# p=13の場合 G' = (w+w^3+w^9+w^4+w^10+w^12)-(w^2+w^5+w^6+w^7+w^8+w^11) である。
χ^2(k)は平方剰余記号(k/p)と同じ意味である。

G'^2 の展開の様子を考えて、
G'^2 = Σ[k=0..p-1] c[k]*w^k とおく。(w^p=w^0より指数をp-1以下に収められる)
c[k] = Σ[(u,v),u+v≡k(mod p)] χ^2(u)χ^2(v) である。

A'[0],A'[1]は共役で、G'^2 は A'[0],A'[1]の対称式だから有理数である。
従ってk=1からp-1に対してc[k]は等しいはずである。
また多項式とみなしてw=1を代入することを考えれば係数の和Σc[k]は0であることが分かる
従ってc[0]が分かれば、c[1]=c[2]=...=c[p-1] = -c[0]/(p-1)を得る。
そのとき、G'^2 = c[0] + c[1]*(w+..w^(p-1)) = c[0] + c[1]*(-1) = c[0]*p/(p-1) となる。

ここで、c[0]は、展開の様子から直接決定できる。
# p=13の場合(w+w^3+w^9+w^4+w^10+w^12-w^2-w^5-w^6-w^7-w^8-w^11)^2 を展開したw^13の係数
c[0] = Σ[u=1..p-1] χ^2(u)χ^2(-u) である。
p=4N+1のとき -1は平方剰余なので χ^2(-u)=χ^2(u)
従って c[0]=p-1
p=4N+3のとき -1は平方非剰余なので χ^2(-u)=-χ^2(u)
従って c[0]=-(p-1)

上記のG'の式に代入して計算すれば
p=4N+1のとき G=√p
p=4N+3のとき G=√(p-2p)=√-p を得る。

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[2] 4次のガウス和の戦略 (再び p=4N+1,Nは自然数 に制限する)

G = A[0]+i*A[1]-A[2]-i*A[3] が知りたい。
G^2 = (A[0]-A[2])^2-(A[1]-A[3])^2 + 2i(A[0]-A[2])(A[1]-A[3])
を考察する

まず、 H=(A[0]-A[2])^2 を求める計算を示す。
# p=13 では H=(w+w^3+w^9-w^4-w^10-w^12)^2

先と同様に、展開した形 H = Σ[k=0..p-1] c[k]*w^k を考える。
c[k] = Σ[(u,v),u+v=k,u,vは平方剰余] χ(u)χ(v) である。

ガロア理論的考察から、
c[k]の取る値は、c[0],c'=c[平方剰余],c"=c[平方非剰余]の3種類で、
すなわち H = c[0] + c'*(A[0]+A[2]) + c"*(A[1]+A[3]) という形となる。
# p=13では c[0]*w^0 + c'*(w+w^3+w^9+w^4+w^10+w^12) + c"*(w^2+w^5+w^6+w^7+w^8+w^11)

ここでwの多項式としてみなしてw=1を代入すれば c[0] + 2Nc' + 2Nc" = 0 が分かる。

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[2-1] c[0]の決定

・p=8N+1のときはχ(-1)=1なのでχ(-u)=χ(u)
すなわちu+v=0となるペアu,vではχ(u)とχ(v)は同符号である。
従って c[0]=N

・p=8N+5のときはχ(-1)=1なのでχ(-u)=-χ(u)
すなわちu+v=0となるペアu,vではχ(u)とχ(v)は異符号である。
従って c[0]=-N

[2-2] c'-c"の決定

Hを2N個のv成分(vは平方剰余)ごとに分解して考える。
(v成分) = χ(v)*w^v*(A[0]-A[2]) とおく。
すなわち H = (A[0]-A[2])^2 = Σ[vは平方剰余](v成分) である。
# p=13でいうとv=1の成分は w*(w+w^3+w^9-w^4-w^10-w^12) である。
各成分の係数について
c1(v) = Σ[u,u+v=平方剰余,uは平方剰余] χ(u)χ(v)
c2(v) = Σ[u,u+v=平方非剰余,uは平方剰余] χ(u)χ(v)
とおく。合計すると 2Nc'=Σc1(v), 2Nc"=Σc2(v) となるものである。

・ここで、実はc1(v),c2(v)はvに依らない。
c1(v) = Σ[u|u+v=平方剰余,uは平方剰余] χ(u)χ(v)
 = Σ[u|uv+v=平方剰余,uvは平方剰余] χ(uv)χ(v)
 [uが平方剰余全体を動く⇔uvが平方剰余全体を動く]
 = Σ[u|u+1=平方剰余,uは平方剰余] χ(u)
 = c1(1)
 [指標の性質χ(a)χ(b)=χ(ab)とχ(v^2)=1による]
同様に c2(v)=c2(1)=Σ[u|u+1=平方非剰余,uは平方剰余] χ(u)

c1=c1(1),c2=c2(1)とおく。プログラミング的に書くと
c1,c2=0,0;
for u∈(2N個の平方剰余) do
 if (u+1が平方剰余) then c1=c1+χ(u);
 if (u+1が平方非剰余) then c2=c2+χ(u);
ということになる。

B(p) は Σ[x=0..p-1]Legendre( x(x^2+1), p) = Σ(χ(x^3+x))^2 と定義される。x^2=uの関係のとき、
Legendre(x)=1 ⇔ χ(u)=1,
Legendre(x)=-1 ⇔ χ(u)=-1,  [指標の性質 (χ(x))^2 = χ(x^2)]
Legendre(x^2+1)=1 ⇔ u+1が平方剰余,
Legendre(x^2+1)=-1 ⇔ u+1が平方非剰余,
なので上記の表記と見比べることで、B(p)が 2*(c1-c2) を表す式であることが分かる。
(1つのuに対して2つのxが対応するので2*がついている)

従って、2Nc'-2Nc" = Σc1(v)-Σc2(v) = 2N*(c1-c2) = N*B(p) を得る。

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[2-3] 計算
H = c[0] + c'*(A[0]+A[2]) + c"*(A[1]+A[3]),
c[0]+2Nc+2Nc"=0
c[0]=N*χ(-1)
2Nc-2Nc"=N*B(p)
が今までに分かった。

H = c[0] + (c'+c")/2 *(A[0]+A[1]+A[2]+A[3]) + (c'-c")/2 * (A[0]-A[1]+A[2]-A[3])
 = N*χ(-1) + (-N*χ(-1))/4N * (-1) + N*B(p)/4N * √p
 = χ(-1)*p/4 + B(p)*√p/4 と決定する。

Gの計算に戻る。
G^2 = (A[0]-A[2])^2-(A[1]-A[3])^2 + 2i(A[0]-A[2])(A[1]-A[3]) であった。

(A[1]-A[3])^2, (A[0]-A[2])(A[1]-A[3])
についても同様の方針で計算できる。
(A[1]-A[3])^2 の計算では、c[0]は同じでB(p)の係数の符号が変わり(詳細省略)、
(A[1]-A[3])^2 = χ(-1)*p/4 - B(p)*√p/4 となる

(A[0]-A[2])(A[1]-A[3])については、B(p)ではなく、平方非剰余rを1つとって
B'(p) = ΣLegendre( x(x^2+r), p)を使う必要がある。
また、c[0]=0となり(A[0]-A[2])(A[1]-A[3]) = ±B(p)*√p/4 となる。
この符号は、設定したχとrの関係が与える χ(r)=±i の符号に一致する。
---
途中経過を示すと次のように u+1の部分がu+rに変わるような事情による:
c1,c2=0,0;
for u∈(2N個の平方剰余) do
 if (u+rが平方剰余) then c1=c1+χ(u);
 if (u+rが平方非剰余) then c2=c2+χ(u);
ということになる。
---
なので、ここでは、χ(r)=iとなるようなrをとってB'(p)を定義することにする。
上記の結果を総合すると
G^2 = B(p)*√p/2  i*B'(p)*√p/2
 = √p*(B(p)/2 + i*B'(p)/2) を得る。

・X=B(p)/2, Y=B'(p)/2 がX^2+Y^2=pを満たす整数であることの証明は省略する。
例えば以下にある:
https://www.imomath.com/index.php?options=328&lmm=0

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[3] ヤコビ和

ヤコビ和 J(χ^a,χ^b) = Σ[k=1..p-1] χ^a(k)χ^b(1-k) で定義する。
たくさん並べるのでこれを以下Jabと略記する。
また、ab≠0,a+b=1,χ(a)=u,χ(b)=vとなる(a,b)の組の個数をQuvと略記する。
Jab = Σ[u,v] i^(au)*i^(bv)*Quv ということになる。
以下 p≡1 (mod 8)のとき●、p≡5 (mod 8)のとき◆、という場合分けを● or ◆で略記する。
(追記:つまり「or」という記述はその前がp≡1の場合、その後ろがp≡5の場合の結果を表している)

・a,b,a+bが4の倍数でないとき Jab=G(a)G(b)/G(a+b) の関係がある。
(例えば http://gauss.ms.u-tokyo.ac.jp/lecture/2009XBv2.pdf で紹介されている)
ここでG(a)は指標χ^aに対応するガウス和で、上記で求めた結果により、
G(1) = A[0]+i*A[1]-A[2]-i*A[3] = √(X+Yi)*p^(1/4)
G(2) = A[0]-A[1]+A[2]-A[3] = √p
G(3) = A[0]-i*A[1]-A[2]+i*A[3] = √(X-Yi)*p^(1/4) 
である。
ここで、根号の取り方の問題で、G(1)とG(3)は複素共役とは限らない。

p≡1 (mod 8)のとき、χ(-1)=1であることに注目すると、
A[0],A[1],A[2],A[3]は実数であり、G(1)とG(3)は複素共役となる。
p≡5 (mod 8)のときはχ(-1)=-1で、A[0]とA[2]、A[1]とA[3]がそれぞれ複素共役だと分かる。
G(1)と-G(3)が複素共役、という関係だと分かる。
(追記:[2-3]の結果よりH=(A[0]-A[2])^2の符号がχ(-1)の符号に一致することが分かる。)

これにより
J11 = G(1)G(1)/G(2) = (X+Yi)√p/√p = X+Yi
J12 = G(1)G(2)/G(3) = G^2*√p/G(1)G(3) = X+Yi or -(X+Yi)
などが得られる

・a,bの一方が0のときは、0,1を除く指標の和であり、
全指標の和が0であることと、χ(1)=1により、Jab=-1 となる。

・J22は (A[0]-A[1]+A[2]-A[3])^2 を展開した時のwの係数に読み替えられる
これは[1]の議論で出現したc[1]のことで、すなわち-1である。

・J13=J31は、(A[0]+iA[1]-A[2]-iA[3])(A[0]-iA[1]-A[2]+iA[3])を展開したwの係数c[1]である。
[2-1]と同じような議論をすることで、
p≡1 (mod 8)のとき c[0]=p-1で c[1]=-1
p≡5 (mod 8)のとき c[0]=-(p-1)で c[1]=1 とわかる。

・J00は、すべての項が1で(p-2)個の和なのでp-2である。

以上の結果をまとめると次のようになる。
J00 = p-2
J10 = -1
J20 = -1
J30 = -1
J01 = -1
J11 = X+Yi
J21 = X+Yi or -(X+Yi)
J31 = -1 or 1
J02 = -1 
J12 = X+Yi or -(X+Yi)
J22 = -1
J32 = X-Yi or -(X-Yi)
J03 = -1
J13 = -1 or 1
J23 = X-Yi or -(X-Yi)
J33 = X-Yi

・さらに線形結合 S(x,y) = ΣΣ[a=0..3,b=0..3] i^(xa)*i^(yb)*Jab を考える。
Quv の係数の合計は Σ[a] i^(xa+au)*Σ[b] i^(yb+bv) であり、
これはx+u=4の倍数かつy+vが4の倍数のとき16、他の時0 となる。
従って S(-u,-v) = 16*Quv という関係で、Quvを復元できる。

・特に、16個のJabをすべて合計すれば、16*Q00を得る。
16*Q00 = p+6X-11 or p-2X-7
この式とQ00が整数であることを考えると
p≡1 (mod 8)の場合 p+6X-11≡6X-10≡-2(X+1) (mod 8)
p≡5 (mod 8)の場合 p-2X-7≡-2X-2≡-2(X+1) (mod 8)
どちらの場合でも、X≡-1 (mod 4) が分かる

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[4] 代数曲線への応用

・x^4+y^4≡1 (mod p) の解の個数
a+b≡1 かつ a≡x^4, b≡y^4 と考える。

ab≠0な解については、χ(a)=1,χ(b)=1となるような(a,b)の組に対して、
それぞれx,yが4個ずつあるので、16個の解がある。
これはまさに上記で求めた16*Q00 である。

p=4N+1なので、a=0の解、b=0の解は4個ずつある。
従って、合計した解の個数は p-3+6X or p+1-2X である。

射影化したx^4+y^4≡z^4を考えると(x=y=z=0を考えず、比x:y:zが同じとき同一視する)
z=0に相当するいわゆる無限遠点には、p≡1(mod 8)のときだけ解があり、
その結果 p+1+6X or p+1-2X となる。
(ハッセヴェイユの式に似合った感じになる)

・x^4+y^4+z^4≡0 (mod p) の場合(射影化)
p≡1 (mod 8) の場合は-1が4次剰余なので、上記と同じ結果である、
p≡5 (mod 8) の場合はそうではない。-x^4-y^4≡1 を考え、
a+b≡1 かつ a≡-x^4, b≡-y^4 として考える。
これは、χ(a)=-1,χ(b)=-1に相当するので、今度は16*Q22として得られる。
すなわち16個のJabの交代和S(2,2)=Σ(-1)^(a+b)*Jabであり、p+1+6X となる。
ab=0の解はないのでこれですべてである。
これはp=5,29のときだけ解がないという事実に出会った思い出のある曲線である。
(http://tsujimotter.hatenablog.com/entry/29-conjecture)

・y^2≡x^4+1 (mod p) の場合
a+b≡1 かつ a=-x^4,b=y^2 の場合である。

-- p≡1 (mod 8) の場合 -- 
χ(a)=1,χ(b)=±1 に相当する
aに対してxが4つ、bに対してyが2つ対応なので、8*(Q00+Q02) である。
これは、(S(0,0)+S(0,2))/2 であり、
Jabのうち、bが偶数のものだけを合計したものである。p-7+2X となる。
x=0の解が2つ、y=0の解が4つなので p-1+2X となる。

-- p≡5 (mod 8) の場合 --
χ(a)=-1,χ(b)=±1 に相当する。なので今度は、8*(Q20+Q22) である。
aが奇数のものは符号を変えつつ、bが偶数のものだけを合計したものである。
p-3+2X となる。y=0の解はなく、x=0が2つで、合計はやはり p-1+2X となる。

・y^2≡x^4-r (mod p)
tx^4-ty^2 ≡ 1 と変形する。tはtr≡1 (mod p)による。
a+b≡1, a≡-tx^4, b≡-ty^2 と考える。
χ(a)=χ(t)=1/χ(r), χ(b)=±χ(r)となる(a,b)の組の8倍である。
SとQの関係式にあるマイナスの符号に注意して
χ(r)=1 のとき 8*(Q02+Q02)=(S(0,0)+S(0,2))/2 = p-7+2X or p-7-2X
χ(r)=-1 のとき 8*(Q22+Q22)=(S(2,2)+S(2,2))/2 = p-3-2X or p-3+2X
χ(r)=i のとき 8*(Q11+Q13)=(S(3,3)+S(3,1))/2 = p-1-2Y or p-1+2Y
χ(r)=-i のとき 8*(Q31+Q33)=(S(1,1)+S(1,3))/2 = p-1+2Y or p-1-2Y
χ(r)=1 のときは x=0の解2つとy=0の解4つ、χ(r)=-1 のときは y=0の解2つがつけ加わる。

χ(r)=1 のとき p-1+2X or p-1-2X
χ(r)=-1 のとき p-1-2X or p-1+2X
χ(r)=i のとき p-1+2Y or p-1-2Y
χ(r)=-i のとき p-1-2Y or p-1+2Y

・y^2≡x^4+r (mod p) と書くと、
χ(-r)=χ(r) or χ(-r)=-χ(r) の関係でもう1回場合分けが発生し、結果が統一される。
χ(r)=1 のとき p-1+2X
χ(r)=-1 のとき p-1-2X
χ(r)=i のとき p-1+2Y
χ(r)=-i のとき p-1-2Y

# p=13 のとき(X,Y)=(3,-2)であり、
 r=1,3,9のとき 18個
 r=4,10,12のとき 6個
 r=2,5,6のとき 8個
 r=7,8,11のとき 16個
# p=17 のとき(X,Y)=(-1,4)であり、
 r=1,4,13,16のとき 14個
 r=2,7,8,15のとき 18個
  r=3,5,12,14のとき 24個
 r=6,7,10,11のとき 8個

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[5] 周辺

[5-1] 標準形をした楕円曲線と結びつける

2X = B(p) は Σ[x=0..p-1]Legendre(x^3+x, p) で定義された。Σの中身は
x^3+xが平方剰余のとき 1
x^3+x≡0のとき 0
x^3+xが平方非剰余のとき -1

y^2≡x^3+x (mod p) の解の個数を考える。それぞれのxに対する解の個数は
x^3+xが平方剰余のとき 2
x^3+x≡0のとき 1
x^3+xが平方非剰余のとき 0
である。従って、解の個数は p+B(p) = p+2X と表すことができる。

2Y = B'(p) はχ(r)=iとなるrを使って、Σ[x=0..p-1]Legendre(x^3+rx, p)と定義した。
同様にして、y^2≡x^3+rx (mod p) の解の個数は p+2Y だと分かる。

このような虚数乗法を持つ楕円曲線の点の個数については
特に虚2次体Q(√-d)の類数が1のときには早くから結果が知られているようで
例えばd=43,67,163の場合を解決し、類数が1の場合を終わらせたという文献に出会い、
https://www-almasty.lip6.fr/~joux/pages/papers/SommeCharac.pdf
SUR LES SOMMES DE CARACTERES LIEES AUX COURBES ELLIPTIQUES A MULTIPLICATION COMPLEXE
d=1,3,2,7,11,19については2ページ目にそれぞれのreferenceが紹介されている。
今回興味があるd=1の場合には4つreferenceが紹介されている。

そのうち1つ
https://www.e-periodica.ch/cntmng?pid=ens-001:1974:20::110
THE NUMBER OF SOLUTIONS OF THE CONGRUENCE y^2 ≡ x^4 - a (mod p)では
y^2≡x^3-ax の解の個数 は y^2≡x^4-a の解の個数 プラス1
という関係より、どちらかが分かればもう片方が分かるという方針を使っていた。
(大まかにはヤコビ和を使う方針でおそらく私と同じように求めている。)

このノートでは少なくともa=-1,a=-rについてはこの関係を使わずに両方を得られたので、
むしろこの関係が確かに成り立つことが確認できる。
あるいは、変数変換によってこの関係を説明できるかもしれない。

Y^2≡X^4-a で Y=X^2+U と変数変換すると
2UX^2+U^2≡-a
U=u, X=v/u と変数変換すると
2v^2/u + u^2 = -a
v=2y,u=-2x と変数変換して整理すると
8y^2 = 8x^3+2ax
(プラス1という違いは、(x,y)=(0,0)に相当するだろう)

・・・上記の結果と比べると(p=4N+1のとき)-4は常に4次剰余ということになる。
え!知らなかった!衝撃!!
と思ったけど、平方剰余の性質からすぐに確認できた。
8N+1のときは2は平方剰余、よってχ(4)=1、またχ(-1)も1
8N+5のときは2は平方非剰余でない、よってχ(4)=-1、またχ(-1)も-1

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[5-2] 保型形式

例えば上記で解の個数を p+2X と表した曲線y^2=x^3+x について、
LMFDBのy^2=x^3+xのページ
「Modular form 64.2.1.a」という所に q+2q^5-3q^9-6q^13+2q^17+O(q20) と書いてある
「Download coefficients of q-expansion」のリンクにもっと多くの桁の情報がある
このq^pの係数は、-2Xである。

Modular formという名前がついている。
ここには深い世界が広がっている。
(フロベニウス写像のtraceなどという視点)
しかしまだ説明できるほど理解できていない。

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[5-3] ヤコビ多様体

しばらく前に、A unique pair of triangleというタイトルで、
高等な数学を使って初等的な問題を解決したというニュースがあった。
(https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2018/9/12/28-48005/)

その方法はChabautyの方法と呼ばれるもので、Poonen氏による解説を見つけた。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2018/9/12/28-48005/
ヤコビ多様体を使う方法で、ヤコビ多様体上の有理点を手掛かりにするらしい。

ヤコビ多様体について調べていると、
x^4+y^4=z^4 のヤコビ多様体は簡単な考察から3つの楕円曲線に分解されるという記述に出会った。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12196905962で紹介:
http://www.mmm.muroran-it.ac.jp/~yuji/MuNT/2004/papers/04030603yamauchi.pdf
しかも、このpdfの2ページ目の分解を記述する道具の所に、ヤコビ和と書いてある。
これが、今回の考察をする動機にもなったのであるが、しかし結局どういうことか分からずにいる。

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[5-4] 不変式(本題からだいぶ外れた内容だけど)

A[0],A[1],A[2],A[3]の対称式は、有理数になる。
しかし有理数になる多項式の集合は、もっと大きい。
例えば G'^2=(A[0]-A[1]+A[2]-A[3])^2 は対称式でないが有理数pになる。

ガロア理論によるとA[0],A[1],A[2],A[3]で生成される拡大体は、
p次円分体のガロア群(位数p-1の巡回群)の位数4の部分群
に対応する部分体であり、生成元は、wをw^rに送る写像(χ(r)=1)である。

[追記:4p次円分体の、指数4の部分群の間違い。]

この生成元は、A[0]→A[1]→A[2]→A[3]→A[0] と置換するものである。
従って、この置換で不変なA[k]の多項式は、有理数である。

対称式全体は、基本対称式で表すことができた。
この置換で不変なA[k]の多項式は、基本となるいくつかの多項式で表せるか?
基本となるいくつかの多項式とは何か?
という疑問が出る。それほど自明ではなさそうである。
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~mukai/paper/SuSemi06.pdf
の演習問題3である。(後ろに答えがある)

不変式論という分野であり、名前は見たことがある程度だったが、
具体的に、自明でない問題として、このように現れるということで、少し身近に感じた。

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追記:4次のガウス和の式を三角関数で表現すると

例えばx=2π/13 のとき
(sin(x)+sin(3x)+sin(9x))^2 + (sin(2x)+sin(5x)+sin(6x))^2 = 13/4
(sin(x)+sin(3x)+sin(9x))^2 - (sin(2x)+sin(5x)+sin(6x))^2 = -3sqrt(13)/4
(sin(x)+sin(3x)+sin(9x))*(sin(2x)+sin(5x)+sin(6x)) = sqrt(13)/4
みたいな非自明な式を生産できたりする

16:12 2018/10/08

[追記]
これはある意味で「4N+1型素数を平方和に分解する公式」にもなる:

p=4N+1を素数とする (例えばp=13)
Aをmod pの4次剰余の集合 (A={1,3,9})
rを任意のmod pの平方非剰余 (r=2)
とする

e(k)=exp(2πik/p)とする
X = Σe(k) - Σe(rrk)
Y = Σe(rk) - Σe(rrrk)

このとき
A = (XX-YY)/√p
B = (2XY)/√p
は整数で A^2+B^2=p を満たす。

*この目的を果たすのには、ヤコビ和による方法もある
https://twitter.com/icqk3/status/813009366429278208
(http://searial.web.fc2.com/tools/pq.htmlで実装)

2020/4/3(本文中の角括弧付きの追記もこの日付です)


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