有限体と局所体

普通の体とは違う世界がある なぜこういうものを考えるか最初は不自然かもしれない 多項式環 R[x] を調べる場合と次のように対比させられる x=a を代入した値を調べることは剰余環 R[x]/(x-a) を調べることに相当するが これは環Zを極大イデアル(p)で割った剰余環 Z/pZ (有限体)を調べることに対比できる 一方で局所体はいくつかの視点があるが、 (p進展開, p進付値に関する完備化, Z/p^nZの射影極限,...) テイラー展開 Σc[n]*(x-a)^n を考えることに相当するものである。 有限体は1点での様子、局所体は1点とその近傍の様子を情報として持つ。 このあたりはスキームの言葉を使うとより統一的に記述されるものと思う。たぶん。 ---------------- 局所的な体の構造を考察するときに、 「その乗法群の構造」を知るのが最初の目標である。 (加法群の構造は明らかだから) より遠い目標の1つは、絶対ガロア群を知ることであり、 簡単には「どのような代数拡大が可能か」ということである。 大域的な体は身近であるが、その構造は複雑であり 局所的な体は身近でないが、構造をより調べやすいのである =============== 最初に、有理数体Qに対する局所体としての有限体、局所体を考える。 それらに対する代数拡大を考える。 それから、Qの代数拡大を先に行い、KをQの代数拡大体として、 代数体Kに対する有限体、局所体をとることを考える。 実は、できあがったものは、どちらの手順でも得られる。
・有限体 Qに対する有限体は、すなわちpを素数としてZ/pZである。これをFpとも書く。 これの乗法群の構造は、巡回群である というのが基本的な結果である。 すなわち「原始根の存在」と呼ばれる内容である。 アーベル群の構造に慣れればこれは次のように抽象的に示せる: ・補題として体においてはk次方程式の解は高々k個しかない。 これは(x-x1)(x-x2)...(x-xk)=0 と因数分解すれば分かる。 特にxk=1 となるxは高々k個しかない。 ・有限アーベル群が巡回群でないと仮定すると、 xk=1 となるxがkより多く存在するkがある。これは上記に反する。 ・Fpの代数拡大するには、Fp係数で既約なn次多項式f(x)をとって f(x)の根の1つαを添加した体Fp(α)を考えれば良い。 あるいは剰余環 Fp[X]/(f(x)) をとる と考えても良い。 できあがるものは {αのFp係数の(n-1)次以下の多項式} という集合であり元をq=pn個もつ。 最も小さい例はp=2,n=2 F(x)=x^2+x+1 の場合である。 ・Fqの任意の元はp回足すと0になる。この状況を標数がpであると呼ぶ。 ・乗法群は q-1 の元を持つアーベル群であるが先と同様の理屈で巡回群であることが分かる。 つまり Fp(α)の任意の元は xq=x を満たす。 特に α は xq-x=0 の解である。このことから xq-x は多項式として F(x)で割り切れる。 ---- 有限体の代数拡大について著しい結果がある。 ・Fp係数で既約なn次多項式をF(x),G(x)と2つとったとする。 F(x)の根の1つをα、G(x)の根の1つをβとおく。 このとき2つの体Fp(α),Fp(β) の間には演算を保つ全単射が存在する。 [例] p=3,n=3,F(x)=x^3-x+1,G(x)=x^3+x^2-1 のときの全単射の構成を試みよ。 それの存在は次のように抽象的に知ることができる。 先に述べたことから x^q-x = x^27-x は F(x)で割り切れるが 全く同じ理由によってG(x)でも割り切れる。 F(x)の乗法群は巡回群であるから、Fp(α)の元で原始根rをとることができる。 x^27-x = x(x-1)(x-r)(x-r^2)(x-r^3)...(x-r^25) と分解されることになる。(r^26=1) このうちのどれか3つの因数の積がF(x)であり、どれか3つの因数の積がG(x)である。 実際試すとF(x)の根αそのものが原始根として採用できて α^4,α^10,α^12 が G(x)=0 を満たすことが分かる。 そこで β-->α^4 が Fp(β)からFp(α)への演算を保つ全単射となる。 逆写像を具体的に表示するには β=α^4=α^2-α, β^2=α^8=2α^2+2 という関係式を [α,α^2]を変数とする連立方程式とみなして解けばα=-β^2-β+2 を得る。 こうして、両者を同一視して、それをF9と呼ぶことができる。 ----- ・αがF(x)の根ならばα^pもF(x)の根となる。先の例で理屈を述べると:  F(x)=x^3-x+1=0 ⇒ (x^3-x+1)^3=0 ⇒ x^9-x^3+1=0 (他の項は標数3という性質で消える) ⇒ F(x^3)=0 ・しかもF(x)が既約ならF(x)の根はα,α^p,(α^p)^p=α^(p^2),... でちょうど尽くされる。  上記の例だと α, α^p, α^(p^2) が重複してしまうαはα=0,1,r^13 の場合の3つがあるが  実はr^13=-1であり、このように重複ケースは最小多項式が3次より小さいものに消費されてしまうのである ・写像α-->α^pはフロベニウス写像と呼ばれ重要である。 ================= 代数体に対する有限体 ・K=Q(√-1)の整数環 Z(√-1) の素イデアル (3) による剰余体 Z(√-1)/(3)は Z/3Z を X^2+1 という多項式で拡大したのと同じものを与える ・Z(√-1) のイデアル (5) による剰余環 Z(√-1)/(5)は体をなさない。 イデアル(5)は素イデアルでないからである。 一方で Z/5Z を X^2+1 という多項式で拡大することもできない。X^2+1はF5で既約でない。 ・Z(√-1) をイデアル(1+2i) で割った剰余環は体をなす。 これは最初は自明じゃないかもしれないが、 Z/5Z と同型になる。 事情としては任意の{a+bi|a,b∈Z}は 0,1,2,3,4 のどれかと 1+2iを法として合同であり 0,1,2,3,4 は互いには合同ではない。

局所体 ・本格的な勉強にはネットで手に入る資料としては https://www.maths.nottingham.ac.uk/personal/ibf/book/book.html が良さそう ここでは p進数 と その代数拡大 を扱うことにする。 p進数とは何か、具体的な例を挙げるのが早いかもしれない pは素数である。(素数にしておかないと零因子が存在する) 例えばp=7で a = 2+3*7+5*7^2+2*7^3+3*7^4+5*7^5+.... という形式的な級数を考える。 2+0.3+0.05+0.002+0.0003+0.00005+.. が収束するのと同じように この級数があたかも収束するかのように扱うのがp進数である (p進距離から誘導されるp進位相を考えることによって実際に収束する) ちょっと別の視点で、 7で割った余り、7^2で割った余り、7^3で割った余り・・の列が一貫的に決まる という視点もある(射影極限) 集合としては 0,1,2,..,(p-1)を係数とするpの形式的べき級数Σa[k]*p^k [k=0..inf] これが「p進整数」であり、その商体、つまりp進整数の比で表せる数が「p進数」である。 以下p進整数をZp、p進数をQpと呼ぶことにする Qpの元は、正とは限らない整数cを使って Σa[k]*p^k [k=c..inf] と展開できる。 (それがZpの元でもあることは、k<0 の項がないことと同値である) ここでa[k]={0,1,2,..,(p-1)}と設定したのは必然的ではなく、 代わりに任意の、pで割った余りが異なるようなp種類のp進整数の組にして良い。 しかしこのノートでは常に上記の比較的標準的な係数を採用することにする。 --- p進数に慣れる ・負の数の扱いは係数の設定の仕方のせいで多少工夫を要する。 -3 = 4+6*7+6*7^2+6*7^3+6*7^4+6*7^5+... ・展開が規則的なものは、(通常の意味で)"有理数"である。 a = 2+3*7+5*7^2+2*7^3+3*7^4+5*7^5+.... 7^3*a = 2*7^3+3*7^4+5*7^5+.... a = (2+3*7+5*7^2)/(7^3-1) = 134/171 逆に、分母がpと素な有理数は、p進数においてはp進整数である。 ・展開が規則的でないものを考えることで、 p進整数には(通常の意味で)無理数なものもある 7進整数には2乗して2になるような元が(2つ)存在する。 ±√2 = ±(3+7+2*7^2+6*7^3+7^4+...) 一般に7と素な整数n,qに対して x^n≡q (mod 7) となる整数xが存在すれば それに相当して y∈Zp, x≡y (mod 7), y^n=q となるものが存在する。 (ヘンゼルの補題の具体例) =================== p進数の代数拡大 p進数係数で既約な多項式 f(x)=0 の解を付け加えることで代数拡大を得る。 このときに、「不分岐拡大」と「分岐拡大」の2種類があることが後に重要である Qの代数拡大と大きく違うことは、できあがる拡大体の種類がかなり限られることである。 例えば7進数Q7の2次拡大は3つしかない。 (Qの2次拡大は、平方因子を持たない整数と同じぐらい豊富に存在する) (別の視点では、7進数の乗法群には指数2の部分群が3つしかない) 具体的に書こう:Q7(√-1), Q7(√7), Q7(√-7) の3つである。 例えばQ7(√3)等は Q7(√-1) と同じなのである。 すなわち i=√-1 を添加すれば √3 も同時に添加されてしまう: 7進整数には2乗して-3になるような元が存在するからである。 このうち、Q7(√-1)が不分岐拡大である。 一言で言うと、(p)が素イデアルであることを保つ、すなわち 「abが7で割り切れるならa,bのどちらかが7で割り切れる」 という性質が維持されるものが不分岐拡大である。 ・n次の不分岐拡大はそれぞれのnに対して唯一である。 ・Q7(α)が不分岐拡大のとき剰余環Q7(α)/(7)は有限体となる 分岐拡大のときには(p)は別の素イデアルに分解される。 Qp(√7)では (7) というイデアルは (√7)というイデアルの2乗である。 分岐指数eという言葉を用意しておく。 大雑把に「(p)がいくつの素イデアルの積に分解されるか」を表す ======================= 指数対数準同型 x∈K, Kはある素数に対するQpの代数拡大とする。 exp(x)=1+x+x^2/2+x^3/6+x^4/24+... log(1+x)=x-x^2/2+x^3/3-x^4/4+... を考える。(以下expとlogはすべてこの意味である) xが7の倍数なら、exp(x)は7進数の範囲で収束する。 xを√7の倍数にちょっと緩めても収束する。 しかし限度がある。xが7^(1/10) とかだと収束しない。 (分子より分母が7で割り切れる回数が速く増えてしまうと収束しない) その限度は、s=1/(p-1) で与えられる。 収束する範囲で、expとlogは互いに逆関数となる。しかも exp(a+b) = exp(a)*exp(b), log(a*b)=log(a)+log(b) が成り立つ(「群の準同型」) ======================== (1+ap^q)^n -1 を p^m で割った余りの挙動がテーマとなる。(aはpと互いに素) q>s=1/(p-1) のとき、規則よく振舞う。 1+Z*p^qの集合を p^(q+1)で割った余りを同一視すると p種類あるが 1≦n≦p のときちょうどそれを網羅する 具体的には (1+7)^n を49で割った余りは 1,8,15,22,29,36,43 を周期7で網羅する。 nが7の倍数のときに 1 をとる。 (1+7)^n を343で割った余りは、49種類の7Z+1を周期49で網羅する。 nが7の倍数の時に 49Z+1 , nが49の倍数の時に343Z+1 をとるのである。 nが7でk回割り切れる時 (1+7)^n - 1 は 7でちょうど(k+1)回割り切れる。 指数対数準同型を使うと見通し良く説明できる。 次の性質による。【k>1/(p-1) のとき】次が成り立つ: ・xがpでk回割り切れる時 log(1+x) はpでちょうどk回割り切れる ・yがpでk回割り切れる時 exp(y)-1 はpでちょうどk回割り切れる log をとることで log(1+7) は 7でちょうど1回割り切れる。 log((1+7)^n) = n*log(1+7) は 7でちょうど(k+1)回割り切れる。 expをとることで (1+7)^n-1 が7でちょうど(k+1)回割り切れることが従う。 ------------- この局所体の視点が、p^nで割った既約剰余類がなす乗法群の背景であると思う。 既約剰余類がなす乗法群 類似の内容 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11152624896 2016/4/22追記: 具体的に説明を試みたもの http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11158473256 分岐指数が2の場合の挙動を調べた例 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10155326360 ======================================================================== 2016/9/14 追記 きっかけ:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11164265716 【指数持ち上げの補題とその周辺】 ここではpは奇素数とする。 指数持ち上げの補題を初めて知ったのはこの時です: http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11162838091 補題というからには何かの定理を示すのに使うという存在意義が期待されるのですが ・有限体 Z/p^nZ の乗法群が巡回群であることを知る ・特にpN+1型整数がなす部分群が巡回群であることを知る ・局所体 Zp の乗法群を知る ・特に局所体Zpの単数群Unの乗法群を知る という目的に使われ得るんじゃないかと思います。 同等な命題はもっと以前から知っていて回答でもしばしば引用していました 「pを奇素数としq≧1とする。次が成り立つ:x≡1 (mod p^q) ⇔ x^p≡1 (mod p^(q+1))」 http://searial.web.fc2.com/sorafune/1_2.html 「指数持ちあげの補題」の特殊な場合です。平均値の定理とロルの定理の関係のようなものです。 この命題がどういう状況を描写するかを具体的に紹介するとより親しみやすいと思うのです [具体的な状況] 6の冪乗がなす数列を5^kで割った余りを考える。a[n]=6^n 5個おきに、25N+1型整数が現れる。 25個おきに125N+1型整数が現れる。 125個おきに625N+1型整数が現れる・・・ そういう入れ子的な挙動をするのである。これを周期として解釈すると 25で割った余りは最短周期5を持つ 125で割った余りは最短周期25を持つ 625で割った余りは最短周期125を持つ 特にa[n]は直前の項で決まるので最短周期の中に重複は無い (例えばa[1]からa[25]を125で割った余りはばらばらということ) そして5N+1型整数を125で割った余りは25種類しかないから それらをちょうど巡回網羅するという状況になるのである すなわち 「有限体 Z/p^nZ のうち pN+1型整がなす部分群が巡回群であることを知る」 という目的が達せられる。 [この状況を指数対数準同型の視点で見ると] b[n]=log(a[n])を考えるわけである。 b[1]=log(1+5)=5-5^2/2+5^3/3-5^4/4+... b[2]=log(1+35)=35-35^2/2+35^3/3-35^4/4+... 一方で b[2]=2log(6)という関係がある b[2]=2*(5-5^2/2+5^3/3-5^4/4+...) (2つのb[2]の表記が実は一致するのは自明ではなく面白い 例えば5^3で割った余りを確認すると 35-35^2/2 = -1155/2, 2*(5-5^2/2) = -15 差を取ると-1125/2で確かに5^3の倍数となっている) 後者の視点によりb[n] = n*b[1] は「等差数列」である。 (乗法群を加法群に写したのである) さらにa[n]-1が5で割り切れる回数はb[n]が5で割り切れる回数と等しいという関係がある よってa[5n]-1 が a[n]-1 よりちょうど1回だけ多く5で割り切れることは、 b[5n] が b[n]よりちょうど1回だけ多く5で割り切れることに対応し、 これはb[n] = n*b[1] という比例的関係から明らかである ------------------------------------------------------------ ------------------------------------------- 2017/2 追記 ・付値 ・付値の完備化という視点 ・射影極限という視点 の紹介 「付値」v(x)という概念がある。xがpで割り切れる回数である。 これを、p進体Qpの代数拡大に一意的に延長できるという性質がある。 (証明を簡単に紹介できるほど理解していない) 多項式の既約判定と、有限体や局所体への還元 の[3]でちょっと紹介した。 ・注意 例えば5で割り切れる回数を(2±i)に延長できるのか?という疑問 x^2+1を満たすxは既にZ_5に含まれている。 x = ±(2+1*5+2*5^2+...) 一方をxに採用した時だけ(2+x)は5で1回だけ割り切れて辻褄が合う 次に、p進距離は、|x-y| = 1/p^{v(x-y)} と定まる 大雑把に、x-yがpで割り切れる回数が多いほど"近い" [脱線] 1/v(x-y)と定めても位相としては同じなのであるが ではなくわざわざpの冪にしていることには、 そうすることで大域体の積公式が成り立つという背景がある。 「全ての距離を掛けると1になる」 例えばQにおける0と6の距離は 通常の距離では6, 2進距離では1/2 3進距離では1/3 他のpによるp進距離では1 という状況となっている -------- 代数的にp進数Zpを構成する方法は、(少なくとも)2つある それぞれの方法で自然に位相を定めることもできる その1つがZのp進距離による完備化である あるいはQのp進距離による完備化Qpである これは、Qの通常の絶対値距離によって完備化してRを得る手続きと「異曲同工」である 一言で言うと:コーシー列全体を環と見なして、0に収束するコーシー列をイデアルと見なして、剰余環をとる たいてい最初は理解できないと思う。私も最初は理解できなかった。 そういうときにどうすれば理解できるのかは私にも分からない。 たぶん剰余環をとるという概念に慣れるしかない。 ----- もう1つの構成方法が、Z/pnZの射影極限としてZpを得る視点である。 位相は、Z/p^nZの離散位相から誘導される すなわち離散集合に射影される逆像を開集合の基と定める (p進距離から定まる位相と同じ位相を与える) 開集合の基と定める とは、 ・それらを開集合と定める ・開集合の和集合も開集合と定める ・有限な開集合の共通部分も開集合と定める によって開集合を条件づける という意味である (その手続きで得られない集合は開集合ではない) #例えば Z/5Zの離散集合1+5Zに射影される逆像: {x|x≡1 (mod 5)} は開集合である {x|x≡0,2,3,4 (mod 5)} も同様に開集合であり 開集合の和集合も開集合だから、 補集合{x|x≡1 (mod 5)} は閉集合でもある 1点集合 {1} は開集合ではない。閉集合ではある。 実際その補集合を考えると、 {x|x≡0,2,3,4 (mod 5)} ∪{x≡6,11,16,21 (mod 25)} ∪{x≡26,51,76,101 (mod 25)} ∪... というふうに開集合の和集合で表されるからである p進整数は位相空間として ・ハウスドルフである(一般に距離空間はハウスドルフであることは難しくない) ・コンパクトではないが、局所コンパクトではある 位相空間の用語については理系インデックスが1つのよくまとまった参考教材になると思う http://rikei-index.blue.coocan.jp/isou-index.html
・局所体を背景とした自作問題(2016/9/14) http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11164321226 a[n] = (65^n-3*5^n)/n とおく。次を示してください: 任意のhに対してnを十分大きくすれば S[n] = Σ[k=1..n] a[k] の分子は5^hの倍数である *分子という言葉はもちろん約分した後を想定している ---- p進logが背景にあるわけですが 何がどういうふうに成り立つかを説明しよう log(1+x)=x-x^2/2+x^3/3-x^4/4+... log(1+y)=y-y^2/2+y^3/3-y^4/4+... log(1+x+y+xy)=(x+y+xy)-(x+y+x*y)^2/2+(x+y+x*y)^3/3-... log(1+x)+log(1+y) = log(1+x+y+xy) が成り立つはずである。 「冪級数が関数として等しいならば 冪級数展開の各項が等しい」ということを期待する (この期待は解析的な考察から正当化できると思う) この期待により次の命題が得られる。 [命題] A[n] = (-1)^(n+1) * (x^n+y^n)/n B[n] = (-1)^(n+1) * (x+y+xy)^n/n とおくと Σ[k=1..n] (A[n]-B[n]) の項はすべて (n+1)次以上である この命題自体は有限な多項式に関する命題であることを注意しておく [提案] 多項式 Σ[k=1..n] (A[n]-B[n]) を C[n](x,y)とおく。 x,yを固定された5の倍数とする。このとき、 任意のhに対してnを十分大きくすればC[n](x,y)の分子は5^hの倍数である 説明: C[n](x,y)は Σ[k=1..n] f[k](x,y)/k の形をしている ここでf[k](x,y)はx,yの整数係数多項式である ところが先の[命題]によりn次以下の項は打ち消し合うから f[k](x,y)は(n+1)次以上の項のみからなることができる。 5^m≦n を満たす最大の整数mをとる。 約分する前の通分した計算結果を考えると、 分母は5でm回だけ割り切れる一方、分子は5で(n+1)回以上割り切れる。 よってC[n](x,y)の分子は5で (n+1)-floor[log(n)/log(5)] 回以上割り切れる これはnを大きくすればいくらでも大きくなる [本題] x=y=-5 で適用することで、nを十分大きくすれば Σ(-1)^(n+1)*{2*(-5)^n - 15^n}/n の分子を5^hの倍数にできる x=-5,y=15 で適用することで、nを十分大きくすれば Σ(-1)^(n+1)*{(-5)^n + 15^n - (-65)^n}/n の分子を5^hの倍数にできる nを十分大きくすれば両方の分子を5^hの倍数にできる 従って和の分子を5^hの倍数にできる 整理することで当初の主張を得る [コメント] 形式的にはlog(-64)=3*log(-4)という関係の5進展開を考えて 3*log(1-5)=-3*5-3*5^2/2-3*5^3/3-3*5^4/4+... log(1-65)=-65-65^2/2-65^3/3-65^4/4+... [通常の実数距離では収束しないが"5進距離"で収束する] 展開を増やしていくと差の5進距離が0に近づくということである
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