*よくあるように、体Kの整数環の素イデアルを略してKの素イデアルと呼んでいる。

[0] 大域体の類体論の結果の復習
Kのイデール類群(イデール群I_Kを主イデールで割ったもの)をC_Kと書く。

(1)アルティン写像
代数体:Qの有限次拡大の場合は、C_K→Gal(K^ab/K)は全射で、その核はC_Kの単位元の連結成分である。

関数体:F_p(t)の有限次拡大の場合、C_K→Gal(K^ab/K)は像が稠密だが全射でないらしい。
その核は、イデールのすべての成分が可逆なもの(と合同になるもの)、らしい。

(2)アルティン写像は局所アルティン写像を束ねたものと一致する。
それぞれの成分について、「素元は不分岐拡大にフロベニウスとして作用し、単元は分岐拡大に非自明に作用する」

(3) 有限次拡大L/Kに対して、次の図式が整合的であり、
C_L→Gal(L^ab/L)
↓   ↓
C_K→Gal(K^ab/K)
その結果、ノルム像C_Lの像にいるC_Kの元は、Gal(K^ab/K)のうち、Lを固定するものに移る。
ノルム像は、指数が拡大次数[K:L]に一致するようなC_Kの部分群をなす。

Kの素イデアルpの上にあるLの素点をq_1,q_2,..,q_mとする。
C_L→C_Kのpにおける様子は、次のように記述される:
局所体のノルム写像L_q1→K_pから誘導されたものをq1,q2,..qmについて掛け合わせる。

[寄り道]
・Qの場合
C_Qは、Z*^×R+ に位相同型である。
Z*^ = lim (Z/nZ)* とは、平易には、すべてのnに対して、既約剰余類a[n]を整合的に定める方法と解釈できる
(整合的とは、nがn'の倍数の時にa[n] をn'で割った余りが a[n']に一致することを意味する)

C_Qの視点では、主イデールを使えば、有限素点の成分が既約剰余類になるように調整できる。
#例えばp=2の成分の値が6で、他の成分が1であるようなイデール(I_Kの元)に対しては、
すべての成分が1/2であるような主イデールを掛ければ良く、この操作はC_Kの元としては等しいものを与える。

こうして、nが素数の冪のときに、該当する有限素点の成分を、a[n]として採用し、
他の合成数に対しては、中国剰余定理で整合的に一意的に定めることで、先の解釈となる。


一方、Q^abは1の冪根をつけ加えたものである(クロネッカー・ウェーバーの定理)
そのガロア群の元はすべてのnに対して、1のn乗根を、その何乗に送るかで描写できる。
そういうわけで、G(Q^ab/Q)はZ*^ = lim (Z/nZ)*の構造をしている。
こうして、C_Q→Gal(Q^ab/Q) が明示的に描写できる。(R+は連結成分なので単に0に送られる。)

・L=Q(√-1)の場合、L/Q のノルム写像の描写
具体的に描写するには、C_L→C_Qの代わりにI_L→I_Qとして描写したほうが良い。
(主イデールが主イデールに送られることを確認すれば良い)

p=3,5,2について描写する。(それぞれ、惰性、分解、分岐を起こす状況である。)
*p=3の上には、1つの素イデアル(3)がある。L_3→Q_3は、複素共役との積である。
*p=5の上には、2つの素イデアル(1±2i)がある。
 Q_5には、x^2=-1となる元が2つ存在する。それをα1,α2とおくと、L_(1+2i)×L_(1-2i)→Q_5は、
 片方の成分からは、i=α1と置き換え、もう片方の成分からは、i=α2と置き換え、掛け合わせたものである。
*p=2の上のは、1つの素イデアル(1+i)があって、重複度2を持つ。
 Q_2にも、x^2=-1となる元が2つある。ここで改めてα1,α2とおくと、
 L_(1+i)→Q_2は、i=α1と置き換えたものとi=α2と置き換えたものを掛け合わせたものである。
(結果としては複素共役の積である)

*主イデールの行先
 すべての成分がa+biな主イデールの行先は、すべての成分でa^2+b^2となる。

*ノルム像が指数2の部分群をなしていること
 主イデールを使えば、有限素点の成分が既約剰余類になるように調整できるのであった。
 その調整は、符号を除いて一意的であるから、無限素点が正になるように要求すれば、一意的である。
 今回のノルム像は、その操作をした結果、p=2の成分を4で割った余りが1となるような部分群である。
(ノルム像は、有限素点では4N+1、無限素点では正となる。)

*他の円分拡大の場合にも同様に、例えば1の原始15乗根をζとしてα=ζ+ζ^4を添加した拡大では、
 p=3成分を3で割った余りと、p=5成分を5で割った余りの組み合わせが(1,1),(4,4)≡(1,4)からなる指数4の部分群である。

*素イデアルの分解法則との関係
 pを4N+1素数のとき、p成分のみ1の元に対応するガロア群の元は、先の描写より、Lを固定する。
p成分のみ1の元に対応するガロア群の元のLに対する作用は、
K_p上の局所体の拡大でフロベニウスに対応するので、その位数は、剰余体の拡大次数に対応する。
従ってこの場合は剰余体の拡大次数が1なので、pはL/Kで分解する。
 pを4N+3素数のとき、p成分のみ1の元に対応するガロア群の元は、Lに共役として作用する。
同様の議論で、この場合は剰余体の拡大次数が2なので、pはL/Kで惰性する。


[1] 正標数の大域体 一番単純な、K=F_5(t)の場合を考える。 整数環A=F_5[t]は単項イデアル整域で、素イデアルの例には、既約元を挙げれば良い。 t,t+1,t+2,t+3,t+4,t^2+2,t^2+3,t^2+t+1など・・ #先に体K=k(t)を与えられたときに、その整数環がk[t]であるとは言えないような気がする。  どう扱うのが分からない。ここでは、もう予めk→k[t]→k(t)が与えられていたものと想定しておく。 #無限素点として、t^-1を素元とするものを考えると良いらしい。  これは、F_5上の射影直線P^1の閉点を考えていることに相当する。 先のQの場合と同様に、主イデールを掛けることで、すべての有限素点の成分が可逆元となるように調整できる。 (これはAが単項イデアル整域である性質に依存しているので、次の[2]では使えない。) 調整は、F_5の元を掛ける操作を除いて一意的であるから、 無限素点成分の最高次が1であるような、開部分群に居るように要求すれば、一意的である。 この視点で、C_Kは、A*^×K_∞+ に位相同型である。 A*^ = lim (Z/fZ)* は、すべてのモニック多項式fに対して、既約剰余類a[f]を整合的に定める方法と解釈できる [1] √2を添加するような不分岐拡大 [1b] X^5-X-1の根を添加するような不分岐拡大 [2] √tを添加する分岐拡大 [2b] √(t+1)を添加する分岐拡大 [3] X^5-X-1/tの根を添加する分岐拡大, X^5+5X^4-1の根を添加する分岐拡大 などがある。これらの有限次拡大での、ノルム像を見てみる。 [1] この場合は、 無限素点t^2の成分の付値が偶数であるような部分群 [1b] 無限素点の付値が5の倍数であるような部分群 [2] t成分のtで割った余りが、平方剰余であるような部分群 [2b] (t+1)成分の(t+1)で割った余りが、平方剰余であるような部分群 [3] (t)成分のt^2で割った余りが、1,2,3,4のどれかであるような部分群 であった。(前回:http://searial.web.fc2.com/aerile_re/kyokusho3.html) Q上の類体論的な事実「4N+1型素数はA^2+B^2の形で表せる」という事実の類似として、 「F_5係数の既約なモニック多項式は、定数項が±1ならば、A(t)^2+t*B(t)^2 の形で表せる」という事実を得る。 #例:(t+1)は、(2+√t)と(2-√t)に分解する。(t^2+t+1)は、(1+t±√t)に分解する #既約という条件は外せない。例えば(t^2+t-1) = (t+3)^2 は、この形で表せない。 (Q上でも、例えば21=3*7は4N+1型ではあるが素数ではなく、A^2+B^2の形で表せない。) Q上の類体論的な事実「N^2+1の素因数は4N+1型素数に限る」という事実の類似には、 「A(t)^2+tの素因数は、定数項が±1のものに限る」という事実を得る。 例:(t^2+2t+2)^2+t = (t+1)(t^3+3t^2-1) この観察には簡易的には例えば WolframAlpha で factor f(t) mod 5 のように入力すれば良い。 PARI/GPなら、factormod((t^2+2t+2)^2+t,5) [2021/9/30 追記] もう少し例 ・f(x)をF_2係数で既約な多項式とする。 [5次までの一覧が例えばhttps://yoshiiz.blog.fc2.com/blog-entry-199.htmlにある] f(x)の1次の係数が0 ⇔ 適当な多項式P=P(x),Q=Q(x)によって f(x)=(PQ+Q^2)x+P^2 と書ける これは、a^2+xa+x=0 を満たすaによる2次拡大のノルムをとっている。 aの共役はa'= a/(1+a) = a+xであり、(P+Qa)(P+Qa')を展開すると(PQ+Q^2)x+P^2を得る。 f(x)=1+x^2+x^3 ... P=1, Q=x f(x)=1+x^3+x^4 ... P=1+x^2, Q=1 f(x)=1+x^2+x^5 ... P=1, Q=x+x^2 f(x)=1+x^3+x^5 ... P=1, Q=x^2 f(x)=1+x^2+x^3+x^4+x^5 ... P=1+x, Q=x^2 ・f(x)をF_3係数で既約な多項式とする。 f(x)の1次の係数が0 ⇔適当なxの多項式P,Q,Rによってf(x)=(R^2-P*R+P^2-Q^2)*R*x^2+(Q^2-P^2)*Q*x+P^3 と書ける。 これは、a^3+xa^2-x = 0 による3次拡大を使っている。 (1/aがアルティン・シュライヤー拡大の形をしていて、1/aの共役は±1+1/aである) ここから、1つの解をaとすると他の解は次のようになる。 a/(1+a) = -a^2+(1-t)a + t a/(1-a) = a^2+(1+t)a + t (この割り算は、PARI/GPでMod(a/(1+a),a^3+x*a^2-x)とか入力すると計算してくれる。) P+Qa+Ra^2の共役積を整理すると上記の形になる。 ところで、この3次拡大体はF_3上の体としてはF_3[a]であり従ってaで生成されるが、 F_3[x]上整な元の集まりは、aとtで生成される。 aだけでは生成できないことは、t=a^3/(1-a^2)の関係式から分かる。 (1±a)はノルムが1であり、整数環の可逆元である。そんなことも起きるのか。 またこのことから、P,Q,Rの取り方は一意的でないことが分かる。 例えば (P+Qa+Ra^2)(1+a) = P'+Q'a+R'a^2 とするとP',Q',R'も適する。
[2] 楕円曲線の関数体 k=F_5, K=k(X,Y)/(X^3-X-Y^2)を考える。k(t)の有限次拡大であるから、これも正標数大域体である。 k(t)の場合には、不分岐拡大は、剰余体kを拡大するものしかなかった。 証明:https://math.stackexchange.com/questions/1382237/maximal-unramified-extension-of-a-global-function-field k(X,Y)/(X^3-X-Y^2)の場合には、それ以外に、不分岐拡大があり、不分岐拡大だけを考えても、豊富な構造があることを知った。 いくらか、幾何的な解釈を読んだが、少し混乱している部分もある。 ======== [2-1] 1/2倍点の添加は不分岐な4次拡大を与える K = k[X,Y]/(X^3-X-Y^2) は楕円曲線で、演算構造を持っている。対応する楕円曲線をEとおいておく。 そこで、点Pを2倍点2Pに移す写像を考える。 明示的には、(X,Y)=(x,y)を、(X,Y)=((x^4+2*x^2+1)/(4*y^2),(x^6-5*x^4-5*x^2+1)/(8*y^3))に送る。 過去のノートにメモしてある「将来の自分用にMaximaにコピペできるコマンド」を利用した。 そういうわけで、Kに、 (x^4+2*x^2+1)/(4*y^2) = X (x^6-5*x^4-5*x^2+1)/(8*y^3) = Y を満たすようなx,yを追加する拡大を考える。 明示的には、 L = k(x,y,X,Y) / ((x^4+2*x^2+1)/(4*y^2) - X, (x^6-5*x^4-5*x^2+1)/(8*y^3) - Y, X^3-X-Y^2) ということになる。 これは構成の仕方から4次拡大を与えるはずで、1つの解をP=(x,y)とすれば、Eの2等分点Q=(0,0),A=(1,0)を使って、 4つの解は、P,P+Q,P+A,P+Q+A と描写することができて、これは有理式で記述できる、すなわちガロア拡大である。 ・KのF_5有理点は無限遠点を含めて8つある。Q=(0,0),A=(1,0),B=(-1,0),±C=(2,±1),±D=(3,±2)とおく。 2Q=2A=2B=0, 2C=2D=Q, A+B+Q=A+C+D=0 の関係がある。 この構造は http://searial.web.fc2.com/tools/fpdaen.html で観察できる。 これは、例えばA,Cで生成されるZ/2Z×Z/4Zの構造を持った群と描写できる。 ・素イデアルの分解の様子 Kの素イデアル(X,Y)はLで4つの素イデアルに完全分解する:(x-2,y-1),(x-2,y+1),(x-3,y-2),(x-3,y+2) Kの素イデアル(X-1,Y)は、Lで2つの素イデアルに分解する:(X^2-2X-1, X+Y+1), (X^2-2X-1, X-Y+1) 係数がF_5ではなくてF_25であれば、(1+4√2,±(3+√2))とその共役に対応する4つの素イデアルに分解する。 *係数をF_25に拡大する操作は、エタール位相の視点では、開集合みたいなものなので、 「どの点も、適当な開集合に制限すれば、ファイバーは4点ある」と描写すると、不分岐拡大の幾何的イメージに近づくと思った。 ・1/3倍点の添加は、ガロア拡大ではない(と思う)。 3等分点がF_5に居ないので、1つの解から他の解を得られない。 3等分点のx座標は3x^4-6x^2-1=0 を満たし、これはF_5では既約な4次式である。 なので、係数をF_625に拡大しないと3等分点が得られない。 (寄り道:この多項式はレムニスケート関数の3倍公式に表れる。  Q(√-1)の類体論と関係して、例えば12N+5型素数で既約であることが示唆される。) 係数をF_625に拡大してかつ1/3倍点を添加するのはガロア拡大になるが、アーベル拡大でない。 (もしアーベル拡大だとしたら任意の部分群が正規部分群なので、任意の中間体がガロア拡大) ======== [2-2] isogeny 同型でない楕円曲線からの写像も考えると、もう少し他の不分岐拡大を与えることができる。 https://mathoverflow.net/questions/52125/how-to-get-explicit-unramified-covers-of-an-elliptic-curve 楕円曲線には、Cを格子Λで割ったものという視点がある。 そこで、元のy^2=x^3-xに対応する楕円曲線をEとして、その格子をΛとして、 Λの指数2の部分格子Λ'に対応する楕円曲線をE'とすると、 自然な2対1の写像 C/Λ'→C/Λ を考えることができる。 指数2の部分格子の取り方は3通りある。 図の赤の縦長の長方形にする方法、緑の斜めの方法、それから横長にする方法(図には書かれてない)の3通りがある。 そのうち、緑の場合は、格子は相似で、先のURL先に回答されているように虚数乗法を使ってisogenyを記述できる。 ここでは、赤の場合を具体的に計算してみる。(isogenyを扱う良い経験になった。) 格子を縮小して1つの生成元を1に調整したときの、もう1つの生成元をτとすると、j不変量j(τ)が定義される。 j(τ)の特殊値は wikipedia に少し書いてある。 y^2=4x^3-Ax-B に対応する楕円曲線が、<1,τ>で生成される格子に対応するとき、j(τ) = 1728*A^3/(A^3-27B^2) の関係がある。 y^2=x^3-xには、τ=iが対応し、j(i)=1728である。 そこで、赤の格子には、τ=2iが対応する。wikipediaによるとj(2i)=1728*(11/2)^3=287496である。 wikipediaの関係式から、B^2/A^3 = 49/1331 を得るから、B=7k^3,A=11k^2が目的の楕円曲線を与える。 データベースサイト https://www.lmfdb.org/EllipticCurve/Q/ でj欄に287496と入れて検索する方法もある。 (C上ではすべて同型であるが、Q上では同型でないので、たくさんの行が出力される。) ここでは、一覧のうち、y^2=4x^3-11x-7に対応する楕円曲線E'を使うことにする。 ---- [計算](PARI/GP) ---- E = ellinit([0,0,0,-1,0]) E2 = ellinit([0,0,0,-11,-14]) ellperiods(E) ellperiods(E2) これでE2の格子がEの格子を横方向に半分にしたものであることが確認できる。 ellpointtoz, ellztopointを使うと、(x,y)とC/Λの座標同士の対応を知ることができる。 (-1,±2i) --> (0,0) (-2,0) --> ∞ (1±2√2,0) --> (1,0) (-3,±2√2i) --> (-1,0) と対応させるのが目的の2対1写像を与えることが分かる。 理論的な計算方法もあると思うが、ここでは行先のx座標は、元のx座標で決まることが分かるからパズル的に、 (x-1)/(x+2)を因子に持つもので、x=1±2√2を代入した時に有理数になるものとして (x+1)^2/(x+2) を試すと、 (x+1)^2 / 4(x+2) がこれらの点では条件を満たした。 そうしたら確認のために X=(x+1)^2/4(x+2) Y^2=X^3-X からXを消去を試みれば、Y=±(x+1)(x+3)/8(x+2) * sqrt[(x^2-2x-7)/(x+2)] (少し変形すると、Y=±(x+1)(x+3)/8 * sqrt[(x^3-11x-14)] = (x+1)(x+3)y/8(x+2)^2 とも書ける) を得てこれらを、X^3-X-Y^2に代入すると、x^3-11x-14-y^2を因数に持つことを確認できる。 ---- [計算終わり] ---- そういうわけで、 X=(x+1)^2/4(x+2) Y = (x+1)(x+3)y/8(x+2)^2 y^2=x^3-11x-14 を満たすようなx,yを添加して拡大するというのが求める2次拡大である。 ところで、2次拡大は、既約元の平方根を添加する拡大と書ける。実際、具体的には x=2X-1±√(X^2+X) y=8Y(x+2)^2/(x+1)(x+3) と書けるので、√(X^2+X)の添加である。 これは、その見た目から、(X,Y)=(0,0)や(-1,0)で分岐しないのか?と思うが、√(X^2+X) = Y/√(X-1) に変形すると、 この拡大は√(X-1)の添加と同等であることが分かり、(X,Y)=(0,0)や(-1,0)で分岐しないことに納得する。 *計算途中で見たように、例えば(X,Y)=(1,0)に対応する素イデアルはこの2次拡大では分解せず、  (1±2√2,0)に対応する(x^2-2x-7,y)という、1つの、剰余体の大きさが2次に拡大された素イデアルとなっている。  しかしここでも、係数をF_25に拡大すれば、2つの素イデアルに分解するという、[2-1]と同様の現象がある。 *3つの2次拡大のうち、残り2つは√Xや√(X-1)の添加だろうと推測される。 *[2-1]の4次拡大はこれらの合成体である。せっかくなので確認を試みる。 (x^4+2*x^2+1)/(4*y^2) = X を、y^2=x^3-xを使って、xについて解くと、確かに解が以下のように表示できることを確認した。 x = sqrt[X(X-1)] - sqrt[(X-1)(X+1)] + sqrt[X(X+1)] - X x = sqrt[X(X-1)] + sqrt[(X-1)(X+1)] - sqrt[X(X+1)] - X x = - sqrt[X(X-1)] + sqrt[(X-1)(X+1)] + sqrt[X(X+1)] - X x = - sqrt[X(X-1)] - sqrt[(X-1)(X+1)] - sqrt[X(X+1)] - X
[2-3] 話を戻して、K=F_5(X,Y)/(X^3-X-Y^2)の不分岐アーベル拡大はどれだけあるのか C_Kは、イデール(すべての素点の局所体の制限直積)を、主イデールで割ったものであった。 不分岐拡大に話を絞るときには、さらに可逆元倍も同一視して良い。 (不分岐拡大においては可逆元部分は自明に作用するから) そうすると、素点での位数を見れば良い:各素点の形式的なZ-線形結合を考えることに相当する。 これは、ちょうど代数幾何で言う所の、Weil因子を考えていることに相当する。 主イデールの違いを同一視することは、主因子の違いを同一視することに相当する。 従って、ピカール群とか、0次のチャウ群とかいうものに相当する。 一方で、ガロア群のほうでは、不分岐拡大はスキームのエタール射に相当するので、 エタール基本群と呼ばれるものと結びつく。 というような内容を例えば https://www.uni-due.de/~hm0002/WS1415/CFT-Lecture1-XeviGuitart.pdf で読んだんだけど ここで、素点として、F_5有理点だけ考えれば良いのか? 具体的には (X^2-2X-1, X+Y+1) みたいな素イデアルも考える必要はないのか? と考えるとちょっと混乱している。 F_5有理点だけ考えれば良いなら、 有限次拡大不分岐アーベル拡大は、Z×Z/2Z×Z/4Zの指数有限な部分群に対応すると思った。 (その場合は[2-2]の3種類の2次拡大は、Z/2Z×Z/4Z部分の3種類の指数2の部分群に相当すると思う。)
[2-4] ノルム群 KのF_5有理点を再掲する:Q=(0,0),A=(1,0),B=(-1,0),±C=(2,±1),±D=(3,±2) 2Q=2A=2B=0, 2C=2D=Q, A+B+Q=A+C+D=0 の関係がある。 この群は、Z/2Z×Z/4Z の構造をしている。つまりxA+yC, x∈Z/2Z, y∈Z/4Zの形ですべての元が表せる。 具体例で、ノルム像がC_Kの2次の部分群をなすことを観察したい。 不分岐なので、ピカール群の2次の部分群をなすことを観察すれば良い。 局所のノルム写像は、完全分解する所では全射、剰余体が拡大される所では素元の肩が偶数になる。 [2-2]で扱った√(X^2+X)=Y/√(X-1)を添加する拡大の場合、X=0,2で完全分解、X=1,3,4で剰余体が拡大する。 (X=0,4のときは√(X-1)で判断し、X=1のときは√(X^2+X)で判断する)  具体的には、Q,±Cでは完全分解し、A,B,±Dでは剰余体が拡大する。  なので例えば、Aという因子は、ノルム像に居ない。Dという因子もノルム像に居ない。  しかし、Cという因子はノルム像に居て、A+C+D=0の関係があるので、DとAの差はノルム像に居る。 *先述したZ/4Z×Z/2Zの構造を使えば、ノルム像はCによって生成される指数2の部分群である。 √(X^2-X)=Y/√(X+1)を添加する拡大では、X=0,3で完全分解、X=1,2,4で剰余体が拡大する。  具体的には、Q,±Dでは完全分解し、A,B,±Cでは剰余体が拡大する。  ノルム像は、Dによって生成された指数2の部分群である。 √(X^2-1)=Y/√X を添加する拡大では、X=0,1,4で完全分解、X=2,3で剰余体が拡大する。  具体的には、Q,A,Bでは完全分解し、±C,±Dでは剰余体が拡大する。  ノルム像は、A,Bによって生成された指数2の部分群である。 これらを合成した4次拡大では、X=0で完全分解、残りでは剰余体が2次拡大された素イデアル2つに分解する。 ノルム像は、Qによって生成された指数4の部分群である。 こうして[2-1][2-2]で試した具体例で、ノルム像がC_Kの拡大次数に等しい指数を持つ部分群をなすことを観察できた。 2021/9/23
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