「複2次体」における現象:
a = (5+2√3)(4+√13), b = (4+√3)(5+√13)
とおくと、√a - √b = 1 が成り立つことの周辺について考察した。
https://twitter.com/icqk3/status/1289200868785418240

Qに√3,√13を展開した体Q(√3,√13)(従って√39も添加される)をKとおく。

[1] ガロア群を使った考察により、この状況では、√a,√b∈K なはずである。 (https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12170313257) 今回の場合に合わせた説明: A=√a, B=√b とおく。A-B=1なので、K(A)=K(B)である。 X^2-aがK上既約だとする。Aを-Aに送るK上自己同型写像σがある。 σ(A)-σ(B)=σ(A-B)=σ(1)=1 が要求されるからσ(B)=1+A 一方で、X^2-bはK係数だから、σ(B)は±Bのどちらかでなければならない。 合わせると A+B=-1 または A-B=-1 が要求されるが、A-B=1と両立しない。 (両立させようとするとA=0,B=-1しかないが、これは前提に合わない。) 従って√aを1,√3,√13,√39のQ線形結合で表せるはずである。気になる。 そこで、試しに√aをWolframAlphaに打ち込むと、 1/2 + √39/2 + √((20 + 3√39)/2) という表示を出力してきた。ということは、X=√aは次のK係数の2次方程式を満たす: (X-1/2-√39/2)^2 = (20 + 3√39)/2 一方で、X=√aは、X^2-a=0というK係数の2次方程式も満たす。 これらは共役解が異なるからXのK係数最小多項式ではない。 実際にX^2の項を消去すればXのK係数1次方程式を得て、X=√aを具体的に求めることができる: 解くと X = (1+3√3+√13+√39)/2 を得た。 √a-√b=1 より、√b = (-1+3√3+√13+√39)/2 であろう。
[2] 代数体Kの類数を調べると、類数1であることが判明する。従って単項イデアル整域である。 √3+√13の最小多項式を例えばresultant(x^2-3,(x+y)^2-13,x)で求めるとy^4-32*y^2+100、 便利なデータベースサイトLMFDBのページで、 多項式欄にx^4-32*x^2+100と入力すれば該当する代数体のページにアクセスできる。 類数のほかに、基本単数などの情報も得られるし、素イデアル分解の様子なども書いてある。 具体的に、Kの基本単数は次の3つである。 u1 = 2+√3, u2 = 2√3+√13, u3 = (-3+√13)/2 aの因子について、(5+2√3)(5-2√3)=13, (4+√13)(4-√13)=3 であることから、Kの整数環における3と13の素イデアル分解を考える。 3=(4+√13)(4-√13), 3=(√3)(√3) という2通りの分解があって、 代数体の整数環では素イデアル分解が一意的に存在することからもっと分解できる。 I3=(4+√13,√3) が(4+√13)と(√3)の最大公約イデアルとおける。 そこでKが単項イデアル整域だから、単項イデアルとして生成する生成元i3がある。 略式には、「(4+√13)と√3の最大公約数」が存在する。気になる。 同様に、I13=((5+2√3),√13) の生成元をi3とおく。(i3やi3は単数倍の自由度がある。) I3,I13の共役をJ3,J13とおいておく。 具体的には、J3=(4-√13,√3)、J13=(5-2√3,√13) とおく。 イデアルの分解の様子は、(√3)=I3*J3, (3)=I3*I3*J3*J3, (4+√13)=I3*I3, (4-√13)=J3*J3 のはずである。 同様に、(√13)=I13*J13, (13)=I13*I13*J13*J13, (5+2√3)=I13*I13, (5-2√3)=J13*J13 のはずである。 次のように行き当たりばったりに探すと、I13の生成元を得られた: y^4-32*y^2+100の根y=√3+√13の有理式g(y)のノルムをresultant(y^4-32*y^2+100,g(y),y) で計算できる。 g(y)を手動的にいろいろ変えてみると y±2のノルムが-12 y±4のノルムが-156 という組が見つかり、試しにg(y)=(y+4)/(y-2)の最小多項式を求めるとこれが代数的整数であり、ノルム13である。 y=√3+√13を代入して整理すれば、g(y)=-11+7√3-3√13+2√39を得る。 適当に単数を掛けて一番簡単そうな形を探して、u1*u3*g(y) = (3+4√3-√13)/2 を採用した: i13 = (3-4√3-√13)/2 j13 = (3+4√3-√13)/2 とおくとこれらはノルムが13であり、確かにI13、J13の生成元となっていることが確認できた: (どっちがどっちなのかは、割ったものが代数的整数になるかどうかで判定した。) i13*i13 = u1^(-2)*u2*u3^(-1)*(5+2√3) i13*j13 = u3*√13 j13*j13 = u1^2*u2^(-1)*u3^(-1)*(5-2√3) すなわち、i13,j13が生成する単項イデアルをI13,J13とおけば、先に要求した関係の通りであり、 特にi13(5+2√3)と√13の最大公約数となっていることが観察できる。 上記の確認の式の求め方: 実用的には、i13^2/(5+2√3)を基準に、適当にu1,u2,u3を掛けたり割ったりすると、 係数が小さいほうに向かうほうに試行錯誤すれば、行き当たりばったりにそれほど時間がかからずに求まった。 しかし望むなら、これは機械的に得ることができることを以前に見つけた。 ディリクレの単数定理の証明にも使われる、4種類の実埋め込みごとの絶対値の対数をとる写像をとると、 代数的整数は4次元実ベクトル空間に4次元の離散的な格子をなして、そのうち単数は3次元部分格子をなす(ディリクレの単数定理の主張)。 従って特定の単数を基本単数に分解する問題は、部分空間の元を、その基底の線形結合で表す問題に帰着して、機械的に解ける。 https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156999604 の返信で、別の代数体を例に記述されている。
[3] i3,j3も同様の探索で見つけられるかもしれない。 しかし今回はすでに既知の X = (1+3√3+√13+√39)/2 を利用して求めた。 「単項イデアルとして」以下の等式が成り立つ: (X^2) = (5+2√3)(4+√13) (5+2√3) = (i13)^2 (4+√13) = (i3)^2 従って、X/i13 あるいはその適当な単数倍を i3 とすれば良い。 適当に単数を掛けたりして式が簡単そうな -X/I13/u1を採用することにした: i3 = (1-2√3+√13)/2 j3 = (1-2√3-√13)/2 が目的のものとなる。 [2]と同様な確認は、ここでは省略する。結果自体は次の[4]に書いた。
[4] 結果まとめ:ここまでに得たことから、最初の問題を改めて観察する。 代数体Kの基本単数を以下のようにおく[すべて正に設定した]: u1 = 2+√3, u2 = 2√3+√13, u3 = (-3+√13)/2 3,13は、単項イデアルとして、(3)=I3*I3*J3*J3, (13)=I13*I13*J13*J13 と分解される。 3と13の中間的な分解について、 (3) = (4+√13)(4-√13) に対して、(4+√13) = I3*I3 (13) = (5+2√3)(5-2√3) に対して、(5+2√3) = I13*I13 という関係にある。 分解先の単項イデアルの生成元を以下のようにとることができる。 i3 = (1-2√3+√13)/2 [正] j3 = (1-2√3-√13)/2 [負] i13 = (3-4√3-√13)/2 [負] j13 = (3+4√3-√13)/2 [正] Kの元としての関係式は、以下の通りである: i3*i3 = u2^(-1)*u3*(4+√13) j3*j3 = -u2^(-1)*u3^(-1)*(4-√13) i3*j3 = -√3 i13*i13 = u1^(-2)*u2*u3^(-1)*(5+2√3) j13*j13 = u1^2*u2^(-1)*u3^(-1)*(5-2√3) i13*j13 = u3*√13 これらの情報があれば、a = (5+2√3)(4+√13) の平方根の具体的な表示の復元は容易である。 (5+2√3) = i13*i13 / {u1^(-2)*u2*u3^(-1)} (4+√13) = i3*i3 / {u2^(-1)*u3} a = (5+2√3)(4+√13) = i13*i13*i3*i3 */ {u1^(-2)} = (i3*i13*u1)^2 符号を気にすると、 √a = -i3*i13*u1 = -(1-2√3+√13)/2*(-3+4√3+√13)/2*(2+√3)と復元できる。 展開すると√a = (1+3√3+√13+√39)/2 を得るはずである。
[5] もう片方 b = (4+√3)(5+√13) の平方根 2の素イデアル分解の情報も関係する。 追加で、i2 = (-1+√3), I2=(i2) とおくと、素イデアルとして、(2) =I2・I2と分解する 4+√3 = j13^2*u1^(-1)*u2*u3 5+√13 = i2^2*j3^2*u1*u2^(-1)*u3^(-1) という分解から、 √b=-j13*i2*j3 を得る。 分解の求め方: (4+√3)(4-√3)=13なので、(4+√3)はKの元としてのノルムは13^2であり、 従ってi13とj13で、合わせて2回割り切れる。 実際に割ってみて代数的整数になるかどうかを見れば良い。 2回割れば単数になり、これを基本単数に分解する方法は、[2]の最後にコメントした。 追記:aの構成因子で見たKの元とは、次のような関係である。 4+√3 = (5-2√3)/u1 (5+√13)/2 = (4-√13)*u3^2
[6] 素イデアルに対するガロア群の作用 Kには3つの自明でない自己同型がある。略式に: √13を固定して、√3,√39の符号を変える自己同型σ3 √3を固定して、√13,√39の符号を変える自己同型σ13 √39を固定して、√3,√13の符号を変える自己同型σ39 (σ39はσ3とσ13の合成である) I3*I3=(4+√13)であった。 従ってイデアルとしてのI3はσ3の作用で不変なはずである。一方で i3 = (1-2√3+√13)/2 はσ3の作用で不変でなく、 i3' = (1+2√3+√13)/2 に移る。 ということは、i3'はi3の単数倍であるはずだ。気になる。 (より初等的な同じ現象の例として、 Q(i)の整数環で2=(1+i)(1-i)と分解されたときの(1-i)が(1+i)の単数倍である) これは調べればすぐに分かって、i3'=u2*i3 同様にj33(i3)とおくと、j3'=-1/u2*i3 の関係であった。 i3 = (1-2√3+√13)/2, i3' = (1+2√3+√13)/2 j3 = (1-2√3-√13)/2, j3' = (1+2√3-√13)/2 を2つずつ掛けると中間体における3の素イデアル分解を得る。 i3*j3=-√3, i3*i3'=(1+√13)/2, i3*j3'=-6+√39 という具合である。 この様子を図にした。緑の「~」は単数倍を表す。 縦の2列はσ3で共役、横の2行はσ13で共役 aの構成因子との関係は、(1+√13)/2 = (4+√13)*u3, (1-√13)/2 = -(4-√13)/u3 13に対する同様の様子を図にした。 縦の2列はσ13で共役、横の2行はσ3で共役(σ13(u3)=-1/u3) 単数倍関係は、i13' = i13/u2*u3, j13' = j13*u2*u3 aの構成因子との関係は、11-6√3 = (5+2√3)/u1^2, 11+6√3 = (5-2√3)*u1^2 符号は上の図ではj3<0、i3,i3',j13'>0、下の図ではi13,i13'<0、j13,j13'>0
[7] 同様の例の構成 これらの「仕掛け」を元に、他の複2次体ではどうなのかを1つ考えた。 Q(√p)の既約元Aが、Q(√p,√q)で平方元になる現象があった。 これには、(A)が素イデアルとして、ちょうど2重に分岐する必要がある。 分岐する候補は2,p,qしかないのでこれらを使いたいことになる。 p,qが互いを法として平方剰余であることが良くて、 また、単数が豊富にあると都合が良いのでp,qは正の方が良い。 2も分岐すると都合が良い。これにはp,qのどちらかが4N+3であれば良い。 p=5,q=11がこれらの条件を満たす1つの組であり、 5=(4+√11)(4-√11) 11=(4+√5)(4-√5) -2=(3+√11)(3-√11) さらに類数が1であることも確認できた。 https://www.lmfdb.org/NumberField/4.4.48400.1 (このような複2次体の類数について、例えば中間体の2次体の類数と関連付ける一般的な性質はあるのだろうか?) 基本単数として v1=(1+√5)/2, v2=2√11+3√5, v3=10+3√11 がとれる。 y+1のノルムが5, y+4のノルムが220=11*4*5 を見つけ、 (y-4)/(y+1)/(3-√11) = (7+√5-√11-√55)/2 というノルム11の代数的整数を見つけた。 適当に単数倍をして、 i5 = 1+√5-√11 j5 = 1+√5+√11 i11 = (1+3√5+2√11)/2 j11 = (1-3√5+2√11)/2 を採用する。また、i2=3+√11 とおく。 i5^2 = (4+√11)/v1^3/v2/v3 j5^2 = (4-√11)/v1^3*v2*v3 i11^2 = (4+√5)/v1*v2 j11^2 = (4-√5)*v1/v2 の関係を得る。 a = (1-3√5+√11+√55)/2 = v1^2/v3*i2*j11*j5 b = (-1-3√5+√11+√55)/2 = -v1^2*i11*i5 を見つけた。 a^2 = (7+√5)(4-√11) b^2 = (4+√5)(7-2√11) と書くことができて、冒頭の問題と同様の構成を得た: √(7+√5)(4-√11) - √(4+√5)(7-2√11) = 1 上記のa,bを見つけるところは偶然によった。 他の複2次体でもこのような例が存在するのか、何かしら一般化できるのだろうか? 2020/08/01
[8] もう少し例を探索して以下の命題に至った。 【命題】 p,qを正の素数として、互いを法として平方剰余とする。 Q(√p)およびQ(√p)が単項イデアル整域であることを仮定する。 [第1段階] (A+B√p)(A-B√p)=q, (C+D√q)(C-D√q)=p を満たす有理数A,B,C,Dをうまくとると、 (A+B√p)(C+D√q) を Q(√p,√q)の平方元にできる。 [第2段階] x = sqrt[(A+B√p)(C+D√q)] = a+b√p+c√q+d√pq とおく。 このa,b,c,dを使って、y = -a+b√p+c√q+d√pq とおく。 このとき、y^2 = (A'+B'√p)(C'+D'√q) となる有理数A',B',C',D'がある。 これらより、冒頭に紹介した等式の類似を構成できる。すなわち、 sqrt[(A+B√p)(C+D√q)] と sqrt[(A'+B'√p)(C'+D'√q)] の和または差が有理数となる。(和なのか差なのかは、yの符号による) 【証明】 [第1段階] [9]の命題2による。 [第2段階] x = a+b√p+c√q+d√pq x' = a-b√p+c√q-d√pq x" = a+b√p-c√q-d√pq x'" = a-b√p-c√q+d√pq y = -a+b√p+c√q+d√pq とおく。(a,b,c,d∈Q) x^2 = (A+B√p)(C+D√q) と (x'")^2 = (A-B√p)(C-D√q) の積はpqとなる(絶対値pqで平方数だから)。 従ってxx'"=±√pqと分かる。x'x"はその共役で、特にxx'"=-x'x"が成り立つ。 y = x - (x+x'+x"+x"')/2 = (-xx+xx'+xx"+xx'")/2x = (-xx+xx'+xx"-x'x")/2x = -(x-x')(x-x")/2x = 2(b+d√q)(c+d√p)√pq / x = ±2(b+d√q)(c+d√p)x'" と書ける。(x'")^2 = (A-B√p)(C-D√q) だから、 y^2=4(b+d√q)^2*(c+d√p)^2*(A-B√p)(C-D√q)で、 これは並べ替えて掛け合わせれば、(A'+B'√p)(C'+D'√q) という形に書ける。 【例】 (p,q)=(3,13)の場合、(p,q)=(5,11)の場合はすでに扱った。 他の例を3つ計算した: [例1] (p,q)=(3,37)の場合 (7+2√3)*(7+√37)/2 が平方元で、x=(7+2√3+√37)/2 がその平方根 y=(-7+2√3+√37)/2 との差をとって 等式 sqrt[(7+2√3)*(7+√37)/2] - sqrt[(7-2√3)*(7-√37)/2] = 14 を得る。 [例2] (p,q)=(5,19)の場合 (9+√5)*(9+2√19)/2 が平方元で、x=(9+√5+2√19)/2 がその平方根 y=(-9+√5+2√19)/2 との差をとって 等式 sqrt[(9+√5)*(9+2√19)/2] - sqrt[(9-√5)*(9-2√19)/2] = 18 [例3] (p,q)=(7,29)の場合 ε7=8+3√7, ε29=(5+√29)/2 とおくと、 (6+√7)*(1+√29)/2*ε729が平方元で、x=(120+49√7+22√29+9√203)/2 がその平方根 y=(-120+49√7+22√29+9√203)/2 との差をとって 等式 sqrt[(69+26√7)(447+83√29)/2] - sqrt[(447-2√7)(69+√29)/2] = 120 を得る このように、いくつかの例では単数倍をうまく調整すると、xを表示した時の√pqの係数を0にできた。 これは偶然かもしれないしもしかしたら一般化できるかもしれない。 この場合には最終的な等式は、(A',B',C',D')=(A,-B,C,-D)の形となる。 証明では技術的な問題でp≡5, q≡3 (mod 8)と制限していたが、 命題自体は[例3]のようにそれ以外の場合も成り立つ気がする。 (ε[p],ε[q]がKの平方元でなければ良い気がする。) 追記:[例3]の最終的な等式で447と69が2か所に共通して現れるのは、仕掛けがあるのだろうか。 x^2とy^2の"定数項"が等しくなることは分かるけど、そこから先は分からなかった。 2020/8/2
[9] さらに具体例を計算していて、解決した。 px^2+qy^2 = z^2 を満たすx,y,zが存在すれば、 (z+x√p+y√q) の平方が 2(z+x√p)(z+y√q) となることに気がついた。 これを使って、目的を達成できることに気がついた。 【命題1】 p,qを互いを法として平方剰余な正の素数とする。 px^2+qy^2 = z^2 を満たす整数x,y,zが存在すると仮定する(この仮定は常に成り立つ(後で補足))。 2(z+x√p)(z+y√q)が平方元となる。 等式 sqrt[2(z+x√p)(z+y√q)] - sqrt[2(z-x√p)(z-y√q)] = 2z が成り立つ。 [説明] px^2+qy^2 = z^2 を満たす2以上の公約数を持たない整数x,y,zが存在する。 α = (z+x√p+y√q) の平方が 2(z+x√p)(z+y√q) となる。 β = (-z+x√p+y√q) の平方が 2(z+x√p)(z+y√q) となる。 (ここで、(x√p+y√q)^2 - z^2 = 2xy√pq の関係より、βは正である。) 等式 sqrt[2(z+x√p)(z+y√q)] - sqrt[2(z-x√p)(z-y√q)] = 2z を得る。 【命題2】 さらに、Q(√p),Q(√q)が単項イデアル整域ならば2(z+x√p)(z+y√q)に適当な平方元を掛けることで、 (A+B√p)(A-B√p)=q, (C+D√q)(C-D√q)=pを満たす代数的整数(A+B√p),(C+D√q)の積にできる。 すなわち[8]の[第1段階]を解決する。 [説明] まず、Q(√p)で考える。(z+x√p) のノルムは qyy である。yの素因数分解をy1*y2..とする。 2以外の素因子ykについては、x,y,zが公約数を持たないから、 (z+x√p)は、代数的整数のy倍ではないから、yが分解した片方の元で2回割り切れる。 こうして、(z+x√p)はとりあえず、2の冪と、ノルムqの元と、平方元に分解される。 同様に、(y+√q)も、Q(√q)において、2の冪と、ノルムpの元と、平方元に分解される。 p,qのどちらかが4N+3素数ならば、そちらの2次体で2が分岐して(平方元)*(単数)の形にできる。 p,qがともに4N+1素数のときは、命題をみたすx,y,zはzが奇数、x,yが奇数と偶数の組となる。 従って(z+x√p)と(z+y√q)のどちらかが2でちょうど1回割り切れる。 これらを総合すると、2(z+x√p)(z+y√q)は、 ノルムpの元(C+D√q)と、ノルムqの元(A+B√p)と、平方元の積に分解できる。 【例】 (x,y)=(1,2)のようなときには、【命題1】を満たす組が【命題2】も満たしている。 これが、前回の[例1][例2]ではこれを満たす組であった。 [例3]をこの視点で構成してみる: [例3'] p=7,q=29のとき、x=y=1,z=6がある。 (6+√7+√29) の平方が 2(6+√7)(6+√29) 等式 sqrt[2(6+√7)(6+√29)] - sqrt[2(6-√7)(6-√29)] = 12 を得る。 1つ目の根号の中身のノルムを29*7にするには、 例えば 2=(3-√7)^2*(8+3√7) に注目すれば、 (6+√7)(8+3√7)(6+√29) = (69+26√7)(6+√29) がノルム29*7の平方元となる。 平方根は x=(25+9√7+3√29+√203)/2 であり、 定数の符号を変えたy=(-25+9√7+3√29+√203)/2 を平方すると(6-√7)(69-√29)となる。 等式 sqrt[(69+26√7)(6+√29)] - sqrt[(6-√7)(69-√29)] = 25 を得る。 [例4] ・単項イデアル整域でない例の観察を1つしておいた。 https://oeis.org/A003172 によると、単項イデアル整域でない最初の例はQ(√79)である。 79 = (18+7√5)(18-7√5)より、x=7,y=1,z=18がとれる。 (18+7√5+√79) の平方が 2(18+7√5)(18+√79) となる。 等式 sqrt[2(18+7√5)(18+√79)] - sqrt[2(18-7√5)(18-√79)] = 7 を得る。 Q(√79)で単項イデアルに分解する素数としてq=181があった: 181 = (55+6√79) 79 = (202+15√181) と分解されるが、この場合は、命題2の構成はできないことが確認できた。 Q(√79,√181)の基本単数は u1=80+9*√79 u2=604+97*(1/2+√181)/2 u3=5655√79+3736√181 であるが、 (55+6√79)(202+15√181)に単数を掛けたものは、平方元にできなかった。 (調べると、(55+6√79)(202+15√181) * 2*u1 が平方元となるが、2の分解先は単項イデアルでない) 【補足】 p,qが互いを法として平方剰余な正の素数ならば、px^2+qy^2=z^2 を満たす整数x,y,zが存在するか? Q(√p),Q(√q)のどちらかの類数が奇数なら、これを構成できる気がする。 素数pに対する2次体Q(√p)の類数は常に奇数っぽい?が、分からない。 2020/8/9 追記: これはいわゆる2次式での局所大域原理、ハッセ・ミンコフスキーの定理であった。 p,qを素数に限る必要もなくなってしまった。 p,qは平方因子を持たない正の整数で、pの各素因子と、qの各素因子が、互いを法として平方剰余という条件で良い。 p,qと素な局所で成り立つことについては: https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14154982294 これと、ヘンゼルの補題を使うことになると思う。 2020/8/10
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