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(0.論理・集合)追記。
f(C)とかf(R)という記号は、xがCやRなどの集合の元の時に
fが取りうる値全体の集合を表す記号である。
この章では上限・下限が最重要事項だろう。
次の命題はよく把握し応用できるように。
p7 命題(1.5.2): (α∈
R,A⊂
R.)
αが実数のAの下限⇔αはAの下界 かつ α<cであるcはAの下界でない
p10 問題(1.6)(1.1):A,Bは下に有界である.集合C={a+b;a∈A,b∈B}は下限infA+infBを持つことを示せ.
方針:先の命題の(←)を使う.すなわち次の2点を主張する:
1.infA+infBより小さいCの元は存在しない,すなわち
"Cの任意の元cに対してinfA+infB≦c が成り立つ"
2.infA+infBより大きい任意の実数xに対してxより小さいCの元が存在する,すなわち
"あるCの元c0があってc0<x
これらを導くにはA,Bについて先の命題の(→)を使う.infAはAの下限であるから,
3.任意のAの元aに対してinfA≦a.
4.任意のinfAより大きい実数xに対し,
あるAの元a0が存在して,a0<x
略解:任意のCの元cに対して,Aの元aとBの元bがあってc=a+bと書けなければいけない.
そこで先の3.によりinfA≦a,infB≦bなのでinfA+infB≦c が導かれる.
次にinfA+infBより大きい実数xを任意に取ってxより小さいCの元の存在を言う。
p=x-(infA+infB)とおくとp>0であるから,先の4.でx=infA+p/2を適用することができる.
すなわちあるAの元a
0があってa
0<infA+p/2.
同様にあるBの元b
0があってb
0<infB+p/2. するとa
0+b
0はCの元で,かつxより小さい。
このようなc0をうまく構成することが鍵となる。
c0は、下限であろうinfA+infBからの差が任意に与えた正数pより小さくなくてはいけない。
そのために、先はinfAからの差がp/2より小さいAの元と、infBからの差がp/2より小さいBの元を足してc0を構成した。
この手順は同じ問題の小問(2.1)ではより難しい。(A,Bの元はすべて正という条件がついている。)
(infA+α)(infB+β)≦infAinfB+p かつα,β>0 となるα,βを見つけるのである。
一例として、(infA+α)infB=infAinfB+p/2と構成すると、
α=p/2infB,β=pinfB/{2infAinfB+p}を得る(infB=0は予め場合分けしておく)
それから、同じページの上限公理(R17)は今後のさまざまな定理の基本となり重要である。
p7 上限公理:
空でない上に有界な実数の集合は上限∈Rを持つ.
追記。
後日配布の解答では別の方法を使っている。すなわち、
αが実数のAの下限⇔αはAの下界 かつ αに収束するAの元からなる数列がある
という論法を使っている。なるほどと思った。
しかしその根本には、上の命題と次のε論法があることを注意する。
ε論法は武器である。それは強力な武器である。
p12 (2.2.1) lim
n→∞a
n=α
⇔
任意の正数εに対してある自然数Nがあって,n≧Nならば|an-α|<ε
これも先の命題と同様に、(←)と(→)を使えることが重要である。練習としては、
limn→∞an=α,limn→∞bn=βのとき,
limn→∞(an+bn)=α+βを示せ。
(先の問題と同じような方針で導かれる。省略する。)
それから、p14 (2.4)(2) はさみうちの原理 も重要だがこれはよく知っているだろう。
以下(p21,22)は上限公理を駆使すれば得られる結論である:
(3.2)
上に有界な単調増加数列は収束する.
(3.3) {a
n}は収束する⇔任意のεに対して自然数Nがあって, m,n≧Nならば|a
m-a
n|<ε
(コーシーの収束条件。(→)は直ちに得るので使うなら(←)だろう)
(3.4) a
1≦a
2≦・・・≦a
n≦・・・≦b
n≦・・・≦b
2≦b
1,
かつlim(b
n-a
n)=0の時,
a
n≦c≦b
nとなる実数cがただ1つ存在する.(区間縮小法orカントールの公理)
(3.5) 有界な集合は集積点を持つ,すなわち,
有界な数列は収束する部分数列を持つ.(ボルツァノ・ワイヤストラスの定理)
この章は直接後の章とはつながらない。無限級数の定義は高校で学んだ通り。
各項が負でない級数を正項級数と呼ぶ。上に有界な正項級数は収束することはしばしば使われる(上の(3.2)による)
次の"絶対収束ならば条件収束"という事実は便利で、重要だと思う。
p29 定理4.6.1:
Σ|an|は収束する⇒Σanは収束する
(上のコーシーの収束条件を使うことで得られる。)
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定義は把握しておかないと困ることがあるので把握しよう。
p35 定義(5.2.1)
集合Eが区間である⇔実数a,bがEの元ならばaとbの間の実数もEの元である
p37 定義(5.3)
fが単射である⇔ "f(x)=f(y) ⇒ x=y" ⇔ "x≠y ⇒ f(x)≠f(y)"
繰り返すがこれらは(→)と(←)は必要に応じて両方使えるように心構えると良い。
直積についてはセクション13の問題文で定義も与えてあるし今はそんなに重要でもないと思う。
集積点(p40)は次のように直感的に理解されよう。
aがEの集積点である⇔aのどんな近くにでもEの元が存在する
⇔どんなδ>0をとっても0<|x-a|<δとなるEの元xが存在する。
集積点は元とは限らない。例えば集合(2,3]について"2"は元ではないが集積点である。
一方、元も集積点とは限らない。元であるが集積点ではない点が"孤立点"である。
また、"有界な集合は集積点を持つ"のであった。(
ボルツァノ・ワイヤストラスの定理)
lim
x→af(x)を考える時はaはf(x)の定義域の集積点でなければならない。
ε-δ論法は、数列の極限と同様。特に新しい重要事項はなさそう。
関数の極限と数列の極限を関連付けるのが以下のことである。
集積点の定義p40(6.1.1):
aがEの集積点⇔aに収束する数列{an}が存在して,an∈Eかつan≠a
そのとき,fをE上の関数とすると,p44(6.7):
limx→af(x)=α ⇔ 任意の上のような数列{an}に対してlimn→∞f(an)=α
問題(7.3)のヒントはこれを使っている。
すなわち、0以外の点で定義された関数f(x)=sin{1/x}-sin{1+1/x}について、
x→0でf(x)が収束しないことを示すのに、以下のどちらかを示せばよい。{an}は各項が0でなく0に収束すればよい。
(i)上とような数列{an}を2つ構成してn→∞でf(an)の極限が異なる値となる。
f(an)が常にsin1となる{an}がある。一方f(an)が常に-sin1であるものもある。
(ii)上とような数列{an}を1つ構成してn→∞でf(an)が発散する。
f(an)がsin1,-sin1,sin1,-sin1,・・・と交互になるものがある。
連続ということは,以下で表すことができる。fをE上の関数とする。
fはaで連続⇔aはEの孤立点か、集積点の場合はlimx→af(x)=f(a)
fはEで連続⇔fはEのすべての点で連続
連続関数についての重要の定理が次の2つである。
(p51,
証明(青空学園))
中間値の定理:
[a,b]上の連続関数fについて,f(a)とf(b)の間の任意の実数αに対して,
f(c)=αとなるa<c<bがある.
最大値・最小値の存在定理
連続関数は閉区間で最大値及び最小値を持つ.
中間値の定理の応用として次のような問題がある。
"地球の赤道上で反対側と気温が等しいような所があることを示せ"
略解:
θを緯度として赤道上の気温f(θ)は連続関数とみてよいだろう。
g(θ)=f(θ+π)-f(θ)に中間値の定理を使うといい。
一様連続についてはそこまで重要でもないだろう。一様連続は通常の連続より"強い"が,
有界閉区間で連続ならば,そこでは一様連続でもある. (p51定理(7.6.2))
ということだけ注意しておこう。有界閉区間でないとf(x)=1/x,E=(0,1)などの反例がある。
追記。連続はある点x=x
0を与えて考える概念であるのに対して、
一様連続はそうではなくある
区間全体の性質として定義される概念である。
Wikipediaの連続のページ
も参考になると思う。
狭義単調関数は単射なので逆関数を持つ。
逆に逆関数を持つ関数は単射であり、さらに連続ならば狭義単調である。[p58定理(8.2)]
逆三角関数の問題では(通常)以下のような限定がつくことに注意。
-π/2≦Arcsin x≦π/2
0≦Arccos x≦π
-π/2<Arctan x<π/2
(定義域は上2つが[-1,1]、Arctanが全実数である)
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微分の定義は高校と同じ把握で十分だと思う。
というかもう片方の定義はよく知らない。
ただ、極限の定義にε-δ論法を使うことで高校ではしてこなかった議論をすることができる。
例 p68問題(9.1)': f'(a)>0ならば,(a-δ,a+δ)でfが狭義単調増加となるδが存在することを示せ.
方針: g(x)= f(x)-f(a) / x-a に注目する
略解:limx→ag(x)=αとおくとα=f'(a)>0なので, 極限の定義から,
(ε=αに対して)
あるδがあって(a-δ,a+δ)-{a}で |g(x)-α|<ε=α ゆえにg(x)>0を得る.
これから狭義単調増加が従う.
p67 定義(9.10.1)
fはI上Cn級⇔fはI上n回微分可能 かつ f(n)(x)はI上連続
特に新しい重要事項はないと思う。
やはり大学での数学は直感性より厳密性を重視して議論するのである。
次のランダウの記号もε-δ論法と同様に、直感的なことを厳密に扱う(強力な)武器であるといえる。
p73 定義(10.2)
f(x)=ο(φ(x)) (x→a)⇔limx→af(x)/φ(x)=0 [⇔f(x)<<φ(x)]
f(x)=Ο(φ(x)) (x→a)⇔aのあるδ近傍で|f(x)|≦c|φ(x)|となるcが存在する
前者は後者より"強い"(前者が真なら後者も真)
簡単に示されるので考えてみるとよい。
しかしこれを一般にもっと拡張してο(φ(x))を"φ(x)よりも高位の無限小"と大雑把に扱える。
[(x-a)のφ(x)よりも高次の項というイメージで良いだろう]
その使い方は次の例(p90問題(11.19)(2)から)を参考にしてくれると良い。たぶん正しい。
[以下の計算で極限及びランダウの記号はすべてx→0のものとする。]
{x2-sin2x}/x2sin2x
={(x2-(x-x3/6+ο(x4))2}/(x2(x-x3/6+ο(x4))2
={(x2-(x2-x4/3+ο(x4))}/(x2(x2-x4/3+ο(x4))
={x4/3+ο(x4)}/{x4+ο(x4)}
={1/3+ο(x4)/x4}/{1+ο(x4)/x4}
→1/3
追記。はじめの"ο(x4))2"と次の"ο(x4))2"は異なる。
4次より高次の項をまとめて、改めて"ο(x4))2"と記述するあたり、積分定数の使い方と似ている。
平均値の定理
fは[a,b]上連続かつ(a,b)上微分可能の時, f(b)-f(a) / b-a = f'(c) となるa<c<bが存在する.
ロルの定理とコーシーの平均値の定理は省略する→
青空学園
p79 定理(11.4)(漸近展開の存在)
fが区間Iで(n-1)回微分可能,f
(n-1)がaで微分可能である時,
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+・・・+{f
(n)(a)/n!}(x-a)
n+ο((x-a)
n) (x→a)
=
nΣ
k=0{f
(k)(a)/k!}(x-a)
k+ο((x-a)
n) (x→a)
これはこのセクションの問題を解く際に活躍するだろう。
テイラーの定理
平均値の定理をn回微分に一般化したものと考えれば良い。
(上の右辺の級数の最後の項においてxの代わりにcと書く)
特に注意することはないだろう。ロピタルの定理は書いてある通り便利なものである。
漸近展開して極限を求めるのと本質的に変わらない、と思う。
p99 ノルムについては線形代数の講義の通り。
三角不等式 ‖
x+
y‖≦‖
x‖+‖
y‖
コーシー・シュワルツの不等式 |
x・
y|≦‖
x‖‖
y‖
内点・外点・境界点の定義は直感的に理解されよう。
aはEの内点⇔ある正数δがあって‖
x-
a‖<δならば
x∈E
aはEの外点⇔ある正数δがあって‖
x-
a‖<δならば
x∈
notE
aはEの境界点⇔どんな正数δをとっても‖
x-
a‖<δとなる
x∈Eと
x∈
notEが共に存在する
開集合・閉集合も直感的に理解されよう。
Eが開集合⇔Eの境界点がEの外点に含まれる
Eが閉集合⇔Eの境界点がEの内点に含まれる
追記。
aはEの内点ならば、a∈Eである。
aはEの外点ならば、a∈notEである。
aはEの境界点ならば、a∈EかあるいはaはEの集積点である。
これら及び上の同値たちは、定義から割と簡単に得られる事実である。
点列の収束は実数列とだいたい同様だと思う。
微分が現れない限りは一変数の場合と大きくは変わらないので大丈夫だろう。
セクション6の事実(6.7)(p44)
limx→af(x)=α ⇔ αに収束する任意の数列{an}についてlimn→∞f(an)=α
は多変数でも同様のことが成り立つので連続性の議論に役立つだろう。すなわち,
p105 定理(14.2.2)
limx→af(x)=b ⇔ RNのaに収束する任意の点列{an}に対してlimn→∞f(an)=b
(ただし{a
n}の各項がaと異なるのと同じように、{
an}は各項が
bと異ならなければならない)
そういうわけで、例えばf(x,y)が、x軸に沿って原点に近づく時と、
曲線x=√yに沿って原点に近づく時とで極限が異なる時、極限lim(x,y)→(0,0)f(x,y)は存在しない。
一方そのような極限が存在することを示すには、ε-δ論法に頼ることが多いだろう。
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2009/6/21
内容更新 6/27
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