例によって説明がいい加減かもしれない。

§19.一変数関数の広義積分


定積分を、閉区間でない区間Iに、拡張したのが広義積分。
a=inf I (あるいは-∞)、b=sup I (あるいは+∞)とする。
fがI上広義積分可能とは、
(@)fがIに含まれる任意の閉区間で(有界で)積分可能で、
(A)Iの元cをとって、 \lim_{u\rightarrow a+0}\int_u^cf(x)dx, \lim_{v\rightarrow b-0}\int_u^cf(x)dx
が共に収束することをいう。その和が広義積分の値となる。
(fがI上で連続ならば(@)は自動的に満たされることを注意する)
2つの極限の中身がどちらも下に有界でかつどちらかが+∞に発散する時、
fのI上の広義積分は+∞に発散するという。-∞への発散も同様。
・I上でのfの原始関数が求まれば広義積分は自然に計算できる。
・他の関数と比較して評価する原理は問題(19.1)の通り。
・広義積分でもf≦gならば∫f≦∫g(+∞か-∞に発散する場合も含めて)

(19.1)次の命題を示せ。
 g_1,g_2 はI上広義積分可能であり、g_1(x)\leq f(x)\leq g_2(x)\;(x\in I)
 このとき、fはI上広義積分可能である
Cauchyの収束条件を用いることにする。Iの元cを適当にとる。
h(u)=\int_u^cf(x)dx がu→a+0で収束することを示せば十分だろう。(反対側も同様)
これは、任意の正数εが与えられた時に
u<x_1,x_2<u+\delta\;\Rightarrow|h(x_2)-h(x_1)|<\varepsilon
とできるδが存在することと同値である。(Cauchyの収束条件)
|h(x_2)-h(x_1)|=\biggr|\int_{x_1}^{x_2}f(x)dx\biggr|に注意する。
g1,g2が広義積分可能であることから そのεに対してδ12が存在して、
u<x_1,x_2<u+\delta_i\;\Rightarrow\biggr|\int_{x_1}^{x_2}g_i(x)dx\biggr|<\varepsilon
そこで、δをδ12のうち小さい方に設定すれば、
-\varepsilon<\int_{x_1}^{x_2}g_1(x)dx\leq\int_{x_1}^{x_2}f(x)dx\leq\int_{x_1}^{x_2}g_2(x)dx<\varepsilon により、
 (x1>x2の時はg1とg2は反対になるが同じ。)
u<x_1,x_2<u+\delta\;\Rightarrow\biggr|\int_{x_1}^{x_2}f(x)dx\biggr|<\varepsilon とできる。
(従って収束条件がいえた。)
(19.2)f,gは区間Iで連続。正数c1,c2が存在して、
c_1g(x)\leq f(x)\leq c_2g(x)\;(x\in I)
が成り立つとする。"fはI上広義積分可能⇔gはI上広義積分"を示せ。
前問の結果を使えば(←)をそのまま得る。不等式を、
\frac{1}{c_2}f(x)\leq g(x)\leq \frac{1}{c_1}f(x) と変形すれば前問によって(→)も得る。

(19.3)a,b,Iは積分区間を表す例の。fはI上の連続関数。
f^+=max\{f,0\},\;f^-=max\{-f,0\} と定める。
\int_a^bf(x)dx が絶対収束する、すなわち、\int_a^b|f(x)|dx が収束するならば、
f^+,f^-,f はすべてI上広義積分可能であることを示せ。
また逆に、f^+,f^- がI上広義積分可能ならば\int_a^bf(x)dx が絶対収束することを示せ。
(前半)0\leq f^-,f^+\leq|f|であるからf^+,f^-が広義積分可能と分かる。
f=f^+-f^- も極限の線形性から広義積分可能と分かる。
(後半)|f|=f^++f^-であるから上と同じように線形性から分かる。

問題(19.4)Iは区間、fはI上の連続関数。
 (1),(2)の場合にfがI上広義積分可能であることを示せ。
(1)a<b、I=[a,b)。次の(@),(A)のいずれかが成り立つ。
(@)関数(b-x)^\lambda f(x) がI上有界となるλ<1が存在する。
(A)\lim_{x\rightarrow b-0}(b-x)^\lambda f(x)=0 となるλ<1が存在する。
(2)I=[a,+∞)、c∈I。次の(B),(C)のいずれかが成り立つ。
(B)関数x^\lambda f(x)は[c,+∞)上有界となるλ>1が存在する。
(C)\lim_{x\rightarrow +\infty}x^\lambda f(x)=0 となるλ>1が存在する。

(1)(@) |(b-x)^\lambda f(x)|=(b-x)^\lambda|f(x)|\leq M とおける。
\int_a^b|f(x)|dx\leq\int_a^b\frac{M}{(b-x)^\lambda}dx
=\lim_{v\rightarrow b-0}\left[-\frac{M}{1-\lambda}(b-x)^{1-\lambda}\right]_a^b
λ<1であるからこれは収束する。従って|f|も、よってfも広義積分可能。
(A)極限の定義から適当な正数Mに対してあるc∈Iがあって、
c<x<b\;\Rightarrow |(b-x)^\lambda f(x)|<M とできる。
先の議論からfは[c,b)で広義積分可能だから[a,b)でも広義積分可能。
(2)(B)xが正の範囲で考えれば十分である。
(すなわち必要に応じてaを別の正の数で改めて置く。)
|x^\lambda f(x)|=x^\lambda|f(x)|\leq M となるMをとる。
\int_a^\infty |f(x)|dx=\int_a^\infty\frac{M}{x^\lambda}
=\lim_{v\rightarrow\infty}\left[-\frac{M}{1-\lambda}{x^{\lambda-1}} \right]_a^\infty
やはりλ>1によってこれが収束するからfは[a,∞)で広義積分可能。
(C) (A)と同じ。

(19.5)p,qは実数。I=[0,1]。次の同値を示せ。
関数f(x)=x^{p-1}(1-x)^{q-1} はI上広義積分可能⇔p>0かつq>0
(←) [1/2,1)でf(x)が広義積分可能であることを示せば十分。
 前問(1)(@)をλ=-(q-1)によって適用できる。
 関数(1-x)^\lambda f(x)=x^{p-1} はI上有界なので条件が満たされる。
(←) p≦0ならばfの広義積分が発散することを示せば十分。
 0付近の区間(0,c]に注目して十分で、(1-x)1-q>k>0となるkをとれる。
 f(x)\geq kx^{p-1}\geq kx^{-1}
 この右辺の(0,c]での広義積分は+∞に発散するからf(x)もそうである。

(19.6)sは実数。I=(0,+∞)。
(1)次の同値を示せ
 関数f(x)=e^{-x}x^{s-1} はI上広義積分可能⇔s>0
(←) 区間(0,1]と[1,+∞)を別々に示す。前者の区間は、
 0<f(x)<x^{s-1}, \int_0^1x^{s-1}dx=\frac{1}{s}[x^s]_0^1=\frac{1}{s}
 によってfは広義積分可能であると分かる。
 後者の区間は、好きなようにλ>1をとって、
 \lim_{x\rightarrow\infty}x^\lambda f(x)=0
 よって(19.4)(2)Cの条件を満たすのでやはり広義積分可能。
(→)s≦0の時は、fが区間(0,1]で広義積分可能でないことを示す。
 f(x)>e^{-x}x^{-1}>\frac{1}{ex}, \int_0^1\frac{1}{ex}dx=\frac{1}{e}[\log x]_0^1\rightarrow\infty
 によってfの広義積分は+∞に発散することが示される。

(2)s<0とする。\Gamma(s)=\int_0^\infty e^{-x}x^{s-1}dx と定める。 Γ(s+1)=sΓ(s)を示せ。
\int_0^v e^{-x}x^{(s+1)-1}dx=[-e^{-x}x^s]_0^v-\int(-e^{-x}\cdot sx^{s-1})dx\\
\qquad=-e^{-v}v^s+\int_0^v e^{-x}x^{s-1}dx
 v→∞とすれば求める式を得る。

(19.7)広義積分\int_0^\infty\frac{\sin x}{x}dxは収束するが、絶対収束はしないことを示せ。
(前半)区間(0,π/2]くらいと[π/2,+∞)に分けて考える。
 区間(0,π/2]ではsinx≦xに注目すれば0<(被積分関数)≦1が言えるので収束が分かる。
 [1,+∞)では、部分積分を用いる。  \int_{\pi/2}^v\frac{\sin x}{x}dx=\left[-\frac{\cos x}{x}\right]^v_{\pi/2}-\int_{\pi/2}^v\frac{cosx}{x^2}dx
 v→∞とすると、右辺第一項は0、第二項の広義積分は|cosx|≦1より収束すると分かる。
(後半)\int_{\pi}^{n\pi}\biggr|\frac{\sin x}{x}\biggr|dx がn→∞で発散することを示す。
 区間[kπ,kπ+π]でのこの定積分をうまく評価する。
\\\int_{k\pi}^{k\pi+\pi}\biggr|\frac{\sin x}{x}dx\biggr|
>\int_{k\pi+\pi/4}^{k\pi+3\pi/4}\frac{|\sin x|}{x}dx
>\int_{k\pi+\pi/4}^{k\pi+3\pi/4}\frac{1/\sqrt2}{x}dx\\
+\int_{k\pi-\pi/4}^{k\pi+\pi/4}\frac{1/2\sqrt2}{x-\pi/2}dx
=\int_{k\pi+3\pi/4}^{k\pi+5\pi/4}\frac{1/2\sqrt2}{x}dx
>\int_{k\pi+\pi/4}^{k\pi+5\pi/4}\frac{1/2\sqrt2}{x}dx
 これをk=1からn-1まで合計すれば、
\int_{\pi}^{n\pi}\biggr|\frac{\sin x}{x}\biggr|dx
>\int_{5\pi/4}^{n\pi+\pi/4}\frac{1/2\sqrt2}{x}dx
を得る。右辺はn→∞で∞に発散するので左辺も発散する。
(19.8)広義積分せよ。
\\\mbox{(1)}\int_0^1\frac{\log x}{x^a}\;(0<a<1)
部分積分して原始関数F(x)=\frac{x^{1-a}}{1-a}\log x-\frac{x^{1-a}}{(1-a)^2}を得る。
第一項のx→+0での極限だけが問題になる。これは0に収束する。
[logx=-yとおいてye^{(1-a)(-y)}のy→+∞の極限と書くと分かるだろうか]
従って定積分の値は -\frac{1}{(1-a)^2} となる。
\\\mbox{(2)}\int_0^\infty e^{-ax}\sin bxdx\;(a>0)
原始関数を求めると-\frac{ae^{-ax}\sin bx +be^{-ax}\cox bx}{a^2+b^2}
これはx→∞で0に収束する。従って定積分の値は\frac{b}{a^2+b^2} となる。
\\\mbox{(3)}\int^\infty_{-\infty}\frac{1}{(x^2+a^2)(x^2+b^2)}dx\;(0<a<b)
部分分数分解して原始関数\frac{1}{b^2-a^2}
\left(\frac{1}{a}\mbox{Arctan}\frac{x}{a}-\frac{1}{b}\mbox{Arctan}\frac{x}{b}\right)を得る。
定積分の値は\frac{\pi}{ab(a+b)} となる。[Arctan±∞=±π/2]

(19.9)次の広義積分が収束するか発散するか判定せよ。pは正。
\\\mbox{(1)}\int_1^\infty\frac{x^p}{1+x^3}dx
積分区間でx^3\leq 1+x^3\leq 2x^3であることから、
\frac{1}{2}x^{p-3}\leq \frac{x^p}{1+x^3}\leq x^{p-3}
問題(19.2)により元の広義積分かわりにxpの収束性を調べればよい。
(問題(19.5)の通り) p≦2の時発散し、2<pの時収束する。
\\\mbox{(2)}\int_0^{\pi/2}\frac{1}{(\sin x)^p}dx
積分区間で0\leq\frac{2}{\pi}x\leq\sin x\leq xが成り立つので、
逆数をとってp乗して、\left(\frac{\pi}{2}\right)^px^{-p}\geq\frac{1}{(\sin x)^p}\geq x^{-p}
あとは(1)と同じよう。p<1の時収束し、1≦pの時発散する。

2009/11/7

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