重積分は図形を思い浮かべなくても、式に書き下せれば計算できる。
特に高次の重積分では、図形を思い浮かべることは時に困難である。
しかしながら、場合によっては図形的な考察から計算を変形できる。

重積分を少し


[問題G]
関数f(x,y)を領域Dで重積分せよ。
(1)f(x,y)=x2, D: |x|+|y|≦1
まずこの問題を使って重積分を直感的に把握しようと思う。

積分値はこの立体の体積に相当する。x,y>0の部分を計算して4倍することにする。
先にyを固定してxで積分して、それからyで積分するのは、
 赤い断面積を求めてそれを積分する手順に相当する。
先にxを固定してyで積分して、それからxで積分するのは、
 緑の断面積を求めてそれを積分する手順に相当する。

[xで先に積分]
\\4\int_0^1\left(\int_0^{1-y}x^2dx\right)dy
\\=4\int_0^1(1/3)(1-y)^3dy
\\=4\cdot1/12=1/3

[yで先に積分]
\\4\int_0^1\left(\int_0^{1-x}x^2dy\right)dx
\\=4\int_0^1x^2(1-x)dx
\\=4\cdot1/12=1/3

(2)f(x,y)=|cos(x,y)|, D: 0≦x,y≦π
立体は次のようになる。

赤い断面積がyによらずに一定になることに気づけば、
 その断面積は2であり、答えは2πになると計算できる。
それ以外に、次のような方針が挙げられる。

[積分区間を分割して絶対値を外す]
長方形0≦y≦π/2の部分を計算して2倍する。
yを固定すると、cos(x+y)は、
 x∈[0,π/2-y) の時に正
 x∈(π/2<x,π]の時に負
と場合分けして絶対値をはずす。すなわち、
\\2\int_0^{\pi/2}\left[\int_0^{\pi/2-y}\cos(x+y)dx+\int_{\pi/2-y}^{\pi}(-\cos(x+y))dx\right]dy
を計算する。

[領域を分割して絶対値を外す]
三角形x+y≦πの部分を計算して2倍する。
 三角形x+y≦π/2を、領域Aとする。ここではcos(x+y)≧0
 台形π/2≦x+y≦πを、領域Bとする。ここではcos(x+y)≦0
Aでcos(x+y)を重積分したものXと、Bで-cos(x+y)を重積分したものYを加えることになる。
すなわち、
\\P=\int_0^{\pi/2}\left[\int_0^{\pi/2-y}\cos(x+y)dx\right]dy
\\Q=\int_0^{\pi}\left[\int_0^{\pi-y}\cos(x+y)dx\right]dy
を計算して、X=P,Y=-(Q-P)であるから、2(X+Y)=2(2P+Q)が答え。

(3)f(x,y)=√(y-x2), D: x2≦y≦2-x
積分領域を確認する。-3≦x≦1を確認する。

形式通りに積分の式が立つが計算は実は少し面倒。
\\\int_{-3}^1\left(\int_{x^2}^{2-x}\sqrt{y-x^2}dy\right)dx
=\int_{-3}^1(2/3)\sqrt{2-x-x^2}^3dx
\\=\frac{2}{3}\int_{-3}^1\sqrt{\frac{9}{4}-(x+\frac{1}{2})^2}^3dx
\;\;[x+\frac{1}{2}=\frac{3}{2}\sin t]
\\=\frac{2}{3}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\sqrt{\frac{9}{4}(1-\sin^2t)}^3\frac{3}{2}\cos tdt
\\=\left(\frac{3}{2}\right)^3\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^4tdt
\\=\left\frac{27}{8}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\left(\frac{1+\cos 2t}{2}\right)^2dt
\\=\left\frac{27}{8}\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\left(\frac{1}{4}+\frac{\cos 2t}{2}
+\frac{1}{4}\cdot\frac{1+\cos 4t}{2}\right)dt
\\=\frac{27}{8}\cdot\frac{3}{8}\pi=\frac{81}{64}\pi
三角関数のべき乗の定積分がすぐできる公式もあった。問題(18.18)。
\\I_{m,n}=\int_0^{\pi/2}\sin^mx\cos^nxdx\;(m,n=0,1,2,\cdots)
\\I_{0,0}=\frac{\pi}{2},\;I_{0,1}=I_{1,0}=1,\;I_{1,1}=[-\frac{1}{4}\cos%202x]_0^{\pi/2}=\frac{\pi}{4}
\\I_{m,n}=\frac{(m-1)!!(n-1)!!}{(m+n)!!}I_{m\%2,n\%2}

(4)f(x,y)=x/(cosxy)^2, D: 0≦x≦1/4 かつ 0≦y≦π
積分区間は長方形。yで先に積分するのが計算しやすい。
\\\int_0^{1/4}\left(\int_0^\pi\frac{x}{\cos^2xy}dy\right)dx
\\=\int_0^{1/4}(\tan(x\cdot\pi)-\tan(x\cdot0))dx
\\=[-\frac{1}{\pi}\log\cos\pi x]^{1/4}_0=\log\sqrt2

[問題H]
領域Eでf(x,y,z)を重積分せよ。
[三重積分では二重積分のように積分値を図示することはできない。
 けれど領域のほうならもちろん図示できる。]
(1)f(x,y,z)=sin(x,y,z), E: x,y,z∈[0,π]
x,y,zは同等であるからどれから積分しても同じ。
\\\int_0^\pi dx\int_0^\pi dy\int_0^\pi\sin(x+y+z)dz
\\=\int_0^\pi dx\int_0^\pi(\cos(x+y)-\cos(x+y+\pi))dy
\\=\int_0^\pi dx\int_0^\pi 2\cos(x+y)dy
\\=\int_0^\pi 2(\sin(x+\pi)-\sin x)dx
\\=\int_0^\pi (-4\sin x)dx=-8

(2)f(x,y,z)=x3y2z, E: 0≦z≦y≦x≦a
まずxを固定して次にyを固定してzを動かすのが自然。
すなわち、0≦x≦a, 0≦y≦x, 0≦z≦yと考えて、
\\\int_0^a dx\int_0^x dy\int_0^y x^3y^2z^2dz
\\=\int_0^a dx\int_0^x x^3y^2(y^2/2)dy
\\=(1/2)\int_0^a x^3(x^5/5)=(1/2)(1/5)(1/9)=1/90

(3)f(x,y,z)=xyz, E: 0≦x,y,z,x+y+z≦1
領域は三角錐。0≦x≦1, 0≦y≦1-x, 0≦z≦1-x-yと書けて、
\\\int_0^1dx\int_0^{1-x}dy\int_0^{1-x-y}xyzdz
\\=\int_0^1dx\int_0^{1-x}xy(1-x-y)^2/2\;dy
\\=\int_0^1dx\int_0^{1-x}xy^2(1-x-y)/2\;dy
\\=\frac{1}{2}\int_0^1\left[x(1-x)\cdot\frac{1}{3}(1-x)^3-x\cdot\frac{1}{4}(1-x)^4\right]dx
\\=\frac{1}{24}\int_0^1x(1-x)^4dx=\frac{1}{24}\int_0^1x^4(1-x)dx
\\=\frac{1}{24}\left(\frac{1}{5}-\frac{1}{6}\right)=\frac{1}{720}


[問題I]
f,gがI=[a,b]上の関数でfはリプシッツ連続:
 正定数Lがあって|f(s)-f(t)|≦L|s-t| (s,t∈I)
であって、gはI上有界積分可能であるとする。
集合(f(t),g(t)) (t∈I)が面積確定でその面積が0になることを示せ。

流れだけを簡単に見る。
区間Iを分割凾ノよって分割する。小区間を覆う長方形R_iの面積の合計を考える。
Σ(R_iの面積) = Σ (fの幅)×(gの幅)
≦ Σ L×|区間の幅|×[(区間でのgの上限)-(区間でのgの下限)]
= L×[(gの上方和)-(gの下方和)]
ここで[ ]の中身は、gが積分可能であることから|處→0で0に収束する。
従って、与えられた集合はその"上方和"が0であるから面積確定でその面積は0。

2009/12/19

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