12/1 問題11.3に原文を追加しておいたのと説明を改良したつもり。
2/10 問題10.1で下界というものを私が間違えていたので訂正。

練習問題10・11[リーマン積分]


問題10.1 実数からなる集合の最小元は下限であることを下限の定義に従って示せ。

その集合をS、最小限をaとする。
aがSの下限であるとは、"aがSの最大の下界"ということで、
Sの下界とは、"Sの任意の元bに対してx≦bが成り立つ実数x"である。
まず、aがSの下界にであることを確かめる。
もしSの元bがあってa≦bが成り立たない、つまりa>bとするとaが最小元であることに矛盾。
次に、aより大きな数はSの下界ではないことを確かめる。
aより大きな数cに対してSの元aはc≦aを満たさないからcはSの下界ではない。
従ってaはSの下界の上限すなわちSの下限である。

[2010/2/10 訂正前には次のように書かれていた。
Sの下界とは、"Sの任意の元bに対してx≦bが成り立つ実数xの集合"である。
それを直すと共に"下界に属する"などの表現も"下界である"などと直した。]

問題10.2 集合{(x,y)∈R2|-1≦x≦1,y=x2}が平面R2の零集合であることを 零集合の定義に従って示せ。

この集合を覆う長方形群の列(n)を次のようにx軸を1/n刻みにして構成する。
[-1,-(n-1)/n]×[((n-1)/n)2,1], ...,[-2/n,-1/n]×[(1/n)2,(2/n)2], [-1/n,0]×[0,(1/n)2],
[0,1/n]×[0,(1/n)2], [1/n,2/n]×[(1/n)2,(2/n)2], ..., [(n-1)/n,1]×[((n-1)/n)2,1]
(image)
(こんな感じ)この長方形群の面積の和は(並べて分かるように)2/nでありn→∞で0に収束する。
従って、あらゆる与えられた集合を覆うようなあらゆる長方形群を考えた時、
その面積の和の取り得る値の下限は0である。すなわちその集合は零集合である。

問題10.3 正数xに対してはf(x)=1/√xとし、x=0の時はf(x)=0とする。
n個の区間[(k-1)/n,k/n] (1≦k≦n) からその区間に属する実数ξn,kを1つずつとる。
そのとき、1/n Σf(ξn,k)がn→∞で+∞に発散するようなものを1つ答えよ。

[f(x)は[0,1]で広義積分可能である。しかしそれをリーマン和で定められないという。]
k≧2については、ξをどのようにとってもそこの和は、...+∞に発散しないはずである。
従って問題になるのはk=1で、そこに注目すると例えば次のようにすれば+∞に発散させられる。
[f(x)はx→+0で+∞に発散するのでf(ξ1)はいくらでも大きくできる。]
ξn,1は0と1/nの間にとるのである。そこで、ξn,1=1/n3くらいにすると、
\\\frac{1}{n}\sum_{k=1}^nf(\xi_{n,k})\geq\frac{1}{n}f(\xi_{n,1}) [∵和の各項は正である。]
\\=\frac{1}{n}\cdot\frac{1}{\sqrt\frac{1}{n^3}}=\sqrt{n}
これはn→∞で+∞に発散する。(よって左辺も+∞に発散する。)

問題11.1 奇数nに対して、x∈(0,π)のときf_n(x)=\frac{\sin nx}{\sin x} とし、x=0,πの時fn(x)=nとする。
関数fn(x)が閉区間[0,π]で積分可能であることを示し、その積分を計算せよ。

(前半)
x→+0の時及びx→π-0でのfn(x)の極限を計算してfn(x)が[0,1]で連続なのを確かめる。
前者はsinx/x→1(x→+0)をそのまま使える。後者はx=π-yと置き換えたりすれば良いと思う。
するとどちらもnに収束してそれはfn(0)=fn(π)に等しいことが確かめられる。
(0,π)でも(連続関数の商で分母が0でないので)連続なのでfn(x)は[0,1]で連続である。
一般にfが[a,b]で連続ならばfは[a,b]で積分可能である。

[閉区間で連続であるから一様連続である。従って任意の正数εに対して十分大きな正数Nをとれば、
 幅1/Nの区間に属する実数x,yに対して|f(x)-f(y)|<εが成り立つようにできる。
すると[a,b]をN等分した分割において、上方和と下方和の差はε(b-a)より小さい。]

(後半)
\\f_n(x)=\frac{\sin nx}{\sin x}=\frac{\sin(n+1)x\cos x-\cos(n+1)x\sin x}{\sin x}\\
f_{n+2}(x)=\frac{\sin (n+2)x}{\sin x}=\frac{\sin(n+1)x\cos x+\cos(n+1)x\sin x}{\sin x}
と変形できる。第一項は共通で、第二項は±cos(n+1)xである。
今n+1は偶数だから、n≠-1の時、cos(n+1)xを[0,π]で積分すると0になるから、結局
\int_0^\pi f_n(x)dx=\int_0^\pi f_{n+2}(x)dx\;(n\neq -1)
n=1の時の定積分はπであるから、答えは、nが正のときπ、nが負のとき-πである。

問題11.2 半径1の半円の面積を求めるため √(1-x^2)の積分を考え、x=sinθと置換した。
その際、x=-1にθ=3π/2を、x=1にθ=-3π/2を対応させて計算しても正しい答えを得られるか。

得られない理由はない。ただし、√(1-sin2)=cosθとすると誤る。
正しくは|cosθ|なので、積分する際にcosθの符号によって区間を分けなければいけない。

具体的に、通常の計算である-π/2からπ/2までの定積分(cosθは正)の値をAとしておくと、
3π/2からπ/2の区間の定積分はcosθが負なのと区間の大小が逆転しているのと合わせてA
π/2から-π/2の区間の定積分は区間の大小逆転のみなので-A
-π/2から-3π/2の積分は最初の区間と同じようにA
これらを合計するとAになって通常の計算と同じ結果である。
[ただし、sinθではなく例えばtanθの場合は連続でないので同じとは限らない]

問題11.3 関数F(x)=arctan 1/1-x について以下の問に答えよ。
(1)導関数F'(x)は直線上の連続かつ正値な関数f(x)に一意的に延長されることを示せ。
(2)f(x)>0を用いて \int_0^2f(x)dx\neq[F(x)]^2_0 を示せ。
(3)その定積分を正しく計算せよ。(原文は"∫02f(x)dxを計算せよ。")

(1)F(x)を普通に微分する。
F'(x)=\frac{1}{1+(\frac{1}{1-x})^2}\cdot\frac{d}{dx}\frac{1}{1-x}=\frac{1}{1+(1-x)^2}
x≠1ではf(x)=F'(x),f(1)=1と定める、つまりすべてのxに対してf(x)を上の式で定めると、
そのf(x)は(分母が常に正で連続であり...)条件を満たすことが確かめられる。

x→1の時F'(x)→1であるからf(1)≠1とするとf(x)は連続関数でない。
よって条件を満たすf(x)はこれだけである。

[F'(x)の定義域はx≠1であり、一方f(x)の定義域は実数全体なのである。]


(2)F(2)-F(0)を計算すると(-π/4)-(π/4)=-π/2で負である。f(x)は正だから両辺は等しくない。

(3)\int_0^2f(x)dx=\int_0^2\frac{1}{1+(x-1)^2}dx=[\mbox{Arctan}(x-1)]^2_0=\pi/2

(image)
つまり定積分の計算では積分区間で連続な原始関数を使わなければいけない。
広義積分を使ってF(1-0)-F(0) + F(2)-F(1+0)と計算するのは正しい答えを与える。
このあたりの事情は上のグラフの様子を見ると示唆されると思う。

問題11.4 点P(a,a2)を通る直線が方程式y=x2の表す放物線と再び交わる点がQ(b,2)である時、
 この放物線と直線が囲む部分の面積をS(b)とする。ただしa<bとする。(原文はα,β)
(1)正数hに対して次が成立することを図形的考察によって示せ:
\frac{1}{2}(b-a)^2<\frac{S(b+h)-S(b)}{h}<\frac{1}{2}(b-a+h)^2
(2)条件a<b+hを満たす負数hに対して(1)と同様の考察をせよ。
(3)以上の結果を利用してS(b)=1/6 (b-a)3を示せ

(1)次の図で、△PQQ'<S(b+h)-S(b)<△PRR'による。
(image)
実際に面積を計算して各辺をhで割ると与えられた不等式になる。
外積などで△PQRを計算して、辺の比を使ってその2つの面積を得ると効率良いと思う。

(2)上の図でbとb+hが逆になった。やはり同様の不等式が成り立つ。
△PQQ'=1/2 (-h)(b-a+h)2<S(b)-S(b+h)<△PRR'=1/2 (-h)(b-a)2
各辺を-h(正である)で割ると次のような不等式となる。
\frac{1}{2}(b-a+h)^2<\frac{S(b+h)-S(b)}{h}<\frac{1}{2}(b-a)^2

(3)S(b+h)-S(b) /h はh→0の時に1/2 (b-a)2に収束することが分かったので、
 S(b)は微分可能でありS'(b)=1/2 (b-a)2である。
従ってS(b)はこの原始関数でかつS(a)=0を満たすからS(b)=1/6 (b-a)3である。

2009/11/17

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