満ちてくる海 (The Rising Sea) 日本語訳


内容はプレーンテキストです。おそらく少なくとも当分は更新は見込まれない気がします。
2021/3 ちょっとだけsea.txt (2020/03/25 712KB)
2020/5 再開→休止:sea20200704.txt (2020/07/04 702KB)
2019/4 再開→休止 (sea20190606.txt, 417KB)
2018/5 徐々に書き始めた→11章に苦戦して休止 (sea20180616.txt, 217KB)
・誤植疑いメモ:errata.txt
これはRavi Vakil氏による代数幾何の素晴らしい教材の日本語訳(の試み)である。
元の出典は、検索すればpdfファイルを直接見つけることもできるが、
http://math.stanford.edu/~vakil/216blog/
からアクセスすると、最新版を得られる。私は2017/11/18版を使っている。
・しばらく更新がないが、ブログ(2020/4)にThe notes have been steadily advancingと書いてあった。)
・どう素晴らしいか:
事実や証明だけでなく背景にある考え方などについても詳しく書いてある。
内容を理解するために読者が立ち止まって考えるべきことを練習問題として行間に書いてある。
練習問題の難易度や重要性も書いてあったりする。ヒントもよく書いてある。
消化に時間がかかる内容や初見では読み飛ばした方が良い内容は、それが分かるように書いてある。

・特に作業中(穴あき)であることを示すのに ・・を書いた。(書いてない所もある。)
・練習問題では(古い数学書の真似をして)「であることを示せ」を省略した。(少し後悔している)
・私のコメントや考察は /* */ で挟んで書いた。
・この日本語訳は差し当たりプレーンテキストで書かれている。
 なので図などは言葉による描写でしか再現できない。いくつかの記号も代替的である。
テンソル積は全角記号@を使うことにした。基礎体は必要に応じて@_Aなどと表記した。
[最初(x)や(X)を使っていたが、検索する時にf(x)やO(X)と衝突するので変えた]
直和、非交和には、全角「+」を使うことにした。
閉包や代数閉包はU ̄やQ ̄というふうに表記した。
写像の合成は白い丸の代わりにf・gで表記した
花文字のHOM,SPEC,PROJはこのように大文字を使った。
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いくつかの迷った訳語:
・varietyを多様体と訳したので、manifoldを古典的多様体と訳すことにした。
・A-algebra:A-多元環A-代数(2020年に変えた)
・identity axiom, gluability axiom:一致の公理、貼り合わせ公理
・compatible germ:貼り合わさる芽一貫性のある芽 (2019年に変えた)
・distinguished open set:基本開集合
・base change:底変換
・affine-local:アフィン局所的
・moral:精神 (参考:https://twitter.com/icqk3/status/990942240712216576)

▽2020年(メモ)▽
3/17 内部言語 https://twitter.com/icqk3/status/1372193065012629506 3/22 代数幾何の教材をすすめるきっかけがあって https://twitter.com/Re_menal2/status/1374179948169027584 3/25 2.7, 3.6

▽2020年(メモ)▽
昨年のメモで言及したガロア貼り合わせがある程度わかった。勉強ノートに書いた。
そして連休になったので戻ってきた。
正直、このノートが誰かの役に立つことはあまり期待していない。なるとしたら動機付け的な意味ぐらいだろう。
TeXを使わないのは私の怠惰である。そこに労力を掛ける動機がないのである。
大学の講義で板書を写す作業は、教科書に書いてあることを強制的に一度内容を追う効果があると読んだことがある。
私は、同じ教材を繰り返し読むのが好きではない。でも一度読んだだけでは理解できない。
そこでこうやって写経することは、強制的に繰り返し読み、しっかりと理解することを助けるのである。
(理解していないところは大抵写経を飛ばしているし、練習問題を解けていないのでばれてしまうのだ。)
この方法は実際険しいので、これを実行する教材は1つで十分だ。
しかし、喜ばしいことに、この教材はかなり埋まってきていて、やがて終わるのも現実的になってきている。
(3割は終わったんじゃないか?)
その次に読むものもそろそろ考えておいた方が良いかもしれない。やっぱりエタールコホモロジーかな・・

・15.3.2等で紹介されていたEisenbudの"Commutative Algebra with a View to Algebraic Geometry"を少し読んだ。
 次数付き環を重視した視点のように思えた。
・射影射について理解を深めたいと思った(17章)。そうすると必要に応じて前のほうに戻らされる。
・射影スキームが次数付き環に対応する細かい注意
 A上の次数付き環S●という言葉は、S_0=Aを要求することを見落としていた
 ProjS●→Aが射影射であるためには、S●が有限生成であることを要求する
・ProjS●の連接層の押し出しはA上の連接層:
 それぞれのアフィン上での構造層はA-加群として有限生成でないが、
 ProjS●全体で貼り合わさる切断は定数関数しかない
・P^n上の直線束O(m)について理解を深めた(15.3.9の後にコメントした)。
・1章:スペクトル系列の練習問題を解いた。8.4でそれを使うところを追った。(5/21)
・9.1.6で少し触れられていた「関手としてのスキーム」の視点について
 2019/7に少し考察した視点を思い出した:http://searial.web.fc2.com/aerile_re/affine.html
 ゆくゆくはこの視点を大切にすることになる気がする。
・10章:固有射について理解を深めた(10.3.A等)。準分離射の2つの定義の同値を追った。
 その際qc射がアフィン局所的なことを使うのに3.5.C→3.6.G(a)→5.3.2→7.3.C(a)の流れを追った。
・11章:クルルの単項イデアル定理、標高定理辺りをちょっとやっつけた。特に11.3.C等。(5/10)
 11.4.Bのspreading outは9.3.Gでも登場した。6.5.7辺りの議論にも出ていた。
 分母が0でない開集合をとることで生成点の茎をある開集合に広げるという議論の仕方。
・12章:正規、正則、滑らかについて改めて理解した。5.4の正規性と分解性を埋めた。
 中山の補題が何度も出てきた。12.2.Aで中山の補題を使えば良いと自分で気づけた。
 12.5.8で7.2.Iを使う所はよく馴染めない。
・13.1.7、局所自由層の有理関数、正則の定義、ハルトークスの補題11.3.11の役割を確認した。
・14章:ヴェイユ因子に付随する可逆層の再確認。「難しいが重要な練習」14.2.Eをやっつけた。(6/7)
 14.2の冒頭に書かれた「代数幾何の話題のうち消化するのが最も難しいものの1つ」を得た気がした。
・18章:コホモロジー、オイラー標数。よく理解したい概念の1つ。
 18.4を読み進めるのに、直線束とヴェイユ因子について14.2.E←12.5, 17.4←6.5の再確認をさせられた。
・このあたりの内容を、一度自分の言葉でまとめることをした。http://searial.web.fc2.com/aerile_re/curve.html(6/13)
・19章は以前から拾い読みしていた。20章〜24章を適当に進めている。
 微分、平坦、できればブローアップ、交点数辺りが次の課題と思っている。
・23章:導来関手:スペクトル系列の使い方を忘れかけていたが思い出せた。
・20章:交点理論を読むのに、18.6の重要さに気づき:いろいろな次元の計算
 (消化に時間がかかると書いてある)16.4.1の重要さに気づいた:直線束と射影空間への射について。(6/20)
 1次元スキーム上の直線束(0次元余因子)の次元は内在的に定義できるが、
 より高次の場合は、P^nへの埋め込みを固定しないと次数は定義できないと認識した(例えばねじれ3次曲線)。
・曲面における因子同士の交点数などの経験:http://searial.web.fc2.com/aerile_re/bl.html (6/26,27)
 20.2.Hで、数値的同値、nefが登場し、これは18.4.9に居た。
 The stacks projectの42章が気になる。代数的サイクルへの一般化。
・21章:微分。標準因子をいくつか計算した。http://searial.web.fc2.com/aerile_re/dual.html (6/28-)
・19章に戻って19.1.Cなどでつまづいた。  24.5.Cでも登場した00E6の図式
・自己交点は余法層O(D)|Dとも解釈できる辺りで、
 F|p = F_p {@_OX_p} κ(p) (4.3.7), 13.7.J 重要な練習, 13.7.K 重要で難しい練習 辺りを復習した。

代数的サイクルとエタールコホモロジーを読めたら読みたい気持ちがある



▽2019年(メモ)▽
再開したきっかけは、ガロア降下をグロタンディーク位相の視点で描写できそう、という現象に出会って、
https://twitter.com/icqk3/status/1114691517333917697
それは The stacks project のDescentの所に書いてあるがまだ詳しく説明できない。
その過程で「準連接層」について理解を深める必要があり、戻ってきた。

4/24 セクション0.2の言葉を訳した。次の言葉が印象的だった:
代数幾何の講義をする人に圏と層についてじっくり扱うように勧めていた。
「これらの講義は私自身には辛いほどペースが遅くても、
多くの学生には目から鱗が落ちるもので、最も経験がある学生でも退屈しなく、
時間を無駄にしないことに気がついた。」
そういうわけで、圏論と層について昨年飛ばしてた穴をいっぱい埋めた。

アドバイス:2019年版
・層の貼り合わせに関する複数の視点を(良く区別して)持っておくと良いと思う:
(後から読んだら本文の2章の冒頭にもそのようなことがちゃんと書いてあった)
[1] 開集合での断面での視点(2.2.6 層の公理)
[1]' 等化子完全列(2.2.7)
[1]" 反変関手としての圏論的言葉「余極限を極限に移す」(2.2.C)
[2] 一貫性のある芽という視点(2.4.3周辺)
[2]' エタール空間を使った言葉 (2.2.11, 2.4.8)
[3] 開集合の基での切断からの復元 (2.5.1)
[4] コサイクル条件を満たす被覆での部分層からの復元 (2.5.D, 4.4.4)

*逆像や引き戻しの概念は、[2],[2]'での視点が扱いやすい *8.1.Hに与えられた3つのヒントはだいたい[2][3][4]の3つに対応する気がする。
*[4]の視点をグロタンディーク位相で考えるのが「降下」の概念につながりそうだが、今はまだそこに踏み込まない。)

・層の準同型の全射であることはすべての断面で全射を意味しないことは重要な概念である。
複素平面での正則関数のなす層でのexpが理解に良い例である。(2.4.10, 2.5.E)

・逆像π^-1と引き戻しπ^*の違いについて2.7の最初の段落の後に補足した。

・5.1.E「準コンパクトスキームは閉点を持つ」は、
部分集合に誘導される位相の定義をよく認識するための良い課題だと思う。

・5.5のSpec k[x,y]/(yy,xy)という例は整域とは限らない環のスキームを考察するのに良い例である。
この例にはなんども混乱した。特に芽として消えることと値として消えることを区別する必要がある。
またこのスキーム上のyという関数は「稠密な開集合への制限が0になる大域関数は0とは限らない」例である。

・1.6.F(いくつかの関手の完全性), 2.6.F(HOM層), 6.3.2(), 7.3.5(qcqs補題), 13.2.D(準連接層の性質)のような問題を真面目に取り組んだ。
(だいたい書いてる時は理解が深まった気がしたけど見返すと何を書いてるのかあまり分からない。皆が通る道なのだろうか・・?)
これらは13章を読もうとして、必要を感じて読みなおした内容である。その必要はだいぶ満たされた感じはするけど結局13章はまだあまり進んでいない(5/30)

13章の練習問題をだいぶやっつけた。(6/16)
11,12章の次元がまだあまり分からない。6.5のProjのちょっと残っている。
できればガロア降下に進みたい。

▽2018年に書いた文章▽
私は2016年の5月にインターネットでこの教材に出会った。序文に書かれた熱意を読んで、ぜひこの頼もしい教材をよりどころに代数幾何を勉強しようと決心した。時間を見つけて、眺めていった。しかし、練習問題は、重要だと分かっていても、なかなか敷居が高かった。まずは先まで眺めて、風景を知りたかった。練習問題は、気が向いたときだけ、真剣に挑戦した。
2018年の5月(連休は好きな勉強ができる貴重な時間である)、もっとよく理解したいと思った。そこで練習問題を解きながら、日本語に書き下し始めることにした。これは、本当に勉強になる方法であった。これにより、自分がどこまで追えているのかをはっきりした。そして今までいかに飛ばし読みしていたのかが明らかとなった。

私は幸運に英語を読めるが、例えばグロタンディークのフランス語のEGAしか無いと言われたら、代数幾何を勉強する気に至らなかっただろう。代数幾何の日本語の数学書はそれなりにたくさんあるが、スキーム理論を体系的に扱ったものは、有名なハーツホーンの和訳しか知らない。このThe Rising Seaの日本語訳は、きっといくらかは役に立つだろう。一石二鳥である。

しかし、いざ日本語訳を書こうと思うと、なにしろ、まず量が膨大である。それに、ちゃんとした日本語の文章にするのは、思ったより難しい作業であった。今のところ穴あきで、とても人のための文章を呈していないが、まずは自分の勉強のためというつもりで、書き始めた次第である。時間がある時に、巨大なジグゾーパズルのように、少しずつ埋めて行きたい。

書いてある内容について、私の権利を主張するつもりはない。
万が一引用などされる場合には、常識的なやり方でしてくれればと思う。
私に連絡する方法の例:http://m-pe.tv/u/m/formmail/?uid=searial&id=1
(私のことを他で知っているなら他の方法で連絡してくれて良い)

・アドバイス:私が要注意点だと思ったところ
局所化の表記について(1.3.3)
環つき空間の用語 (2.2.13)
特殊な意味で使われる用語:関数、値(3.2.1)
生成点generic pointと一般的な点general point(9.5)

・貼り合わせに関する重要なテクニック("1の分割")
「x1,x2,..,xnが互いに素ならばx1^n,x2^n,...,xn^nも互いに素」であること:
a1x1+a2x2+..+anxn=1 となる a1,a2,..,anが存在するならば、両辺を十分に大きいべき乗を作用させることで
A1x1^n+A2x2^n+..+Anxn^n=1 となるA1,A2,..,Anを得ることができる。
(4.1.3が最初の使い所。)

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