2.1 円分多項式Φ[k]


円分多項式Φ[k](x)は次のように定義される。(1)と(2)は同値である。
(1) x^k-1 を因数分解したもののうち、x^d-1 (d<k)の因数に現れない部分がΦ[k](x)
(2) k乗して初めて1になる複素数(1の原始k乗根)を解とする最小方程式がΦ[k](x)=0

#kが小さい場合を挙げておく。=0とおいた解も簡単なものは書いておく。
Φ[1](x)=x-1 [x=1]
Φ[2](x)=x+1 [x=-1]
Φ[3](x)=x^2+x+1 [x=-1/2±√-3/2]
Φ[4](x)=x^2+1 [x=±i]
Φ[5](x)=x^4+x^3+x^2+x+1
Φ[6](x)=x^2-x+1 [x=1/2±√-3/2]
Φ[7](x)=x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1

#kが素数の時はΦ[k](x)=(x^k-1)/(x-1)=1+x+x^2+...+x^(k-1)となる。
 ∵kの約数は1とkだけなので、Φ[k]=Φ[1]*Φ[k]
#kが素数でない場合はこれが因数分解できて、その1つがΦ[k](x)となる。

・x^k-1=Φ[d](x) [dはkの積] が成り立つ。これは定義から従う。
 例えばx^6-1=(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1) である。
 これらは順に、1,2,3,6乗で1になる複素数に対応する。
 例えば6乗して初めて1になる複素数はx^2-x+1=0の解である。
 帰納的に考えて、Φ[k](x)の次数がφ(k)次であることが分かる。
#参考に、x^6-1=0の解の分布を複素平面上で示す。


・Φ[k](x)=0の解の1つをαとする。
 cがkと素な整数であるとき、α^cもこの方程式の解である。
 なぜならα^cもk乗して初めて1になるからである。
 そういうわけで、Φ[k](x)=0の解はφ(k)個あることが分かる。

☆x^jk-1はx^k-1で割り切れる。実際、次のように割り切れる。
 xjk-1= (xk-1)*(1+xk+x2k+...+x(j-1)k)
ここで、j≧2(つまりjk≠k)なら、円分多項式の定義から、
(xjk-1)/(xk-1)=(1+xk+x2k+...+x(j-1)k)はΦ[jk](x)を因数にもつ。

#具体例:(k,j)=(2,3)あるいは(3,2)の時の状況は以下の通り。
(x^6-1)/(x^2-1)=1+x^2+x^4=(x^2+x+1)(x^2-x+1) はΦ[6](x)を因数にもつ
(x^6-1)/(x^3-1)=1+x^3=(x+1)(x^2-x+1) はΦ[6](x)を因数にもつ
#定義から、右辺=Φ[d]の積 [d:jkの約数であるがkの約数ではない] である。

この性質はこの後の4.2節と4.3節の証明で使う。

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