自己同型写像


ここで行うのはa+biに対して複素共役a-biをとる写像の一般化である。
ここではk=12次の円分多項式x^4-x^2+1を例に使う。
これはx^12-1の因数の1つであり12乗して初めて1になる複素数を根に持つ。
α=exp(2πi/12)とするとα, α^5, α^7, α^11の4つである。
それらは具体的には ±√3/2±(1/2)√-1 の4つと表現できる。

ここで、αの式に対してαの代わりにα^cを代入する写像を考える。
例えばc=5のとき α^3+α → (α^5)^3+α^5 = α^15+α^5 = α^3+α^5
この写像をσ_cと呼ぶことにする。すなわち、σ_c(α^3+α) = α^3+α^5

y,zをそれぞれαの有理式で表される複素数とする。(*1)
α^cがx^4-x^2+1の根だとする。すなわちc∈[1,5,7,11] とする。
このとき、写像σ=σ_cについて次が成り立つ。
・y=z ならば σ(y)=σ(z) (*2)
(このおかげでσを「αのに対する写像」であるだけでなく
「αの有理式で表される複素数」に対する写像として扱える。)
・σ(y+z)=σ(y)+σ(z), σ(yz)=σ(y)σ(z), (*3)
 よって有理式f(x)に対してσ(f(y))=f(σ(y))
・σ(y)はyの共役を与える。(*4)
・4つの複素数 σ_c(y) [c=1,5,7,11] の対称式は有理数である。(*5)
 特に y=σ_5(y)=σ_7(y)=σ_11(y) ならばyは有理数である。

(*1) αの有理式で表せるということはαの多項式で表せる。(a3で触れた)
(*2) これは一見当然だが、c∈[1,5,7,11]だからこそである。
 例えばαは x^4-x^2+1=0 を満たすことから α^2=α^4+1 であり、
 よってσ(α^2)=σ(α^4+1) が成り立つことが要求される。
 c=3 とかだと α^6=α^12+1 となって左辺=-1, 右辺=2 で不成立。
[略証] z=0 で考えれば十分。y=g(α)と表せるとする。
 g(α)=0 ならば g(x)は(x^4-x^2+1)を因数にもつから
 c∈[1,5,7,11] とすれば g(α^c)=0 つまりσ(y)=0 が言える。
(*3) この性質を持つ写像は「自己同型写像」と呼ばれる。
(*4) yの最小多項式をf(x)とすれば、σ(f(x))=f(σ(x))だから
 f(y)=0 ならば f(σ(y))=σ(f(y))=σ(0)=0 が言える。
(*5) 定義から、α,α^5,α^7,α^11の対称式でもある。
 それらの基本対称式はx^4-x^2+1の係数だから有理数である。

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