αとβの性質


kを整数とし、αを1の原始k乗根、Aを(mod k)の部分乗法群とする。
Aの元の個数をmとし、n=φ(k)/mとする。

☆主張たち☆
(1) β=u(α)=Σ(α^c) [c∈A] の最小多項式W(x)はn次である。
(2) αは係数にβを使ったm次方程式F(β,y)=0の解として書ける。

[補題]
・記号β[d]=u(α^d)=Σ(α^cd) [c∈A] と定義する。
(1-1) dを既約剰余類に限ったφ(k)個のβ[d]は、m個の同じものがn組ある。
(1-2) そのn組の重複していないβ[d]達について、対称式が有理数となる。
・g(α)をαの多項式とする。
(2-1) 既約剰余類cのうちg(α^c)=g(α) となるcの集合は部分群となる。
(2-2) その部分群をAとし、β[d]を定義する。g(α)はβ[d] 達の1次式で書ける。
(2-3) すべてのβ[d]はβ=β[1]の多項式で書ける。

[略証:具体例を交えて]
k=15,A={1,4}とする。αは1の原始15乗根で、α^15=1である。
Aの元の個数mは2であり、n=φ(k)/m=4となる。

(1-1) φ(15)=8個のβ[d]=u(α^d)を書き下すと以下のようになる。
β[1]=α+α^4, β[2]=α^2+α^8,
β[4]=α^4+α^16=α+α^4, β[7]=α^7+α^28=α^7+α^13,
β[8]=α^8+α^32=α^2+α^8, β[11]=α^11+α^44=α^11+α^14,
β[13]=α^13+α^52=α^7+α^13, β[14]=α^14+α^56=α^11+α^14
これらがm=2個ずつ重複していることがこの補題で、次の理屈による:
β[x]=β[y] ⇔ 集合{xc|c∈A}=集合{yc|c∈A} ⇔ あるc∈Aがあってy=cx

(1-2) 重複していない4つのものを次のように名づける:
β1=α+α^4, β2=α^2+α^8, β3=α^7+α^13, β4=α^11+α^14
これらの対称式は{α,α^2,α^4,α^7,α^8,α^11,α^13,α^14}の対称式でもある。
なぜならαの代わりにα^c(c∈{1,4})とおいてもβ達は不変であり、
代わりにα^c(c∈{2,7,8,11,13,14})とおくとβ達同士が入れ替わるだけだから。
α,α^2,...達はΦ[15](x)の共役解達だから、その対称式は有理数である。

(1) よってβ1からβ4は有理係数の4次方程式の解として書ける。
 (既約性はちょっと証明が分かってません。)

(2-1) 既約剰余類cのうち、g(α^c)=g(α)が成り立つcの集合をAとする。
 x,y∈A ⇒ xy∈A が成り立つから、Aは部分群であることが言える。

(2-2) Σg(α^c) [c∈A] を考えると、これはg(α)*mに等しい。
 項別に見てg(α)=Σai*α^i と書いて項別に上記の和を考えることで、
 Σg(α^c) [c∈A]=Σai*β[i] と書ける。
例.g(α)=α^3 に対する部分群Aは{1,11}である。α^3=(α^3+α^33)/2=β[3]/2

(2-3) β,β^2,β^3,...は(2-1),(2-2)の結果によりβ[d]の1次式で書ける。
 β[d]達を変数と見て、線形代数的にβ[d]をβ,β^2,β^3たちで表せるだろう。
(考察不足です。特にkが合成数の時はdが既約でない時難しいです...
代数学的には、正規拡大を仲介する中間体の経路も正規拡大である、て話だと思う。)

(2) β[d]とは{α^c(c∈A)}のd乗和である。それがβの多項式で書けるということは、
 {α^c(c∈A)}の対称式がβの多項式で書けることを意味する。
 よって{α,c(c∈A)}を解とするm次多項式の係数はβの多項式で表せる。

#改めて具体例

・k=7,A={1,2,4}の場合(m=3,n=2)
 β=β[2]=β[4]=α+α^2+α^4, β[3]=β[5]=β[6]=α^3+α^5+α^6である。
・βとβ[3]の対称式は有理式になるのであった。:補題(1-2)
 β+β[3]=-1,β*β[3]=β+β[3]+3α^7=2
 ということはβは2次方程式W(x)=x^2+x+2=0の解である。:主張(1)
・ということは簡単にβ[3]=-1-βという表記を得る。:補題(2-3)
・α,α^2,α^4の対称式はαの代わりにα^2,α^4を代入しても不変だから、
 βとβ[3]の1次式で書ける。:補題(2-2) よってβの多項式で書ける。
・よってF(y)=(y-α)(y-α^2)(y-α^4)を展開するとαの部分はβの式で書ける。:主張(2)
 F(y)=y^3-βy^2+β[3]y-1=y^3-βy^2-y-βy-1 となる。

・k=15,A={1,4}の場合
β=α+α^4,β[2]=α^2+α^8, β[7]=α^7+α^13, β[11]=α^11+α^14
・1,β,β^2,β^3はαの代わりにα^4を代入して不変だからβ[d]の1次式で書ける。
1=β+β[2]+β[7]+β[11]
β=β
β^2=-β[2]-2β[11]
β^3=-3β-β[2]-β[7]-3β[11]
・連立方程式を解くようにしてβ[2],β[7],β[11]がβの多項式で書ける。
・それで(y-α)(y-α^4)=y^2-βy-β[2]-β[11]=y^2-xy-x^3/2+x^2-x-1/2 となる。

 目次 inserted by FC2 system