W(x)の素因数、約数


整数kと部分群Aを定め、u(y)=Σy^c (c∈A)を定める。
u(α)[α=1の原始k乗根]の最小多項式をW(x)とする。
また記号Kはkのうちp以外の素因数からなる部分を指す。

☆主張☆
W(x)の素因数について、次たち(1)(2)(3)を主張する。

(1) 有理数xがあってW(x)がpで割り切れる
⇔m次範囲の無理数yがあってΦ[k](y)がpで割り切れ、かつu(y)=x(有理数)

(2) [前半の条件について]
m次範囲の無理数yがあってΦ[k](y)がpで割り切れる
⇔ K乗して初めて1(mod p)になるyがある ⇔ Kはp^m-1の約数である
(∵前半は2.2節と同じ議論による。後半は3.2節の結果による。)
#K≠kの時pで1回だけ割り切れ得て、K=kの時は任意回数で割り切れ得る(2.2節)

(3)[後半の条件について]
m次範囲の代数的な剰余類yがあってΦ[k](y)≡0とする。Aをmod kの部分群とする。
u(y)が有理数 ⇔ あるc∈Aがあってp≡c(mod K)

#W(x)が互いに素なA,Bで割り切れるxがそれぞれ存在するなら、
 2.3節で指摘したように、W(x)がABで割り切れるxも存在する。
(∵Aで割り切れる時のxをa、Bで割り切れる時のxをbとする。
 Aで割ってa余り、Bで割ってb余る数を新しいxとすれば良い。)

[(1)と(3)の略証]
(1):<上から下>
前節より、u(y)=xとなるyをyのm次方程式F(x,y)=0の解によって書けるのであった。
[補助主張]
W(x)=0 かつ F(x,y)=0 ならば Φ(y)=0
(∵F(x,y)=0の解は高々m個であり、α^c(c∈A)が解になり得るから、
 それですべてである。それらはΦ(α)=0を満たす。)
これを合同式と読み変えればW(x)≡0 かつ F(x,y)=0 ⇒ Φ(y)≡0

<下から上>
Φ(x)=0 かつ y=u(x) ならば W(y)=0 が成り立つから
やはり合同式への読み替えにより主張が言える。

(3):<左から右>
u(y)が有理数になるとしてaとおく。
前節の主張よりyがΦ[k](y)≡0の解であるなら、
yは係数にu(y)=aを使ったm次方程式の解として書けるのであった。

y^c [c∈A]がこのm次方程式のm個の解となるはずである。
・c∈A のときu(y)≡u(y^c)である
・cはmod kの既約剰余類だからy≠y^c

ところが、3.3節よりy^pがyの代数的な共役であることに注意すると、
aが有理数ならaの代数的な共役はa自身であるから、
y^pがy^c[c∈A]のどれでもないということは解過剰を引き起こす。
よってy^pがy^cのどれかであるか、さもなければaは有理数ではない。

<右から左>
c[c∈A] からpのべき乗を選びとる。それらのcに対するy^cの和は共役の和なので有理数。
残っているものの1つをdとするとd,dp,dp^2,...も残っている。
それらも共役たちなのでそれらのdp^jに対するy^(dp^j)の和も有理数。
これを繰り返すことを考えれば、u(y)は有理数であることが理解される。

#具体例

・例えばk=7,A={1,6}でのW(x)=x^3+x^2-2x-1がpで割り切れる必要十分条件は、
Φ[7](y)がpで割り切れ、u(y)=y+y^6が有理数となる2次無理数yが存在すること。
・前半の条件はKがp^2-1の約数であること。
K≠kのときK=1,p=7が適して、K=kのときpは7N±1型の素数ということになる。
・後半の条件はp≡1(mod K) またはp≡6(mod K) であること。
このように、実はkが素数の時だと後半の条件は無駄である。
・W(x)の約数の集合={7を1つ以下と7N±1型の素数を任意個掛けたもの}となる。
・例えばW(7)=13*29, W(100)=7*181*797 等...(結構大きな素因数になりやすい。)

・k=15,A={1,4}を見てみよう。W(x)=x^4-x^3+2x^2+x+1である。
・前半の条件はKがp^2-1の約数であること。
K≠kのときはK=3,p=5が適してK=5,p=3は不適
K=kのときはp=15N±1または15N±4という条件になる。
・今度は後半の条件はp≡1(mod K)またはp≡4(mod K)であるので、
K=3,p=5は不適となり、K=kのときについてもp=15N+1,15N+4に絞られることになる。
・例えばW(9)=4*19*79, W(10)=61*151...あれ?素因数2があるのはどうして?

実はこれは今までずっと現実逃避してきた問題である...
合同式への読み変えの際は、分母ってやつが例外を引き起こすことがある。
実際、下記証明に出てくるF(x,y)はk=15,A={1,4}について書き下してみると、
F(x,y)=y^2-xy-x^3/2+x^2-x-1/2 という風になる。そういうことのようだ...

#F(x,y)の導出の様子
αは1の原始15乗根。α+α^4=xとするとα^5はxの多項式で表せる。(前節の2-3)
実際α^2+α^8=x2, α^7+α^13=x3, α^11+α^14=x4とおくと
1=x+x2+x3+x4
x=x
x^2=-x2-2x4
x^3=-3x-x2-x3-3x4 という風にx, x2, x3, x4の1次式で表せるので(前節の2-2)
連立方程式を解くようにしてx2,x3,x4がxの多項式で書ける。
α^5=-x2-x4であり、それを計算するとx^3/2-x^2+x+1/2である。

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