主張


クロネッカー・ウェーバーの定理によれば、次の事実がある。
方程式f(x)=0の共役たちが1つの解の多項式で書ける
⇒方程式f(x)=0の解はある1の原始k乗根αの多項式g(α)で表される
(逆も成り立つ。4.2節でみた。)

☆今回の主張☆
n次方程式f(x)=0の解が1の原始k乗根αの多項式g(α)で表される時、
(1) 集合{c∈mod kでの既約剰余類|g(α)=g(α^c)}をAとする。
 Aはm=φ(k)/n個の元からなる部分乗法群となる。
(2) そのAによってβ=u(α)=Σ(α^c) [c∈A] を定義する。
 βの最小多項式W(x)とf(x)の次数は等しい。
(3) f(x)とW(x)の約数集合はほとんど等しい。W(x)の約数集合は前節で見た。

要するに、f(x)が素数pで割り切れ得るためのpについての必要十分条件は、
ある部分群Aによって「あるc∈Aがあってp≡c (mod K)」と書かれる。
付け加えると、k=K ⇔ f(x)はp^q(q≧2)でも割り切れ得る、であった。
(K:kのうちp以外の素因数部分)

(1)は4.2節の補題(2-1)の通りである。
(2)は共役の個数が同じだから、で良いと思う。たぶん。
(3)はa.4節による。前節の例のように分母という例外が出る可能性はある...

a.5節の合同式への読み変えの考えを使うと、次のようにも言える。
ある無理数αの共役がαの多項式で表せる(αが正規である)
⇔ α≡有理数(mod p)とできるpの条件がp≡c(mod K),c∈A の形で書ける。

#2次の無理数はすべて正規である。
 √-1を有理化できる法pの条件はp≡1(mod 4) (とp=2)である。
 √2を有理化できる法pの条件はp≡1,7(mod 8) (とp=2)である。
k≦20のW(x)一覧にあるように、k=8,A={1,7}でのW(x)がx^2-2である。)
#cos(有理数*π)は正規である。
 cos(π/10)はk=20の場合の(α+α^19)/2と表せる。対応するW(x)はx^4-5x^2+5。
 従って有理化できる法pの条件はp≡1,19 (mod 20) (とp=5)である。
 ちなみにcos(π/10)=√(1+2/√5) だそうである。

☆kが奇素数でn=2,m=(k-1)/2でのW(x)の解は√±kで表される。複号はp(mod 4)による。

[略証]
P=Σα^c (c∈原始根の偶数乗の既約剰余類A)
Q=Σα^d (d∈原始根の奇数乗の既約剰余類B)
とおく。cの属する集合AがW(x)に対応する部分群となる。

・共役性より以下のように書ける。
P^2=xP+yQ
PQ=zP+zQ=-z
Q^2=yP+xQ
P+Q=-1に注意するとP^2+PQ=-Pであるからz=-y,x=y-1が分かる。

・-1は原始根の(k-1)/2=m乗である。2乗すると1になるからである。
・mが偶数(k=4N+1)の時、-1∈Aとなる。よって、c∈A ⇔ -c∈A
よってP^2を展開したものΣΣα^(c+c')[c,c'∈A]にはα^kは現れる。
現れる回数は(Aの元の数)=m回であることが分かる。
P^2の項の数はm^2で、uP+vQ+mα^kとなることから、
P,Qの項数がmであることから、u+v=(m^2-m)/m=m-1
mα^k=m=-m(P+Q)によってP^2=xP+yQの形に直すと、x=u-m,y=v-m
u+v=m-1より、x+y=(m-1)-2m=-m-1=-2N-1
ここで先のz=-y,x=y-1よりx=-N-1, y=-N, z=N, PQ=-N と得られる。
従ってP,Qは方程式x^2+x-N=0の解であり、(-1±√p)/2となる。

・mが奇数(k=4N-1)の時、-1∈Aでない。よって、c∈A ⇔ -cはAに属さない
よってP^2を展開したものΣΣα^(c+c')[c,c'∈A]にはα^kは現れない。
P^2の項の数はm^2で、xP+yQとなることから、x+y=m^2/m=m=2N-1
先のz=-y,x=y-1より、x=N-1, y=N, z=-N, PQ=Nが従う。
そうするとP,Qは方程式x^2+x-N=0の解であり、(-1±√-p)/2となる。

#ということは、pとkが互いに素である時、
√±kが(mod p)で有理化できる ⇔ p≡c(mod k),c∈A ⇔ √pが(mod k)で有理化できる
(複号はkが4N+1のとき正、4N-1のとき負)
という事実を得られる。これは平方剰余の相互法則と合う。

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