有限体F_25
係数にF_5の元を使った多項式F_5[x]を考えることができる。
f(x)∈F_5[x]を既約な2次式とする。(*1)
αをf(x)=0を満たすような元であると定義する。
集合 {a+bα|a,b∈F_5}を考える。これがF_25である。
F_25から0を除いた集合を F*_25 と呼んでおく。
このF_25について前節のF_5と同じような性質が成り立つのである:
F_25は体である(*2)
F*_25は位数24の巡回群である(*3)
従って F*_25の元は x^24-1=0 の解集合と一致する。
さらにこのことから、ちょっとした定理がいくつか言える。
・多項式 x^24-1 はx=αを零点に持つから f(x)で割り切れる。
・任意の2次の既約な多項式をf(x)としても同様のことが言えるので
多項式 x^24-1 はすべての2次の既約多項式∈F_5[x]を因数に持つ。
・逆にすべてのF_25の元はx=a+bαの形なので高々2次方程式の解である。
よって x^24-1 のすべての因数は2次以下となる。(*4)
(*1) F_5[x]の多項式としてみたときに既約であることには注意が要る。
例えば x^2+1 = (x+2)(x-2) は既約ではない。
F_5[x]の2次の多項式で既約な多項式は以下の10個である。
(x^2±x+1), (x^2±2), (x^2±2x-1), (x^2±x+2), (x^2±2x+2)
x^2の係数が1でない場合は定数倍で1にできるので考慮しなくて良い。
既約でない2次式は(x-a)(x-b)の形でa,bの重複組み合わせは15通り。
x^2+px+q のp,qの順列は25通りだから既約な2次式は10個で数が合う。
以下では具体的に、f(x)=x^2-2としてαの代わりに√2と書こう。
(実数における√2=1.414....という値とは別物である。
F_5には大小関係を持ちこむことができないので
実数に見られるような収束の概念を持つ込むことはできない)
(*2) 例えば a=1+2√2、b=3+4√2 として四則計算をしてみよう。
a+b=4, a-b=3-√2, ab=3+6√2+4√2+16=4,
a/b=(1+2√2)/(3+4√2)=(1+2√2)(3-4√2)/(9-32)
= (3+6√2-4√2-16)/(-23) = (2+2√2)/2 = 1+√2
(*3) d1.htmlの下のスクリプトでq=2,N=5として、
A,Bを色々試すことで、(A+B√2)^kの挙動の様子を見ることができる。
例えばA=2,B=1とすると(A+B√2)^kが表を埋め尽くすことが分かる。
この存在の証明は、1.1節と同じ方法で示される。
また、この表(A,B,q,N)=(2,1,2,5)を使ってF_25の元の乗除を行える。
1+2√2 のマスはk=23, 3+4√2のマスはk=13 となっているから
それらの積は(A+B√2)^(23+13)=(A+B√2)^36
すなわち k=(36 mod 24)=12のマスを見れば良い。4+0√2 の所である。
割り算では(A+B√2)^(23-13) より k=10 のマスを見れば良い。
1+√2 の所である。これらの結果は(*2)で得たものと一致している。
(*4) 具体的にx^24-1の因数分解と、F_5に特有な追加因数分解を示す。
x^24-1=(x-1)(x+1)(x^2-x+1)(x^2+1)(x^2+x+1)(x^4+1)(x^4-x^2+1)(x^8-x^4+1),
x^2+1=(x+2)(x-2), x^4+1=(x^2+2)(x^2-2), x^4-x^2+1=(x^2+2x-1)(x^2-2x-1),
x^8-x^4+1=(x^2+x+2)(x^2-x+2)(x^2+2x+2)(x^2-2x+2)
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