W(x)以外の多項式への応用


既に見たことによれば、1の原始5乗根αに対して
αの最小多項式(x^4+x^3+x^2+x+1)の素因数は5N+1型に限る
β=α+α^4の最小多項式(x^2+x-1)の素因数は5N±1型に限る
ということが分かった。
それに対して、例えば:
γ=α+α^2 の最小多項式の場合はどうなのか
γ=1+4α+α^3 とかだったらどうなのか、
あるいはγ=3+2β(=3+2α+2α^4) ではどうなるかを考える。

☆主張☆
k,α,A,β,W(x)を前節と同じ設定とする。
γをβの整数係数多項式で表される複素数とする。(*1)
γの最小多項式f(x)について、その次数がW(x)の次数と等しければ (*2)
f(x)の素因数集合の条件について前節のW(x)と同様の主張が成り立つ

改めて明記するなら次の通りである;pは素数とする。
p≡d (mod k) となるk∈Aが存在すればf(x)がpで割り切れる整数xが存在する。
(しかも任意のqに対してf(x)がp^qで割り切れる整数xが存在する。)
逆にある整数xについてf(x)が素数pで割り切れるならば、次のどれかが成り立つ:
・p≡d (mod k) となるk∈Aが存在する
・f(x)の判別式がpの倍数 (*3)
・kがpの倍数

[例(具体的なxの構成を含めて)]
W(x)=x^4+x^3+x^2+x+1 (k=5,A={1})に対して
γ=g(α)=α+α^2 の最小多項式 f(x)を求めると(終結式を使った)
f(x)=x^4+2x^3+4x^2+3x+1 である。判別式はW(x)と等しく125である。

例えば5N+1型素数p=31に対して、W(x)がpで割り切れるxが存在するのは既知である。
そのxに対して、y=g(x)=x+x^2 とすれば f(y)がpで割り切れる。
(なぜなら、f(g(α))=0 であるから因数定理により
f(g(x))は多項式としてW(x)を因数に持つからである。)
実際 x=2, f(x)=31 に対して y=6, g(y)=1891=31*61

逆について;まずγのべき乗をαの3次以下の多項式で表現する。
(αの最小多項式は4次式だから3次以下にできる)
[1,α,α^2,α^3]の連立方程式を解く要領でαをγの多項式h(γ)で表せる。
(f(x)とW(x)の最小多項式の次数が等しいことから線形独立性が保障される)
f(x)がpで割り切れるならば W(h(x))もpで割り切れる、を得る。(*4)

今回のγについて具体的に計算を試みる。
1 = 1
γ = α+α^2
γ^2 = (α+α^2)^2 = α^2+2α^3+α^4 = -1-α+α^3
γ^3 = (α+α^2)^3 = ... = -2α-3α^2-2α^3

係数行列は [1,0,0,0],[0,1,1,0],[-1,-1,0,1],[0,-2,-3,-2]
逆行列を求めると [1,0,0,0],[-2,-3,-2,-1],[2,4,2,1],[-1,-3,-1,-1]
従って、α=h(γ)=-2-3γ-2γ^2-γ^3を得た。
実際 g(3)=181 に対してf(h(3))=f(-56)=9661961=181*53381

(*1) A={1}とすれば、β=αの場合になる。
(*2) 実は任意のg(x)に対してこの条件を満たすようにA,β,W(x)を設定できる
 βはαの多項式であるから、γ=g(α) とおくことができる。
 kを法とする既約剰余類の集合をSとすると
 αの共役は、α^d [d∈S] と表される。
 g(α)=g(α^d) [d∈S] を満たすような dの集合をAとすれば良い。
[例]
 本文の例に出てきた γ=g(α)=3+2α+2α^4 では
 g(α^4)=3+2α^4+2α^16 が g(α)に等しい。
(αは1の原始5乗根という設定であったからα^16=α)
 そこで A={1,4} とするとβ=α+α^4 が登場する。
(*3) f(x)の判別式はW(x)の判別式の倍数になるらしい。
 乗数はh(γ)を求める際の係数行列の行列式の2乗のようである(たぶん)
(*4) 問題は、実はh(x)が整数係数の多項式とは限らないことである。
 最初の方で2番目の例に挙げたγ=1+4α+α^3がその例となる。
γの最小多項式は f(x)=x^4+x^3+16x^2+6x+181 で判別式は5^3*11^4*19^2 となる。
 γ=α+α^2 の時と同様にしてγのべき乗をαの多項式で表すと
 その係数行列は [1,0,0,0],[1,4,0,1],[-7,1,8,-6],[24,-10,35,42]
 逆行列は (1/2299)*([2299,0,0,0],[-109,546,35,-8],[628,18,178,25],[-1863,115,-140,32])
 従って α=h(γ)=(-109+546*γ+85*γ^2-8γ^3)/2299
2299と互いに素な素数に対しては、(*4)の適用は修正可能である。
 例えばf(0)=181に対してW(h(0))=W(-109/2299)の分子は確かに181で割り切れるが
 -109≡2299x (mod 181) となるxとして例えばx=135を得てf(135)が181で割り切れる。
 (このような合同方程式を解くスクリプト:bunren.html
2299と互いに素でない素数では、(*4)は実際に修正できないことがある。
 f(-3)は19で割り切れるが、W(x)が19で割り切れる整数xは存在しない。
 そういうわけで、f(x)とW(x)の素因数は微妙に違う場合がある。
 その違いは、「・f(x)の判別式がpの倍数 (*3)」という所で反映されている。
h(γ)の分母=係数行列の行列式={f(x)の判別式/W(x)の判別式}の平方根の関係(と思う)

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