a.3 最小多項式、共役


・代数的な数:
 ある(Q係数)多項式A(x)があってA(α)=0となるとき
 αは(Q上の)「代数的な数」であるという。
・このようなA(x)のうち次数が最小で最高次が1のものを、
 (Q上での)αの「最小多項式」と呼ぶ。

#√2,√(3+√2)など、べき根で表される数は代数的な数である。
 これらの最小多項式はそれぞれx^2-2, x^4-6x^2+7である。
#代数的な数同士の和差積商、多項式は代数的な数となる。
#√2+√3の最小多項式は√2,√3の最小多項式と終結式を利用して
 終結式:resultant(y^2-2, (x-y)^2-3, y); で求められる。
> x^4-10x^2+1
#5*3^(2/3)+2*3^(1/3)+1の最小多項式は3^(1/3)の最小多項式を利用して
 終結式:resultant(y^3-3,x-(5*y^2+2*y+1),y); で求められる。
> x^3-3x^2-87x-1060

・αが代数的な数である時、Q(α)はQ[x]/A(x)に同型 (ちょっと重要)
 Q[x]/A(x)というのは、xの多項式Q[x]をA(x)で割った剰余の集合を表す記号。
 言いかえればαの有理式はαのn-1次以下の多項式で一意に表される。
#一意でないとするとn-1次以下の最小多項式が存在することになり矛盾。

#√2の有理式は √2の1次式で一意に表すことができる。
#既約な方程式B(x)=x^3+x+1=0の解をαとする。
 αの有理式はαの2次式で一意に表すことができる。
#(αの2次式) / (αの2次式) で表せる所までは良いだろう。
 分子をC(α),分母をA(α)とすればA(x),B(x)は共通因数を持たないから
 A(x)*P(x)+B(x)*Q(x)=C(x) となる多項式P(x),Q(x)を構成できる。(前節)
 B(α)=0 より C(α)/A(α)=P(α) と分母を有理化できる。
 この議論は一般の代数的な数でも同様にすることができる。

☆実際に有理化するときは、次のような方法を使うこともできる。
 αはある3次方程式の解であるとする。
 (αの2次式) / (αの2次式)=aα^2+bα+c とおく。
 分母を払って、αの条件から右辺の次数を2次に下げる。
 係数はa,b,cの1次式になるから係数比較した連立方程式でa,b,cを得る。

・共役
 αの最小多項式のα以外の解を、αに対する「共役」と呼ぶ。
 共役は(最小多項式の次数-1)個存在することになる。
#最小多項式が重解を持たないことを前提としている。
(ここではf(x)とf'(x)が素になるからそう考えて良い。)

 α{0}を自身として、α{1},α{2},...α{n-1}という記号で共役を表すことにする。

#√2の共役は-√2
#α=3^(1/3)の共役はα*(-1/2±√-3/2)
#√2+√3の共役は√2-√3, -√2+√3, -√2-√3
#(αの多項式)の共役=(αの共役)の多項式
#共役たちの和や積といった対称式は有理数である。
 なぜならそれらは最小多項式の係数で表されるからである。
#従って、分母の有理化では共役たちを分母分子に掛ける方法がある。

#1/(√2+√3+√5)の分母の有理化の場合
 分母分子に7個の(±√2±√3±√5)を掛ける方法がある。実行は大変だが。

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