用語


親しみのない場合のために。

・合同式、法
kを整数とする。
整数xをkで割った余りは0からp-1までのk種類の整数のどれかに一致する。
2つの整数x,yをkで割った余りが等しい時、x≡y (mod k)と書く。
この時、kを「法」としてxとyは合同であるとか等しいとか言う。
またこのような式を「合同式」という。
x≡yでない時、記号変換の都合上、x≠yという表記をする。

☆合同式では移項等ができる。従ってx≡y (mod k) ⇔ x-yがkの倍数

・剰余類
例えば7を法とすることを考える。(「(mod 7)において」とも表現する。)
整数3によって、整数の集合{x|x≡3(mod 7)}を代表することができる。
このような集合を(法7に対する)「剰余類」と呼ぶ。
(mod p)において剰余類はp個ある。
(mod 7)での剰余類は0,1,2,3,4,5,6の7種類と言っても良いし、
 また例えば0,±1,±2,±3の7種類と言っても良い。

加法3+2≡5(mod 7)は整数の合同式として成り立つが、
現れる数字3,2,5を剰余類とみても成り立つ。
すなわちx≡3,y≡2,z≡5(mod 7)に対してx+y≡z(mod 7)が成り立つ。

このように、数と剰余類の区別は時に曖昧であるように思う。

・既約剰余類
剰余類のうち法と既約であるものを「既約剰余類」と呼ぶ。
(mod 7)における剰余類は0,1,2,3,4,5,6の7個あるが、0以外が既約剰余類である。
(mod 15)における既約剰余類は±1,2,4,7 の8個である。

・オイラーのφ関数(トーシェント関数)
(mod k)における既約剰余類の個数をφ(k)と書く。ただしφ(1)=1とする。
☆pが素数の時φ(p)=p-1, φ(p^q)=(p-1)*p^(q-1) [ただしq≧1]
☆p,qが互いに素である時φ(pq)=φ(p)φ(q)
☆x=Σφ(d) [d:xの約数] 例えば6=φ(1)+φ(2)+φ(3)+φ(6)=1+1+2+2

・群
集合があって、その元について2項演算(a,b)が定義されていて、次が成り立つ時、群と呼ぶ。
1) 元a,bを演算した結果(a,b)も集合の元である。
2) 任意の元aに対して(e,a)=(a,e)=aを満たすaによらない単位元eが存在する。
3) 任意の元aに対して(a,b)=eを満たす逆元bが存在する。

☆剰余類は加法という演算によって群をなす。単位元は0で、aの逆元は-aである。

・既約剰余類の乗法群
既約でない剰余類には逆元が存在しないが、
既約剰余類ではすべての剰余類に逆元が存在する。
[証明]
a,b,cを既約剰余類とする。考察によって次のように確認できる。
(1) dを剰余類とする。ad≡0 ⇔ d≡0 が成り立つ。
(2) b≠cならばab≠ac が成り立つ。(b-c)a≠0 だからである。
(3) よって集合{y|y=ax,xは既約剰余類} は元同士の重複がない。
 元の個数を考慮することで、集合{x|xは既約剰余類}に一致すると分かる。
 したがってy≡1となる既約剰余類xが存在して、しかもただ1つであると分かる。

☆よって既約剰余類は乗法に関して群をなすことが確認できる。
この既約剰余類がつくる乗法群について様子を見ていくわけである。

(追加;新しい3章以降で出てくる用語)
・部分群
群Sの部分集合Aが群の条件を満たしている時、AはSは部分群であると呼ぶ。

・有理数係数最小多項式(本文ではしばしば単に「最小多項式」)
f(α)=0 を満たす有理数係数の多項式で、次数が最小のもの。

・体
加法と乗法の2種類の二項演算が定義されている集合で、
すべての元が加法に関して群をなしていて
0以外のすべての元が乗法に関して群をなすような集合のこと。

☆素数による剰余類は体をなす。
 0以外の元が既約剰余類になるからである。(上述と合わせる)

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