有限体上のグラスマン多様体の点の個数
しばらく前の鍵アカウントの投稿
$0≦a_1≦a_2≦…≦a_{2023}≦2023$
を満たす整数列$\{a_i\}$に対して、そのスコアを$7^{a_1+…+a_{2023}}$で定める。
このような整数列全体にわたるスコアの総和を$S$とする時、$S$は3で何回割り切れるか?
本人によるネタばらし
有限体上のグラスマン多様体の点の個数を2通りで数えると、ちょうどこの式が出てきます。
(1つめはシューベルトセル、つまり行列で書いて階段標準形ごとに数える方法で、
 2つめは$GL_n$の商多様体とみなして数える方法)

すぐには分からなかったので、$G(3,7)$あるいは$\mathbb{G}(2,6)$で具体例で描写してみた。
定義は、7次元ベクトル空間内の3次元部分空間の集合、あるいは、6次元射影空間内の2次元部分空間(=平面)である。
以前のノートを復習しながら・・

[A] 射影空間の言葉で、すなわち、$\mathbb{G}(2,6)$と解釈して、
$H_0 ; [1:0:0:0:0:0:0]$
$H_1 ; [*:*:0:0:0:0:0]$
$H_2 ; [*:*:*:0:0:0:0]$
$H_3 ; [*:*:*:*:0:0:0]$
$H_4 ; [*:*:*:*:*:0:0]$
$H_5 ; [*:*:*:*:*:*:0]$
の形をした点からなる部分空間の列を考える。

$S[a,b,c] :=$
 $H_{4-a}$と点を共有し
 $H_{5-b}$と直線を共有し
 $H_{6-c}$と平面を共有するような平面の集合($4≧a≧b≧c≧0$),
$S'[a,b,c] := S[a,b,c]$から$S[a+1,b,c]∪S[a,b+1,c]∪S[a,b,c+1]$を除いたもの
を考える

$S'[0,0,0]$ は $H_3$と交わらない平面の集合で
 $x=[x1:x2:x3:x4:1:0:0]$
 $y=[y1:y2:y3:y4:0:1:0]$
 $z=[z1:z2:z3:z4:0:0:1]$
 の3点を通る平面として一意的に描写できて、$q^12$個ある。

$S'[1,0,0]$ は $H_3$と交わるが、$H_2$と交わらないかつ$H_4$と直線を共有しない平面の集合で
 $x=[x1:x2:z3:1:0:0:0]$
 $y=[y1:y2:y3:0:y4:1:0]$
 $z=[z1:z2:z3:0:z4:0:1]$
 の3点を通る平面として一意的に描写できて、$q^11$個ある。

という具合に、$S'[a,b,c]$の元は、
 $x$の$(5-a)$番目が$1$,$y$の$(6-b)$番目が$1$,$z$の$(7-c)$番目が$1$, $1$の右と下が$0$
 であるような3点$x,y,z$を通る平面として一意的に描写できて、$q^{12-a-b-c}$個ある。

構成により$S'[a,b,c]$は互いに交わらず、合併すると$\mathbb{G}(2,6)$となるので、
$\mathbb{G}(2,6)$は、$4≧a≧b≧c≧0$を満たす$(a,b,c)$による$q^{12-a-b-c}$個の点の合併と書ける。
$(A,B,C)=(4-a,4-b,4-c)$ と改めれば、最終的に、
$\mathbb{G}(2,6)$の元の個数は$0≦A≦B≦C≦4$を満たす$(A,B,C)$による$q^{A+B+C}$の和と書ける。


[2] ベクトル空間の言葉で、すなわち、$G(3,7)$と解釈して、

$X=(x1:x2:x3:x4:x5:x6:x7)$
$Y=(y1:y2:y3:y4:y5:y6:y7)$
$Z=(z1:z2:z3:z4:z5:z6:z7)$
の3ベクトルで貼られる部分空間として数えることを考える。

$X,Y,Z$が線形独立になるような選び方は、
$X$が$q^7-1$ (原点を除く)
$Y$が$q^7-q$ ($X$の定数倍を除く)
$Z$が$q^7-q^2$ ($XY$平面を除く)
合わせて$(q^7-1)(q^7-q)(q^7-q^2)$通りある

異なる$X,Y,Z$が同じ部分空間を貼る効果を補正することを考える。
3次元正則行列の個数分、同じ部分空間が重複して数えられる。
同じ考え方で、3次元正則行列の個数は$(q^3-1)(q^3-q)(q^3-q^2)$個と数えられる。
従って$G(3,7)$の元の個数は$(q^7-1)(q^7-q)(q^7-q^2) / (q^3-1)(q^3-q)(q^3-q^2)$と書ける。

*q二項係数と呼ばれている。
2022/9/10 書いた
2022/10/14 形を整えて公開

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