類体論と双対;関連概念の復習メモ

(いつか余裕があればもう少し整えたい)

・雑談

https://twitter.com/yamyam_topo/status/1715306435008180386
> 証明ができたことだけは理解できるけれど、どういう仕組みで定理が成り立つと言えたのか少しも分からない、という事態、みなさんも直面したことがあると思いますが、どうしたらいいのでしょうね。

思い出した話題1

https://twitter.com/END_OF_PAIOTU/status/1417843503585923085
> 素数が無数に存在することの証明で、Z にある位相を入れる証明 (Fürstenberg) があるけど、あの位相は p 進たちの積 Π Z_p に対角線集合で Z を埋め込んだときの位相らしい。
あの意味不明な位相どこから湧いてきたんや?って思ってたのがスッキリした!

こうやって発信してくれると有難い

思い出した話題2

類体論を理解するのが私の数学の勉強の中心にあると言っても過言ではないのだけど、
類体論が成り立つ「仕組み」は、未だによく分かっていない

特にSpecQでエタールコホモロジーをとってるのがよく分からなくて、
SpecZで考えないと局所の情報が自然に結びつかないんじゃないかとずっと不思議に思っている
(Artin–Verdier双対では整数環のほうを扱うらしい)


・類体論の解釈 類構造class formationと呼ばれる概念(この後記述する)に合致する条件を満たすG=Gal(K/k)加群Aがあるとき、 アルティン写像 A^G→G^{ab} があって、 像は稠密で、核はGの開正規部分群Uに対するA^Uのノルム像の共通部分である。 (K/kが有限次なら核はAのノルム像、Kがkの分離閉包\bar{k}なら核は単位元のみ、だと思う。) kが局所体のときはAとしてK*、kが大域体のときはAとしてイデール類群を考えると条件を満たす。 (特に大域体のときに、この条件を満たすことを証明するのが類体論の証明で一番大変そうである。) ここで、Gal(\bar{k}/k)加群Aは、Speck上のエタール層Fとして解釈ができる。 (「SpecK上のエタール層は、茎で決まる」) 以下、群コホモロジー H^i(Gal(L/K),F(K))を H^i(L/K, F)と略記する (これはエタール層の視点では、SpecL→SpecKに関する高次順像の導来関手的なものだと思う。) また、群コホモロジー H^i(Gal(\bar{k}/K),F(\bar{k}))を H^i(K,F)と略記する (これはSpecKに制限した層のエタールコホモロジー H^i(SpecK,F|SpecK)に相当する。) アルティン写像の両辺は、H^0(k,F)→H^2(k,Z)^*と描写できる。 ・右辺の双対記号はポントリャーギン双対で、 ・完全列0→Z→Q→Q/Z→0を使った「次元シフト」によりH^2(k,Z)=H^1(k,Q/Z)=Hom_G(Z[G],Q/Z)=(G^{ab})^* ・こうして右辺は(G^{ab})^{**}となりポントリャーギン双対の性質によりG^{ab}と一致 こうして、類体論の主張がエタール層のコホモロジーの言葉に持ち込まれる; H^0(k,F)→H^2(k,Z)^*の形の視点を踏み込むとTateの双対、Artin–Verdier双対のようなものに至り、 セール双対、ポアンカレ双対のような幾何的な双対と結びつけられるように感じ、実際関係ありそうらしい。 例えばアーベルヤコビの定理もその一部と位置付けられる。(と思っているがまだそんなによく理解していない) 類体論とアーベルヤコビの定理、どちらも奥には共通の原理のようなものがあるということかもしれない! J.Milne, Arithmetic Duality Theorems とか Abelian Varieties とか Alberto Merici, "Dualities in étale cohomology" https://www.math.u-bordeaux.fr/~ybilu/algant/documents/theses/Merici.pdf また余裕があるときにこのあたりを読めたら・・
類構造の条件;https://en.wikipedia.org/wiki/Class_formation ・Fが特定の条件;\bar{k}/kの任意の中間の任意の正規拡大L/Kに対して、 [c1] H^1(L/K,F)が自明 [c2] H^2(L/K,F)が位数[L:K]の巡回群 [c3] restrictionと整合的なH^2(L/K,F)の生成元の集まりが存在すること ・別の資料では、任意の正規拡大L/Kに関する条件の代わりに、任意の正規拡大K/kに対して、 [c1'] H^1(K,F)が自明 [c2'] 同型H^2(K,F)→Q/Zの集まりがあって、[L:K]=nのとき、以下が可換 H^2(K,F)→Q/Z ↓    ↓×n H^2(L,F)→Q/Z を要請していた(J.MilneのADT)。こちらのほうが少し強いらしい。 下から上を示す説明: 完全列0→H^2(U/V,F(V))→H^2(U,F)→H^2(V,F)→0がある。 (inflation-restriction完全列、あるいは、 HSSSスペクトル系列でいう所の E_2[0,1]→E_2[2,0]→E_∞[2]→E_2[0,2]→E_2[2,1]で、 H^1が自明であることにより両端が0となっている。) 従って、H^2(U/V,F(V))はker[H^2(U,F)→H^2(V,F)]であり、[c2']よりこれはn次の巡回群である。
・類構造の条件を満たせば類体論の主な主張が従うこと ここではc1,c2,c3の言葉、有限群のTateコホモロジーの言葉での説明をいくつか見た。 本質的な所は、Tate-Nakayamaの定理による; Tate-Nakayamaの定理:有限群GとG加群Aについて、任意の部分群Hに対して H^1(H,A)が自明 H^2(H,A)が位数|H|の巡回群 を満たすなら、同型\hat{H}^r(G,Z)→\hat{H}^{r+2}(G,A)がある Aが類構造の条件を満たすなら、 任意の中間の任意の正規拡大L/Kに対してG=Gal(L/K)として定理が適用できる。 G=Gal(\bar{k}/k)と記号を戻して、各開正規部分群Uに対してr=-2で適用すれば、 (-2次のTateコホモロジーとは1次のホモロジー群でありすなわちアーベル化である。) 同型 (G/U)^{ab} \cong A^G/N_{G/H} A^U を得るので、射影極限をとると、冒頭の主張を得る。
関連して、etale_HSSS.html の最後に載せたリンクの内容の概要を追って追記した。
・Tate-Nakayamaの定理の証明を追った ・河田の代数的整数論に書いてあった証明方針: コホモロジーが自明なG加群P,Qがあって、 完全列 0→A→P→A'→0, 0→A'→Q→A"→0 があるとする。 次元シフトにより、\hat{H}^-1(H,A")が自明、\hat{H}^0(H,A")が位数|H|の巡回群という条件になる。 \hat{H}^0(G,A")の生成元aをとる。aはA^Gの元と解釈できる。 f:Z→A"を1をaに送る写像として定義する。 *Z→A"があるとき、長完全列 ..→\hat{H}^-1(H,Z)→\hat{H}^-1(H,A")→\hat{H}^-1(H,B)→\hat{H}^0(H,Z)→\hat{H}^0(H,A")→\hat{H}^0(H,B)→ を与えるBが存在するという補題を別途示して、(三角圏的な内容?) ・\hat{H}^0(H,A")が位数|G|の巡回群であることから、\hat{H}^0(Z)→\hat{H}^0(A")は同型 ・仮定より\hat{H}^-1(H,A")=0, 有限群の一般論で\hat{H}^1(H,Z)=0 ・従って、\hat{H}^-1(H,B) = \hat{H}^0(H,B) = 0 *「任意の部分群に対して連続するコホモロジーが消えるならコホモロジーはすべて消える」という補題を別途示してBに適用し、 長完全列から\hat{H}^r(H,Z)→\hat{H}^r(H,A")はすべて同型で、最初の次元シフトにより目的を達成する。 ・J.MilneのCFTに書いてあった証明方針: H^2(H,A)の生成元wをとる。 wはHom(Z[G^3],A)の元で代表され、斉次形で(1:g:gh)の行先がw(1:g:gh)∈Aと指定されているとおく。(斉次形についてはこのあと記述) G加群A[w]を、加群としては直積(A×Z[G])を((w(1:1:1),0)-(0,1))で割ったようなものとして、 Gの作用を、g((a,x)) = (g(a)+w(1:g:gx), gx-g) と定める。 (確認:((w(1:1:1),0)-(0,1))で割ることで、単位元の作用が自明になっている。) (確認:積の作用が作用の積の合成に一致することの確認は別途しておいて) この少し不思議な作用は以下の仕組みで定められている。 この仕組みにより H^2(G,A)→H^2(G,P) によるwの行先は0であり、wは生成元なのでこれは零写像となる。 仕組み:P係数1コチェイン、すなわちHom(Z[G^2],P)の元f_1として、斉次形(1:g)を(0,g)∈A×Z[G]に送るものを考える。  これとZ[G^3]→Z[G^2]との合成f_2が、wを代表するHom(Z[G^3],A)とA→A[w]の合成に一致するように調整している。  具体的には、(w(1:g:gx),0) = f2(1:g:gx) = f1(g:gx) - f1(1:gx) + f1(1:g) = g((0,x)) - (0,gx) + (0,g)  と要求されるので、g((0,x)) = (0,gx)-(0,g)+(w(1:g:gx),0) と調整することになる。 完全列0→A→A[w]→Z[G]→Z→0がある。  A[w]→Z[G]は、(a,0)を0に、(a,g)をg-1に送る。  Z[G]→Zは、gを1に送る。 Coker(A→A[w])=Ker(Z[G]→Z)=I_Gとおくと、0→A→A[w]→I_G→0,0→I_G→Z[G]→Z→0と書けて、 長完全列 →H^1(H,A)→H^1(H,A[w])→H^1(H,I_G)→H^2(H,A)→H^2(H,A[w])→ があって 条件と上記の生成元が0に行く指摘より、0→H^1(H,A[w])→H^1(H,I_G)→H^2(H,A)→0となる。 Z[G]のコホモロジーは自明なのでH^1(H,I_G)=\hat{H}^0(H,Z)、これは位数|H|で、 従ってH^1(H,I_G)→H^2(H,A)は同型、従ってH^1(H,A[w])=0 一方、有限群の一般論で\hat{H}^1(H,Z)=0、H^2(H,I_G)=0, 従ってH^2(H,A[w])=0、 「任意の部分群に対して連続するコホモロジーが消えるならコホモロジーはすべて消える」をA[w]に適用すると目的を達成する。
・群のコホモロジーの復習 https://www-users.cse.umn.edu/~webb/oldteaching/Year2010-11/8246CohomologyNotes.pdf Peter J. Webb, An Introduction to the Cohomology of Groups Z[G]加群Mの射影分解 ..→P1→P0→M→0 をとる。 別のZ[G]加群Nに対して、複体 0→Hom(P0,N)→Hom(P1,N)→... が作れる [HomはZ[G]加群としてのHom] このホモロジー群がExt^i(M,N)であり、特にM=Zのとき、H^i(G,N)と書く 巡回群のTateコホモロジーは周期2で繰り返す \hat{H}^0(G,M) = Coker(Nm_G) \hat{H}^-1(G,M) = Ker(Nm_G) Nmは、M→M^G, m→Σgm で定義される。 #具体例;Gが生成元gを持つn次巡回群M=Z(gの作用は自明)の場合、単純な射影分解(より強く自由分解)がある。 ..→Z[G]→Z[G]→Z[G]→Z→0,  Z[G]→Zは1,gを1に送る、すなわち(g-1)で割る。  その前のZ[G]→Z[G]は1を(g-1)に送る  その前のZ[G]→Z[G]は1を(1+g+..+g^{n-1})に送る  繰り返す N=Zの場合、複体 0→Hom(P0,N)→Hom(P1,N)→... は 0→Hom(Z[G],Z)→Hom(Z[G],Z)→Hom(Z[G],Z)→..で、矢印は  [f] を [h(x)=f((g-1)x)で定まるh] に送る  [f] を [h(x)=f((1+g+..+g^{n-1})x)で定まるh] に送る  の繰り返し ここでgの作用は自明なのでf(g)=f(1)などが成り立ち、fはf(1)で決定されるし、hは次のようになる。  [f] を [h(x)=0なh] に送る;0倍  [f] を [h(x)=nf(x)なh] に送る;n倍 H^0(G,Z) = ker ([f(1)=aなf] → [h(x)=0なh]) = [任意のf] \cong Z H^1(G,Z) = ker(n倍) / im (0倍) = {0} H^2(G,Z) = ker(0倍) / im (n倍) \cong Z/nZ #Gが巡回群でない場合も、単体的方法を背景とした、標準的な射影分解(より強く自由分解)がある; ..→Z[G^3]→Z[G^2]→Z[G]→Z→0,  Z[G]→Zは、(g0)を1に送る  Z[G^2]→Z[G]は、(g0:g1)を(g1)-(g0)に送る  Z[G^3]→Z[G^2]は、(g0:g1:g2)を(g1:g2)-(g0:g2)+(g0:g1) に送る(これをさっき使った)  Z[G^4]→Z[G^3]は、(g0:g1:g2:g3)を(g2:g3:g4)-(g1:g3:g4)+(g1:g2:g4)-(g2:g3:g4) に送る *斉次形を強調するためにコロンを非標準的に使っただけで、(a:b)=(ga:gb)とは限らない。  しかし行先Nに対するGの作用が自明なら、(a:b)と(ga:gb)の行先は同じになる。 *[g1] = (1:g1), [g1,g2] = (1:g1:g1g2) のように非斉次形で考えると、よく見かける別の形式になる。
・Z[G]加群M,N,Kに対して、米田ペアリング Ext^i(M,N)×Ext^j(N,K) → Ext^{i+j}(M,K)が定義されることを確認した: Mの射影分解を..→M1→M0→M→0などと略記する。 Ext^i(M,N)の元は、M_{i+1}→M_iと合成すると零になるようなHom(M_i,N)の元で代表される。 Hom(M_i,N)から、Hom(M_{i+j},N_j)を誘導できる; Ext^j(N,K)の元は、N_{j+1}→N_jと合成すると零になるようなHom(N_j,K)の元で代表される。 合成してHom(M_i,K)の元を得る。 ・M_{i+1}→M_iと合成すると零になること、 ・Hom(N_{j-1},K)由来のHom(N_j,K)を使った場合はHom(M_{i-1},K)由来のHom(M_i,K)の元となること を確認すれば良い
・セール双対の復習;https://math.uchicago.edu/~may/REU2013/REUPapers/Fung.pdf JUN HOU FUNG, SERRE DUALITY AND APPLICATIONS *例:X=P^nについて、双対化層=標準束=余接束の行列式はO(-1-n)であり、 H^0(P^n,O(m))はn変数m次の斉次多項式と同一視できて、 H^n(P^n,O(m))はn変数m次の斉次有理式で、すべての変数が-1次以下なものと同一視できる。 こうして、H^0(P^n,O(m)) \cong H^n(P^n,O(-1-n-m))が成り立っている。 一般的な形:k上の性質の良いスキームX上の階数有限で局所自由な層Fに対して同型 H^i(X,F) \cong H^{n-i}(X,F^ \otimes ω)^ がある すなわち完全ペアリング H^i(X,F) × H^{n-i}(X,F^ \otimes ω) \rightarrow k がある (Vakil,18.5.1) 「スペクトル系列は微分における連鎖律のようなものだ」という言葉を知った
・セール双対の背景;コホモロジー関手を表現する対象という視点 Xをk上r次元固有スキームとする 双対化層wとは、トレース写像 H^r(X,w)→kを伴い、任意の連接層Fに対して、 同型 Hom(F,w)×H^r(X,F)→H^r(X,w)→k を与えるもの より抽象的には、圏の反変関手F:C→D,Dは具体圏があるときに、 w∈Ob(C)とt∈FwがFを表現するとは、 自然同型 Hom_C(-,w) \cong F(-) がある状況で、Hom_C(A,w) → Hom_D(Fw,FA) → FA が従う。 (右の矢印はtの行先を取るevaluation map) 今回は H^r(X,-)*; Coh(X) -> Vect_k で適用される Xを射影的と限定して、埋め込みX→P^nを想定したときの双対化層: w = Ext_P^{n-r}(O_X,ω_P)が条件を満たす この設定で、s≦rに対して、以下は同値: (1) r-s≦i≦rで、Ext_X^{r-i}(F,w)×H^r(X,F)→k が完全 (2) r-s≦i≦rで、十分大きいmで H^i(X,O_X(-m)) = 0 (3) r-s≦i≦rで、Ext_P^{n-i}(O_X,ω_P) = 0 特にXがCohen-Macaulayならすべて成り立つということらしい もしかしたら「双対」というより「コホモロジーが表現可能」というほうが本質?
・ポアンカレ双対とセール双対の関係 https://math.stackexchange.com/questions/2403/precise-connection-between-poincare-duality-and-serre-duality ・複素代数幾何学の復習をちょっとしたが、ここにまとめられるほど理解がまとまっていない
2023/10/29

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