そろそろ主張へ


ここに来て有限体を使って通常の体に結果を生み出す話が登場する。
αを1の原始k乗根、Aをkの既約剰余類の部分群とする。
β=Σα^d [d∈A] の最小多項式をW(x)とする。 (具体的にはd2.htmlの表)

☆主張☆ ;pは素数とする。
p≡d (mod k) となるd∈Aが存在すればW(x)がpで割り切れる整数xが存在する。(*4)
逆にある整数xについてW(x)が素数pで割り切れるならば、次のどれかが成り立つ:
・p≡d (mod k) となるd∈Aが存在する
・W(x)の判別式がpの倍数
・kがpの倍数 (*5)

一般の場合の証明は、新・追記に書かれている。
ここではその証明に具体例を代入したような形で提示してみようと思う。

前半の例として p=5, k=12, A={1,5}を取り上げる。W(x)=x^2+1は知らないふりをする。
(ここから有限体での考察)
F_25における「1の原始12乗根」(の1つ)をαとする。 (*1)
β=Σα^d [d∈A] とする。すなわちβ=α+α^5
このβはαをα^d [d∈A]に置きかえる写像に対して不変である。
有限体で共役を与える写像σ(x)=x^pをβに作用させる計算は、
αをα^pに置きかえる写像を意味することに注意する。
p≡d (mod k) となるk∈A が存在するということはσ(β)=βを意味する。
これは前節で見た通り、β^p=β すなわち β∈F_pを意味する。(今p=5)
W(β)=0 となるβ∈F_5が存在するということは、
(ここまで有限体での考察)
W(x)が5で割り切れる整数xが存在することを意味する。(*2)

後半の対偶の例として、p=5,k=12,A={1,11}を取り上げる。W(x)=x^2-3は知らない。
β=α+α^11とする。今度はσ(β)=(α+α^11)^5=α^5+α^7 がβと一致しない。
よって、それでβがF_pの元でないことが分かる。
・・・と言いたい所だが本当に一致しないかは自明ではない。 (*3)
もし一致していたとすると(x-β)(x-σ(β))が重根を持つことになる。
よってその場合は、「W(x)の判別式がpの倍数」という条件に投げ込んでいるわけである。

(*1) αがF_25で取れることについては4.3節の注釈にも書いた。
 一般にはkがp^q-1の約数であるようなqをとって、F_(p^q)を使う。
(*2) 実際にそのxを求めることができる。
 前節で1の原始12乗根の具体的な表示としてα=1+2√3を既に紹介した。
 α^5=1-2√3 となる。よってβ=α+α^5=2。
 これがW(x)が5で割り切れる整数xでもある。
(*3) 具体例ではα=1+2√3 を代入して確認することができる。
 βとσ(β)が実は一致するケースとしてp=2,k=15,A={1,4}を紹介しよう。
 β=α+α^4, σ(β)=α^2+α^8 は一見違うは実は等しい。
 F_16の構造を念入りに書きだせば、直接確かめることができるだろう。
 そして、d2.htmlのk=15,A={1,4}の判別式は確かに2の倍数である。

(*4) 実はこの場合(p≡d (mod k) となるk∈Aが存在する)さらに強く、
 任意の自然数qに対してW(x)がp^qで割り切れる整数xが存在すると言える。
[構成の仕方(証明にはなってない)]
 有限体のほうで1の原始k乗根αを根に持つk次の既約多項式f(x)∈F_p[x] をとる。
 α^k をf(α)で割ることで次数を下げると余りは1になる。
 f(x)を通常の有理数体における多項式と同一視したものをF(x)と区別して書こう。
 x^k を F(x) で割った余りは、pA(x)+1 の形(A(x)∈Z[x])ということになる。
1.2節の結果を応用すると
 x^(pk) を F(x) で割った余りは、(p^2)*A2(x)+1 (A2(x)∈Z[x])
 x^((p^(q-1))k) を F(x) で割った余りは、(p^q)*Aq(x)+1 (Aq(x)∈Z[x])
 などが成り立つことが言える。
形式的に、x^(p^(q-1))がp^qを法としたときのαの役割を果たしている。
 Σ{x^(p^(q-1))}^d (d∈A) を F(x)で割った余りが p^q*Q(x)+r の形をしていて、
 この整数rが求めるもの、すなわちW(r)がp^q で割り切れるはずである。
[例]
 k=13, A=[1,3,9], p=29 を例にする。f(x)としてx^3-5x^2+14x-1を既に得たとする。
 W(x)=x^4+x^3+2x^2-4x+3 が 29^5 で割り切れるようなxを構成してみよう。
 x^29をf(x)で割った余りをとる。(もちろんコンピュータ補助下)
 それを29乗してf(x)で割った余りをとることを後3回(計4回)行う。
 その結果、係数は膨大になるので29^5で割った余りに置きかえると
 y={x^(29^4)}≡15239795*x^2+18653714*x+10402243 を得る。
 最後に y+y^3+y^9 をf(x)で割った余りをとると、
 2次の係数,1次の係数は29^5の倍数となり、定数項r≡17222467により。
 f(x)が29^5 で割り切れる整数x=17222467を手に入れることができた。

 目次 inserted by FC2 system