13章メモ 高い次元で交叉する場合の公式
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*以下、交点の数などの表現をするときには常に重複度を込めて数えるものとする。

今までの交点理論は、横断的に交わる場合にしか使えなかった。
ところが、実はもっと一般的な場合に使えるようにできる「余計を含めた交叉公式」がある。
そして、この方法でも、8章の、5つの2次曲線に接する滑らかな2次曲線が3264個であることを示せる。


[1] $\mathbb{P}^3$の例

・$\mathbb{P}^3$の3つの曲面$S_1,S_2,S_3$があって、それぞれの次数を$d_1,d_2,d_3$とする。
通常は、これらは、$d_1d_2d_3$個の交点を成す。
ところが、例えば3つの曲面が例えば1つの直線を共有する場合には、交点は有限個でなくなり、この結果が使えない。
しかし、次の規則がある:
「その直線以外に、残り$(d_1d_2d_3-d_1-d_2-d_3+2)$個の交点が存在する」
(あるいは、その直線が、$(d_1+d_2+d_3-2)$点の価値を持っている、とも解釈できる。)
この章で与えられる公式は、このような結果を一般的な状況で記述することができる。

・少し一般に、$S_1,S_2,S_3$が1つの直線の代わりに次数d,種数gの曲線を共有する場合は、
その曲線は$[d(d_1+d_2+d_3-4)-(2g-2)]$点の価値を持ち、従って残り $[d_1d_2d_3-d(d_1+d_2+d_3-4)+2g-2]$ 個の交点が存在する。

・$\mathbb{P}^3$の曲面3つが直線を1つ共有して交わる場合
1次曲面3つの場合なら、直線は1点分の価値を持ち、他に交点を持たない
2次曲面3つの場合なら、直線は4点分の価値を持ち、残り4点の交点を持つ
3次曲面3つの場合なら、直線は7点分の価値を持ち、残り20点の交点を持つ

・$\mathbb{P}^3$の曲面3つが2次曲線を1つ共有して交わる場合
2次曲面3つの場合なら、2次曲線は6点分の価値を持ち、残り2点の交点を持つ
3次曲面3つの場合なら、2次曲線は12点分の価値を持ち、残り15点の交点を持つ
4次曲面3つの場合なら、2次曲線は18点分の価値を持ち、残り46点の交点を持つ

[直接的な観察]
$S_1$が平面の場合、$d_1=1$で、残りの点の個数は公式によると、$d_2d_3-d(d_2+d_3-3)+2g-2$となるはずである。
平面曲線の種数公式によると$2g-2 = d^2-3d$ なので、$(d_2-d)(d_3-d)$ と変形できる。
一方で直接的に考察すると
$S_1$と$S_2$の交叉は次数がd_2なので、共有するd次曲線を除いた部分は$(d_2-d)$次
$S_1$と$S_2$の交叉は次数がd_3なので、共有するd次曲線を除いた部分は$(d_3-d)$次
そういうわけで残りの点が$(d_2-d)(d_3-d)$となり、先の式と合う。

[直接的な観察]
$S_1$が2次曲面、例えば非退化な$\mathbb{P}^1 \times \mathbb{P}^1$の埋め込み場合。
$S_1$のChow環が$\mathbb{Z}[\alpha,\beta]/(\alpha^2,\beta^2)$であることを使って具体的に考察できる。
共有する曲線$C$の類を$d\alpha+e\beta$とおく。次数は$d+e$となる。
$d_1=2$で、公式によると残りの点の個数は $2d_2d_3-(d+e)(d_2+d_3-2)+2g-2$ となるはずである。
曲線Cの種数は、連接公式 $K_C = (K_S+C)|C$ により、
$2g-2 = C\cdot C-K_S\cdot C = (d\alpha+e\beta)(d\alpha+e\beta) + (-2\alpha-2\beta)(d\alpha+e\beta) = .. = 2(d-1)(e-1)-2$ の関係があり、
残りの点の個数は $2d_2d_3-(d+e)(d_2+d_3-2)+2(d-1)(e-1)-2 = 2d_2d_3-(d+e)(d_2+d_3)+2de$ となる。(本文例2.18)
一方で直接的に考察すると
$S_2$と$S_1$の交叉は$(s_2\alpha+s_2\beta)$, 共有する$d\alpha+e\beta$を除いた部分は $(s_2-d)\alpha+(s_2-e)\beta$
$S_3$と$S_1$の交叉は$(s_3\alpha+s_3\beta)$, 共有する$d\alpha+e\beta$を除いた部分は $(s_3-d)\alpha+(s_3-e)\beta$
従って残りの点は、$(s_2-d)(s_3-e)+(s_2-e)(s_3-d)$ となり、展開すると先の式と合致する。

[その具体例]
具体的にねじれ3次曲線を切り取る例
$S_1: xw-yz = 0$, ($[x:y:z:w] = [ac:ad:bc:bd]$ ← $[a:b], [c:d]$ というふうにして$\mathbb{P}^1 \times \mathbb{P}^1$を埋め込んだ像)
$S_2: xz-yy = 0$, $S_1$との交叉は、$abcc-aadd=0$, 従って $a=0$と $bcc-add=0$
$S_3: yw-zz = 0$, $S_1$との交叉は、$abdd-bbcc=0$, 従って $b=0$と $add-bcc=0$
$d_2=d_3=2,d=1,e=2$に相当し、残りの点の個数は0点で、ねじれ3次曲線以外に交叉が存在しないことと合致する。
(ねじれ3次曲線は、$\mathbb{P}^1 \times \mathbb{P}^1$の座標では $[a:b],[c:d] = [s:t],[s^2:t^2]$ でパラメータ表示される)

別の視点としてヒルベルト多項式などによってねじれ3次曲線は種数0で次数3であることが示される。
公式に$d=3,g=0$を代入しても同じ結果を得ることが観察できる。

[直接的な観察] 重複度を持つ例。3つの2平面:
$S_1: x^2=y^2$
$S_2: x^2=2y^2$
$S_3: x^2=3y^2$
交叉はサイクルとしては、直線 x=y=0 が4重で、スキーム的にはイデアル$(x^2,y^2)$で切り取られる。
ヒルベルト多項式を計算すると次数4、種数1の計算で、4*(2+2+2-4)=8点分の価値となる。

$S_1: xy=0$
$S_2: x^2=2y^2$
$S_3: x^2=3y^2$
の場合は交叉はイデアル$(x^2,xy,y^2)$で切り取られる。
このヒルベルト多項式を計算すると次数3、種数0の計算で、3*(2+2+2-4)+2=8点分の価値と計算される。

・参考:ヒルベルト多項式の計算例:
https://math.stackexchange.com/questions/575219/hilbert-polynomial-twisted-cubic
射影空間の曲線のヒルベルト多項式が分かればそれが $dn+(1-g)$ であることから次数dと種数gを知ることができる。

(x^2,y^2)の例では次数付き環 $k[x,y,z,w]/(x^2,y^2)$ のn次成分を張る基底の個数を数える。
x,y,z,w$ // 4個
xy,xz,yz,xw,yw,zz,ww,zw // 8個
xyz,xyw,xzz,xzw,xww,yzz,yzw,yww,zzz,zzw,zww,www // 12個
[(z,w)の(n-1)次多項式の個数]の2倍 + [(z,w)の(n-1)次多項式の個数]の2倍 + [(z,w)のn次多項式] の個数で、4nの挙動をする。

(x^2,xy,y^2)の例では次数付き環 k[x,y,z,w]/(x^2,xy,y^2) のn次成分を張る基底の個数を数える。
x,y,z,w //4個
xz,yz,xw,yw,zz,ww,zw // 7個
xzz,xzw,xww,yzz,yzw,yww,zzz,zzw,zww,www // 10個
[(z,w)の(n-1)次多項式の個数]の2倍 + [(z,w)のn次多項式] の個数で、3n+1の挙動をする。



[2-1] 定理13.3 余計を含めた交叉公式

Xを滑らかな多様体、$Z_1,..,Z_n$を局所完全交叉な閉部分多様体とすると以下が成り立つ:
$[Z_1]..[Z_n] = \sum_C i_{C\to X\ *} \{s(C,X) c(N_{Z_1/X}|_C).. c(N_{Z_n/X}|_C)\}_d$
和は、交叉$\cap Z_i$の連結成分$C$ごとにとる。このΣの中身を、連結成分Cの価値と思うことができる仕組みである。
セグレ類$s(C,X)$と法層$N_{Z/X}$についてはすぐ後で補足する。添え字のdは、d次元の成分を取り出すことを意図している。

*注意。連結成分$C$は、スキームの構造として解釈する必要がある。
*連結成分ごとの代わりに、既約成分ごとの和の形の公式は作れない。(13.3.2)
*このノートではXの次元に等しい個数の超曲面を交叉させた場合だけ扱う。
 その場合、d=0である。0次元の成分、すなわち余次元dimCの成分を取り出すことになる。
 結果を点の個数に換算され、$i_{C\to X}$は1点を1点に押し出すだけなので、以下の考察では省略される。

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・公式に表れる閉部分多様体のセグレ類 $s(C,X)$ は、13.2で定義されている:

$C$が局所完全交叉の場合は、次に説明される法層を使って$s(C,X)=s(N_{C/X})=1/c(N_{C/X})$と計算できる。
より一般な場合には: $C$を切り取るイデアル層を$\cal I$として、$C$上の次数付き環 ${\cal S}=\oplus {\cal I}^n/{\cal I}^{n+1}$を考えて、
$E={\rm Proj}{\cal S}, \zeta={\cal O}_E(1)$ とおいたときの $\sum(\zeta^k)$ を$C$に押し出した類が $s(C,X)$である。
これは難しくて、最初は具体例で追えなかった。
少し質問したがそこではあまり解決しなかった
その後、押し出しの定義やブローアップに押し出したものを利用した計算を追うと、少し分かった。
押し出しは次元を保つが余次元を保たないので、$s_k(C,X)=\zeta^k$の関係にあるわけではないことを最初見落としていた。
$C$の$X$における余次元を$d$とすると、$C$と$E$の次元の差が$d-1$となり、$s_k(C,X)=\zeta^{k+d-1}$ の関係にある。
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・法層 $N_{Z_n/X}$とは:

$Z\to X$をイデアル層${\cal I}$で切り取られる閉埋め込みとする。余法層が、$\tilde{\cal N}_{Z/X} = {\cal I}/{\cal I}^2$ で定義され、
法層${\cal N}_{Z/X}$は、その双対:${\scr Hom}(\tilde{\cal N}_{Z/X},{\cal O}_Z )$ で定義される、$Z$上の準連接層である。

イメージを与える例 [満ちてくる海, 21.2.14]:
${\rm Spec}\ k[x,y,z]$を$I=(x,y)$で切り取る場合、$I/I^2$の元は$\alpha(z)x+\beta(z)y$である。
z軸に関する余法空間は、zが変化するときにx,yの係数が変化するとして解釈される。

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[寄り道][メモ][満ちてくる海, 21.2.H 効果的カルチエ因子の法層とO(D)]
$Z$が効果的カルチエ因子$D\subset X$で切り取られる時、$\tilde{\cal N}_{Z/X} = O(-D)|_D$, ${\cal N}_{Z/X} = O(D)|_D$である。

略式説明:O(-D)は略式に(O_Xの有理切断として)Dで1位の零点を持つようなものの層で、
Dに制限することは、O(-D)の有理切断としてDで零点を持つもので割った剰余加群をとることに相当する。
次の注意を反映すると、これは(O_Xの有理切断として)Dで1位の零点を持つものを、
(O_Xの有理切断として)Dで2位の零点を持つもので割った剰余加群に相当するのである。

このO(D)という層は、[満ちてくる海,14.2]で「これは代数幾何の話題のうち消化するのが最も難しいものの1つ」と警告された概念であった。
14.2.Eにある、Lを直線束としてその有理切断をsとするとO(div s)=Lの同型がある。
この場合はc_1(L)は直線束Lの「次数」であり、有理切断を1つ取って零点と極を数えることでも得られる。
ただしO(D)の有理切断に対する零点や極という言葉を使うときは、14.2.Fの注意が必要である:
定数関数に相当する構造層の大域切断は、構造層の切断としては零点も極も持たないが、略式にO(D)をDで極を持っても良い有理関数の層と描写したときに対応するO(D)の有理切断としては、Dにおいて相当の零点を持つと解釈するのである。

http://searial.web.fc2.com/aerile_re/bl.html の[3]の[追記]で、
D,D'が、2次元多様体X上の曲線であるときの交点数が、deg_D(O(D')|_D)と解釈できることを書いた。
法層は、ある意味、自己交叉(の制限)のようなものだと思える。

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[2-2] 公式の使用例

$s(C,X)$の計算は一般には難しかった。いくつか計算できる例での計算を紹介する。

・$\mathbb{P}^n$の超平面類を$\alpha$とおく。ここではこれのCへの引き戻しも濫用して$\alpha$と呼ぶ。
$\mathbb{P}^n$から#d_i#次式で切り取られる超曲面の法層のチャーン類は、$1+d_i\alpha$となる。
$\mathbb{P}^n$の直線は、1次式(n-1)個で切り取られるから、その法層のチャーン類は$(1+\alpha)^{n-1}$となる。

・この視点で、[1]の最初の例の$\mathbb{P}^3$の3つの曲面が直線を共有する例では、
$s(C,X) = 1/(1+\alpha)^2 = 1-2\alpha$ (この例では$C$は直線で1次元なので$\alpha$の2次以上は消える)
$c(N_{S_1/X}|_C) = (1+d_1\alpha)$
$c(N_{S_2/X}|_C) = (1+d_2\alpha)$
$c(N_{S_3/X}|_C) = (1+d_3\alpha)$
この4つを掛け合わせたものの1次の項が、この直線の価値となる。
それは$(d_1+d_2+d_3-2)\alpha$となる。$\alpha$の直線への制限は1点なので、これがそのまま点の個数で、[1]に合致する。

・$\mathbb{P}^3$の3つの曲面が平面2次曲線を共有する例では、
$s(C,X) = 1/(1+\alpha)(1+2\alpha) = 1-3\alpha$
$c(N_{S_1/X}|_C) = (1+d_1\alpha)$
$c(N_{S_2/X}|_C) = (1+d_2\alpha)$
$c(N_{S_3/X}|_C) = (1+d_3\alpha)$
この4つを掛け合わせたものの1次の項が求める因子となる。
その結果、$(d_1+d_2+d_3-3)\alpha$となる。$\alpha$の2次曲線への制限は2点なので、
点の個数としては $2(d_1+d_2+d_3)-6$ 点となる。[1]の結果と合致する。

・$\mathbb{P}^5$の5つの超曲面(次数$d_i$)が平面$x=y=z=0$を共有する場合
$s(C,X) = 1 / (1+\alpha)^3 = 1-3\alpha+6\alpha^2$
$c(N_{S_i/X}|_C) = (1+d_i\alpha)$
これらを掛け合わせたものの2次の項が求めるものとなる。
$d_i$の1次と2次基本対称式をu,vとおいて、$(v-3u+6)\alpha^2$となる。

特に$d_1=d_2=d_3=1$とおくと、$(d_4d_5+3d_4+3d_5+3) - 3(3+d_4+d_5) + 6 = d_4d_5\alpha^2$ となる。
$\alpha^2$の平面への制限は1点なので、これは $d_4d_5$で、期待される交点の個数$d_1d_2d_3d_4d_5$に一致する。
これは、3つの超平面だけで既に交叉はその平面だけになるから、
残り2つの超曲面を何次にしても、その平面の外には交叉を持たない事情に合致する。

・自明な例:$\mathbb{P}^n$の同一な$d$次曲面$n$個の場合
$s(C,X) = 1/(1+d\alpha) $
$c(N_{C/X}|_C) = (1+d\alpha)$
掛け合わせたものは、$(1+d\alpha)^{n-1}$
これの$n-1$次の部分が求める因子となり、それは$d^{n-1}\alpha^{n-1}$である。
$d$次曲面に$\alpha^{n-1}$を制限したものとは$d$次曲面と直線の交点で、$d$点なので、
$d^{n-1}\cdot d = d^n$点となり、期待通りの結果である。

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[2-3] 重複度を持つものを共有する場合

$S$が$X$の余次元$d$の部分多様体で、$T$が$S$を二重にしたもののとき、
$T$でのブローアップは、$S$でのブローアップに比べて、例外因子が2重になる。
$s_k(C,X)=\zeta^{k+d-1}$ の関係で$\zeta$が$2\zeta$が置き換わる変化が起きることから、
$s_k(T,X) = 2^(d+k-1)s_k(S,X)$ の関係となる。

・$\mathbb{P}^3$の3つの曲面が直線を2重に共有する場合
$s(2C,X) = 2-8\alpha$ で、$(1+d_i\alpha)$たちと掛け合わせたものの1次の部分は $(2d_1+2d_2+2d_3-8)\alpha$ となる。
特に、$d_1=d_2=2$ とおくと、$2d_3\alpha$であり、$\alpha$の二重直線への制限は2点分なので、$4d_3$点分の価値となる。
これは$d_1d_2d_3$に等しいので、この場合は二重直線以外に交叉を持たない(すぐ前の例と同じ事情で納得)。

・$\mathbb{P}^5$の5つの超曲面(次数s_i)が平面$x=y=z=0$を2重に共有する場合
($x^2=y^2, x^2=2y^2, x^2=3y^2, y^2=z^2, x^2=z^2$ みたいな。)
$s(2C,X) = 4-24\alpha+96\alpha^2$
$c(N_{S_i/X}|_C) = (1+d_i\alpha)$
これらを掛け合わせたものの2次の項が求めるものとなる。
$d_i$の1次と2次基本対称式をu,vとおいて、$(4v-24u+96)\alpha^2$となる。
特に$d1=d2=d3=2$とおくと、[2-2]の対応する例とほとんど同様の計算で、$4d_4d_5\alpha^2$となる。
$\alpha^2$の2重平面への制限は2点分という寄与によって $8d_4d_5 = d_1d_2d_3d_4d_5$ 点となり、納得する結果である。

これらの考察では最後に2点分という寄与を考慮した。
その寄与を最初から含めるならば、s_k(T,X) = 2^(d+k)s_k(S,X) という関係となる。
[3]ではこの形で記述される。


[3] 5つの2次曲線の問題 (13.3.5)

$\mathbb{P}^5$において、一般な2次曲線C_iに接する2次曲線に相当する閉部分多様体$Z_i$たちを考える。
$Z_1,..,Z_5$は6次の超平面で、もし横断的に交わるなら交点数は6^5=7776となる。
ところ$Z_1,..,Z_5$の交叉は横断的でなく、有限個の点の他に二重直線に相当する2次元部分多様体$S$を含むのであった。
8章ではこれを双対曲線を考えた独特の工夫により解決した。
これを代わりに、公式13.3を使って解決することができる。
Sは次数2で既約になるらしい。この既約成分Sに対して、公式に現れる項を計算する。

・$Z_i$の法層の$S$への制限のチャーン類 $c(N_{Z_i/\mathbb{P}^5}|_S)$
$\zeta$を$S$の超平面類=直線類として、$\alpha$を$\mathbb{P}^5$の超平面類とする。
$Z_i$の次数が6なので、$c(N_{Z_i/\mathbb{P}^5}) = 1+6\alpha$である。
$S$が次数2なので、$\alpha$の$S$への制限は$2\zeta$に相当し、$c(N_{Z_i/\mathbb{P}^5}|_S) = 1+12\zeta$となる。

・$S$の法層のチャーン類
完全列 $0 \to {\cal T}_S \to {\cal T}_{\mathbb{P}^5}|_S \to {\cal N}_{S/\mathbb{P}^5} \to 0$ から計算できる。
ホイットニーの公式により
$c({\cal N}_{S/\mathbb{P}^5}) = (1+\eta )^6|_S / (1+\zeta)^3 = (1+2\zeta)^6/(1+\zeta)^3 = 1+9\zeta+30\zeta^2+\zeta^3$以上の項
$s({\cal N}_{S/\mathbb{P}^5}) = (1+\zeta)^3/(1+2\zeta)^6 = 1-9\zeta+51\zeta^2+\zeta^3$以上の項

・リーマンフルヴィッツの公式を使うと、$Z_i$が$S$で重複度が2を持つことが分かるらしい (練習13.31)
$T$を、略式に、$S$を二重にしたスキームとする。$s(T,\mathbb{P}^5)$が公式の$s(C,X)$に相当する部分となる。
[2-3]の内容で、$s(T,\mathbb{P}^5) = 2^{k+3}s(S,\mathbb{P}^5) = 2^{k+3}s({\cal N}_{S/\mathbb{P}^5})$ の関係がある。
その結果、$s(T,\mathbb{P}^5) = 8-16\cdot 9\zeta + 32\cdot 51\zeta^2$ となる。

・以上によりこの2次元多様体の価値を計算すると
$(8-144\zeta+1632\zeta^2)(1+12\zeta)^5$ の2次の部分で、$4512\zeta^2$となる。$\zeta^2$は1点に相当する。
従って、残りの有限個の点の個数を、7776-4512 = 3264点 と計算できて、8章と同じ答えを得られた!

2020/12/23

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