別のノートで、ヤコビ和とガウス和を観察した。
フェルマー曲線やアルティン・シュライヤー曲線のフロベニウスの固有値と関係ある事実を書いた。
その後、これは、次のように説明できることを知った。
資料:https://www.ams.org/journals/proc/1988-102-03/S0002-9939-1988-0928961-7/S0002-9939-1988-0928961-7.pdf
(後半のRelationship to Brumer-Starkの内容は私には全然分からない)
前半の内容に自分の解釈を加えて具体例で計算したものを紹介する:
フェルマー曲線において、因子類群の自己準同型としてのヤコビ和を考えることができて、
(このノートでは「ヤコビ和写像」と呼ぶことにする)
これの符号をかえたものが、フロベニウス写像に一致する。
(*文献によってはヤコビ和の符号を反対に定義している)
そして、「ヤコビ和写像」の固有値に、複素数としてのヤコビ和が出てくる。
アルティン・シュライヤー曲線とガウス和についても同様の関係がある。
[1] p=q=5, k=4 の具体例を使ってフェルマー曲線(の因子類群)とヤコビ和の関係を観察する。
標数5の体で 曲線F:x^4+y^4=1 (を射影化したもの) を考える。
F_5の代数閉包範囲で考える。
例えば、F上には、点P:(x,y)=(A,B)=(1+2√2, 1+3√2) のような点がある。
Fには虚数乗法のような自己同型が定義される。
標数5では、1,2,3,4は4乗して1になるから、a,b∈{1,2,3,4}とすると、
F上の点P=(x,y)に対して、点(ax,by)もF上の点となる。
これを表記する標準的な記法を知らないのでこのノートでは[a,b]Pと表記することにする。
---
点Pに対して、有理関数 f = 1-x/A-y/B を考える。
斉次座標では、f = 1-X/Z/A-Y/Z/B ということになり、
4つの無限遠点 [X:Y:Z] = [1:±√2:0], [1:±2√2:0]で極を持つ。
式の形から、a+b≡1 (mod 5)に対する、[a,b](x,y)が零点になる。
(代入すると1-a-bで0になる。)
具体的には[a,b]=[2,4],[3,3],[4,2]で、3つの零点を与える。
そして、(x,y)=(A^5,B^5)がもう1つの零点を与えることが観察できる。
(代入すると1-A^4-B^4であり定義方程式より0である)
言い換えると、(2A,4B),(3A,3B),(4A,2B)が同一直線上にあり、
この直線と曲線Fのもう1つの交点が(A^5,B^5)を与える。
何が起きているかというと:
Pを[2,4]P+[3,3]P+[4,2]Pに送る、すなわち、(A,B)を(2A,4B)+(3A,3B)+(4A,2B)に送るような
因子類群から因子類群への線形写像を考え、これを「ヤコビ和写像」と呼ぶと、フロベニウスの逆元である。
# 具体例での計算
P=(A,B)=(1+2√2, 1+3√2) のとき (A^5,B^5)は共役(1-2√2,1-3√2) であり
[2,4]P = (2+4√2, 4+2√2)
[3,3]P = (3+√2, 3+4√2)
[4,2]P = (4+3√2, 2+√2)
これら4点は同一直線 y = (2-2√2)x + (1+3√2) と曲線Fがなす4交点となっている。
---
これから、因子類群から因子類群への線形写像であるヤコビ和写像を、複素数としてのヤコビ和と関連付ける:
(A,B)を曲線上の一般な点として、
点P{uv} = [2^u,2^v](A,B) = (2^u*A, 2^v*B) とおく。u,v∈{1,2,3,4}
無限遠点を引いた次数0の因子を a{uv} = P{uv} - ∞ とおく。
正確には、4つの無限遠点を、∞1,∞2,∞3,∞4とおいて、 ∞=(∞1+∞2+∞3+∞4)/4と考えれば良いように思う。
*例えばa{uv} = P{uv} - [2^u:2^v:0] などとおいてしまうと、
a{11}+a{22}+a{33}+a{44} が P{11}+P{22}+P{33}+P{44}-∞1-∞2-∞3-∞4 に一致しなくて都合が悪い)
16個の因子a[uv]による自由加群は、そのまま16次元の実ベクトル空間をなすが、
主因子で割ることによって、6次元の実ベクトル空間となる。
[参考] Fの種数は(k-1)(k-2)/2=3であり、ヤコビ多様体(=因子類群の次数0の部分)の実ベクトル空間の次元は種数の2倍である
# 計算:具体的に10個の独立な関係式を挙げることができる
a11+a12+a13+a14=0,
a21+a22+a23+a24=0,
a31+a32+a33+a34=0,
a41+a42+a43+a44=0,
a11+a21+a31+a41=0,
a12+a22+a32+a42=0,
a13+a23+a33+a43=0,
a11+a22+a33+a44=0,
a21+a32+a43+a14=0,
a31+a42+a13+a24=0,
(初めの4つは直線 x=2^u*A, 次の3つは直線 y=2^v*B, 次の3つは直線 y=x*2^(v-u) の零点と極による。)
ヤコビ和写像をJとおくと、Jは
[2^u,2^v]Pを[2,4][2^u,2^v]P+[3,3][2^u,2^v]P+[4,2][2^u,2^v]P = [2^(u+1),2^(v+2)]P + [2^(u+3),2^(v+3)]P + [2^(u+2),2^(v+1)]Pに送る:
すなわち、a{uv}をa{(u+1)(v+2)}+a{(u+3)(v+3)}+a{(u+2)(v+1)}に送る。
次に、a{uv}を i^(su)*i^(tv) に送ることで、因子類群から複素数への準同型が定義できる。
ここで上記の関係式の左辺を0に送るためにs,tは、s,t,s+tの3つとも4の倍数でない必要がある。
具体的には (s,t)∈{(1,1),(1,2),(2,1),(2,3),(3,2),(3,3)}が適する。
*例えばs+t=4だと、a{11}+a{22}+a{33}+a{44}の行先が0でなくなってしまう。
そこで、x{st} = Σi^(su)*i^(tv)*a{uv} (u,v∈{1,2,3,4}の和をとる) とおく。
このうち(s,t)が上記の条件を満たす6つが、ヤコビ和写像に対する固有ベクトルとなり、
(従ってフロベニウス写像の固有ベクトルでもある)
対応する固有値に、複素数としてのヤコビ和 J(-s,-t) = i^(-s)*i^(-2t)+i^(-3s)*i^(-3t)+i^(-2s)*i^(-t) が現れる。
具体的には以下が成り立つ:
J(x{11}) = (-1+2i)x{11}
J(x{12}) = (1-2i)x{12}
J(x{21}) = (1-2i)x{21}
J(x{23}) = (1+2i)x{23}
J(x{32}) = (1+2i)x{32}
J(x{33}) = (-1-2i)x{33}
*詳細計算:(Σはすべてu,vについての和をとっている)
J(x{st}) = Σi^(su)*i^(tv)*J(a{uv}) = Σi^(su)*i^(tv)*( a{(u+1)(v+2)}+a{(u+3)(v+3)}+a{(u+2)(v+1)} )
ここで変数の置き換えにより Σi^(su)*i^(tv)*a{(u+u')(v+v')} = Σi^(su-su')*i^(tv-tv')*a{uv} と変形できるので
J(x{st}) = Σ{i^(su-s)*i^(tv-2t) + i^(su-3s)*i^(tv-3t) + i^(su-2s)*i^(tv-t)} * a{uv}
= Σi^(su)*i^(tv) * {i^(-s)*i^(-2t) + i^(-3s)*i^(-3t) + i^(-2s)*i^(-t)} * a{uv}
= {i^(-s)*i^(-2t) + i^(-3s)*i^(-3t) + i^(-2s)*i^(-t)} * x{st}
*Maximaによる検算(a{uv} = Σi^(-us)*i^(-tv)*x{st}/16 の関係式でa{uv}を復元できることもついでに観察できる。)
K:solve([
a11+a12+a13+a14=0,
a21+a22+a23+a24=0,
a31+a32+a33+a34=0,
a41+a42+a43+a44=0,
a11+a21+a31+a41=0,
a12+a22+a32+a42=0,
a13+a23+a33+a43=0,
a11+a22+a33+a44=0,
a21+a32+a43+a14=0,
a31+a42+a13+a24=0,
i^2*a11+i^3*a12+i^4*a13+i^1*a14+i^3*a21+i^4*a22+i^1*a23+i^2*a24+i^4*a31+i^1*a32+i^2*a33+i^3*a34+i^1*a41+i^2*a42+i^3*a43+i^4*a44-x11,
i^3*a11+i^5*a12+i^3*a13+i^1*a14+i^4*a21+i^2*a22+i^4*a23+i^2*a24+i^5*a31+i^3*a32+i^1*a33+i^3*a34+i^2*a41+i^4*a42+i^2*a43+i^4*a44-x12,
i^3*a11+i^4*a12+i^1*a13+i^2*a14+i^5*a21+i^2*a22+i^7*a23+i^4*a24+i^7*a31+i^4*a32+i^1*a33+i^2*a34+i^1*a41+i^2*a42+i^3*a43+i^4*a44-x21,
i^5*a11+i^4*a12+i^3*a13+i^2*a14+i^3*a21+i^2*a22+i^1*a23+i^4*a24+i^5*a31+i^4*a32+i^3*a33+i^2*a34+i^3*a41+i^2*a42+i^1*a43+i^4*a44-x23,
i^5*a11+i^3*a12+i^1*a13+i^3*a14+i^4*a21+i^2*a22+i^4*a23+i^2*a24+i^7*a31+i^1*a32+i^3*a33+i^1*a34+i^2*a41+i^4*a42+i^2*a43+i^4*a44-x32,
i^6*a11+i^1*a12+i^4*a13+i^3*a14+i^5*a21+i^4*a22+i^7*a23+i^2*a24+i^4*a31+i^3*a32+i^2*a33+i^1*a34+i^3*a41+i^2*a42+i^1*a43+i^4*a44-x33,
]
,[a11,a12,a13,a14,a21,a22,a23,a24,a31,a32,a33,a34,a41,a42,a43,a44]);
b11: a23+a32+a44;
b21: a33+a42+a14;
b31: a43+a12+a24;
b41: a13+a22+a34;
b12: a24+a33+a41;
b22: a34+a43+a11;
b32: a44+a13+a21;
b42: a14+a23+a31;
b13: a21+a34+a42;
b23: a31+a44+a12;
b33: a41+a14+a22;
b43: a11+a24+a32;
b14: a22+a31+a43;
b24: a32+a41+a13;
b34: a42+a11+a23;
b44: a12+a21+a33;
i:%i;
y11:i^2*b11+i^3*b12+i^4*b13+i^1*b14+i^3*b21+i^4*b22+i^1*b23+i^2*b24+i^4*b31+i^1*b32+i^2*b33+i^3*b34+i^1*b41+i^2*b42+i^3*b43+i^4*b44;
y12:i^3*b11+i^5*b12+i^3*b13+i^1*b14+i^4*b21+i^2*b22+i^4*b23+i^2*b24+i^5*b31+i^3*b32+i^1*b33+i^3*b34+i^2*b41+i^4*b42+i^2*b43+i^4*b44;
y21:i^3*b11+i^4*b12+i^1*b13+i^2*b14+i^5*b21+i^2*b22+i^7*b23+i^4*b24+i^7*b31+i^4*b32+i^1*b33+i^2*b34+i^1*b41+i^2*b42+i^3*b43+i^4*b44;
y23:i^5*b11+i^4*b12+i^3*b13+i^2*b14+i^3*b21+i^2*b22+i^1*b23+i^4*b24+i^5*b31+i^4*b32+i^3*b33+i^2*b34+i^3*b41+i^2*b42+i^1*b43+i^4*b44;
y32:i^5*b11+i^3*b12+i^1*b13+i^3*b14+i^4*b21+i^2*b22+i^4*b23+i^2*b24+i^7*b31+i^1*b32+i^3*b33+i^1*b34+i^2*b41+i^4*b42+i^2*b43+i^4*b44;
y33:i^6*b11+i^1*b12+i^4*b13+i^3*b14+i^5*b21+i^4*b22+i^7*b23+i^2*b24+i^4*b31+i^3*b32+i^2*b33+i^1*b34+i^3*b41+i^2*b42+i^1*b43+i^4*b44;
ev([y11,y12,y21,y23,y32,y33],K),ratsimp;
> [(2*%i-1)*x11,(1-2*%i)*x12,(1-2*%i)*x21,(2*%i+1)*x23,(2*%i+1)*x32,(-2*%i-1)*x33]
---
応用:別のノートで観察したように局所ゼータ関数が分かる。
ヤコビ和写像の固有値が、(-1+2i),(1-2i),(1-2i),(1+2i),(1+2i),(-1-2i) であることが分かった。
従って、フロベニウス写像の固有値は、(1-2i),(-1+2i),(-1+2i),(-1-2i),(-1-2i),(1+2i) である。
局所ゼータ関数は、Z(t) = (T^2-2T+5)*(T^2+2T+5)^2 / (1-t)(1-5t) ということになる。
Z'(t)/Z(t) をテイラー展開した(n+1)次の係数が、曲線のF_(q^n)範囲の点の個数に一致する。
===
[2] 一般化の概略
qを素数の冪として、q=k+1の場合、同様の議論が成立する。
kがq-1の約数の場合は、因子の引き戻しを利用することで、k=q-1の場合の曲線の場合の系として成立する。
・p=q=13,k=4の場合、フェルマー曲線
[2-1] P=(A,B)に対して[a,b]P=(a^3*A,b^3*B)と定義すると、
今度は、[2,12]P, [3,11]P, .., [12:2]P という11点は、x^4+y^4=1を満たす。
1-(x/A)^(1/3)-(y/B)^(1/3)を有理化した関数を考えると、上記の11点を零点に持つ3次関数で、
(具体的には 1-3x/A-3y/B+3xx/AA-21xy/AB+3yy/BB-xxx/AAA-3xxy/AAB-3xyy/ABB-yyy/BBB である)
もう1つの零点が(x,y)=(A^13,B^13)となっている。
[2-2] x^4+y^4=1上の因子(A,B)を、x^12+y^12=1上の因子に引き戻すことができる。
具体的にはAとBの3乗根をそれぞれC,3C,9CとD,3D,9Dとして、(3^3=1である。)
(C,D)+(3C,D)+(9C,D)+(C,3D)+(3C,3D)+(9C,3D)+(C,9D)+(3C,9D)+(9C,9D) に引き戻す。
(q,k)=(13,12)では[1]と同様の議論が成立する。ヤコビ多様体は66次元の実ベクトル空間で、
x{st} = Σζ^(su)*ζ^(tv)*a{uv}, ζは1の原始12乗根 という基底がとれる。
(s,tはs,t,s+tが12の倍数でないような組を渡る。Σはu,v∈{1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12}で和を取る。)
uが{u,u+4,u+8}を渡るときに x座標が{C,3C,9C}を渡り、vとy座標についても同様であるから、
s,tが3の倍数であるときに、係数ζ^(su)*ζ^(tv)が一致して、因子x{st}が、x^4+y^4=1の因子を引き戻した範囲に居る。
・x{33},x{36},x{63},x{69},x{96},x{99}による6次元部分空間が、x^4+y^4=1の因子を引き戻した部分空間に一致する。
・それぞれのフロベニウス写像と、引き戻しは可換である
・(p,k)=(13,12)で(s,t)={(3,3),(3,6),(6,3),(6,9),(9,6),(9,9)}に対応するヤコビ和は、
(p,k)=(13,4)で(s,t)={(1,1),(1,2),(2,1),(2,3),(3,2),(3,3)}に対応するヤコビ和と同じである。
のような観察から、x^4+y^4=1上のフロベニウス写像の固有値と、(p,k)=(13,4)のヤコビ和と結びつけられる。
===
[3] ガウス和とアルティン・シュライヤー曲線
ここでもp=5,k=4を使う。標数5の体で、曲線A: x^5-x=y^4 を考える。
正確には、これをアフィンとして持つ非特異射影曲線を考える。
*斉次座標で X^5-X*Z^4 = Y^4*Z と書かれる射影曲線ではない。これだと、[X:Y:Z] = [0:1:0] に特異点を持つ。
*この場合は、u^4*v^7+u-v^3=0, u=y/x^2, v=x/y, x=1/(u*v), y=1/(u*v^2) と貼り合わせれば良い。(u,v)=(0,0)が無限遠点に相当する。
( 関連:過去ノートの[1-d]の例 )
点P:(x,y)=(A,B) と a∈{0,1,2,3,4}, b∈{1,2,3,4} に対して、[a,b]P = (a+x,by) を考えると、
Pが曲線A上にあるときに点[a,b]Pも曲線A上にある。
そして、有理関数 f = x-A - y/B を考える。fは無限遠点で5位の極を持つ。
(無限遠点を除いたアフィンでの交点を考えると5次方程式で5個の零点を持つから)
(f = 1/uv - A - 1/B/(uv^2) は 1/uは3位の極、1/vは1位の極である観察と合致する)
a=bのときの[a,b]P、すなわち[1,1]P,[2,2]P,[3,3]P,[4,4]Pがfの4つの零点を与え(代入するとa-bで0となる)
そして、(x,y)=(A^5,B^5)が、もう1つの零点を与えることが観察できる。
従って、因子Pを、[1,1]P+[2,2]P+[3,3]P+[4,4]Pに送る「ガウス和写像」を考えると、
フロベニウス写像の逆元となっている。
---
先と同様に、複素数としてのガウス和と結びつける。議論はほとんど同様に進む。
(A,B)を曲線A上の一般な点として考察を進める。
点P{uv} = [u,2^v](A,B) とおく。u∈{0,1,2,3,4}, v∈{1,2,3,4}
無限遠点を引いた因子を、a{uv} = P{uv} - ∞ とおく。
20個の因子に対して、以下の8個の独立な関係式があって自由加群は12次元の実ベクトル空間となる:
a01+a02+a03+a04=0,
a11+a12+a13+a14=0,
a21+a22+a23+a24=0,
a31+a32+a33+a34=0,
a41+a42+a43+a44=0,
a01+a11+a21+a31+a41=0,
a02+a12+a22+a32+a42=0,
a03+a13+a23+a33+a43=0,
(初めの5つは直線 x=A+u, 次の3つは直線y=2^v*B による因子に相当する)
a{uv}を、exp(2πisu/5)*i^(tv) に送ることで、因子類群から複素数への準同型が定義できる。
上記の関係式の左辺を0に送るための条件は、sは5の倍数でなく、tは4の倍数でないことである。
x{st} = Σexp(2πisu/5)*i^(tv)*a{uv} (u∈{0,1,2,3,4},v∈{0,1,2,3}の和をとる) とおく。
(s,t)が上記の条件を満たす12個が、12次元空間の基底となり、しかも「ガウス和写像」に対する固有ベクトルとなる。
ガウス和写像をGとおくと、Gは、
[u,2^v]Pを、[1,1][u,2^v]P+[2,2][u,2^v]P+[3,3][u,2^v]P+[4,4][u,2^v]P = [u+1,2^v]P + [u+2,2^(v+1)]P + [u+3,2^(v+3)] + [u+4,2^(v+2)]P に送る。
すなわち、a{uv}をa{(u+1)v}+a{(u+2)(v+1)}+a{(u+3)(v+3)}+a{(u+4)(v+2)}に送る。
ヤコビ和のときと同じように考察する:(Σはすべてu,vについての和をとっている)
G(x{st}) = Σexp(2πisu/5)*i^(tv)*G(a{uv})
= Σexp(2πisu/5)*i^(tv)*[a{(u+1)v}+a{(u+2)(v+1)}+a{(u+3)(v+3)}+a{(u+4)(v+2)}]
ここで変数の置き換えにより、
Σexp(2πisu/5)*i^(tv)*a{(u+u')(v+v') = Σexp(2πi(su-su')/5)*i^(tv-tv')*a{uv}
が成り立つので
G(x{st}) = {exp(2πi(-s)/5) + exp(2πi(-2s)/5)*i^(-t) + exp(2πi(-3s)/5)*i^(-3t) + exp(2πi(-4s)/5)*i^(-2t)} x{st}
となる。
こうして、
G(x{st}) = {複素数としてのガウス和G(-s,-t)} * x{st} という関係式が成り立つ。
一般化の仕方もヤコビ和の場合と同様なので省略する。
2021/10/24
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