局所体(1):乗法群の構造

「L/Kが局所体のアーベル拡大であるとき、 ノルム写像L*→K*の像がなす乗法群のK*に対する指数が、L/Kの分岐指数に等しい」 ということを示したいのが、この勉強をするきっかけであった。 この事実自体は、例えばオンラインで見つかる類体論の講義資料 https://www.rs.tus.ac.jp/a25594/2015_Class_Field_Theory.pdf の系84、あるいはおそらくその著者も参考にした書籍:足立「類体論講義」の系2.7.4にあり、 正規基底定理と群コホモロジー、エルブラン商のような道具を使って示される。 ところが、ここでは、もっと具体的な視点で考察していく視点を紹介する。 すなわち、不分岐拡大、順分岐拡大、暴分岐拡大それぞれについて、ノルム群がなす部分群を具体的に描写する。 (この方針は、ガウス整数環において素元と既約元が一致するという事実を、 http://searial.web.fc2.com/tools/sg.html の[7]に書いたように、4N+1と4N+3に分けて具体的に考察した時の精神と似ているかもしれない。) この内容は、もっと古いノート(有限体と局所体))でも紹介したオンラインで出会った下記のpdfによる。 https://www.maths.nottingham.ac.uk/personal/ibf/book/book.html このpdfを読むのは、何回目かの挑戦である。 このpdfは詳しくて、正標数の局所体の場合や、剰余体が代数閉のような場合も扱っている。 その中から必要な情報を抜き出すようにして読んでいる。 今回の内容は、4章の(1.5)の所に書いてある。 それが参照している1章と3章のいくつかの命題を追う形で、読んだ。 よく理解するために、具体例を元に、適宜言葉を変えながら、観察している。 結局、2つのページに分けることにした。 (1):乗法群の構造 [1章の内容] (このページ) (2):暴分岐拡大について [3章の内容] しかしこの議論が終われば、結論は比較的すぐに従うから、 (2)の最後に、ノルム写像の像の描写 [4章(1.5)の議論] も加えてしまった。 局所体とは言っても、ここでは特殊なものだけを考察する。 標数0で、剰余体が有限体のもの、具体的にはp進数体Q_pの有限次元拡大だけを扱う。 記号や習慣、概念: ・考察している局所体をKと書く。 ・その整数環をO、その極大イデアルの生成元(の1つ)を素元と呼び、πと書く。 ・剰余環 O/(π) は有限体をなす。(この局所体に対応する)剰余体と呼ぶ。その標数をpと書く。 ・x≡1 (mod π)な元を主単数と呼ぶ。主単数の集合をU_1と書く。これは単数の部分群をなす。  x≡1 (mod π^k)な元をk次主単数と呼び、U_kと書く。 ・k次主単数だが(k+1)次主単数でないものを「ちょうどk次主単数」と呼ぶことにする(独自表現)。 ・付値。ここでは、x∈(π^k)を満たす最大のkをv(x)と書き、xの付値と呼ぶ。  例えば、xが単数であることはv(x)=0と同値である。 ・v(x)/v(p)=V(x)をxの付値と呼ぶ流儀もある。  これはv(p)≠1のときに異なる値となる。  具体的にはQ_p上の分岐した拡大体を扱うときに異なる、  例えばQ_5(√5)を扱うときには: V(√5)=1/2, V(5)=1 v(√5)=1, v(5)=2  このノートでは、参照したpdf資料に合わせて、v(x)は後者の方を採用する。  ただし前者の流儀を使いたい気分の時もあり、その場合は大文字のVを使うことにした。  すなわちv(p)の値は考えている局所体によって変わるが、V(p)は常に1である。 ・分岐指数eと剰余指数f。  局所体の拡大によって付値の取る値が刻み具合が増える分が分岐指数。  剰余体が大きくなる分が剰余指数。 ・分岐指数がpと互いに素なとき順(tame)分岐、そうでないとき暴(wild)分岐と言う。 ・典型的な例は、Q_3(√-1)/Q_3が不分岐拡大、Q_3(√3)/Q_3が順分岐拡大、Q_2(√2)/Q_2が暴分岐拡大。 ・Q_pに対する分岐指数と剰余指数を、絶対分岐指数と絶対剰余指数と呼び、単にe,fで書く。  これは今回参照した後で紹介するpdfの習慣である。  この習慣では先の付値の習慣と合わせて、v(p)=eという状況となる。
結果 [結果1]【主単数に対するp乗写像の行先】(p.15の3つの図式が書いてある命題) u=1+mを主単数とする。 ・V(m)<1/(p-1)のときは、V(u^p-1) = p*V(u-1) ・V(m)=1/(p-1)のときは、V(u^p-1) ≧ p*V(u-1) = V(u-1)+1 ・V(m)>1/(p-1)のときは、V(u^p-1) = V(u-1)+1 真ん中の結果の等号について: Kが1の原始p乗根ζを持ち、u=1+a*(ζ-1)とおいたときに aの剰余体への還元がF_pに含まれることと、等号の不成立が同値となる。 (f=1のときは、後半の条件は常に満たされる。) (このノートではほとんどf=1な例しか登場しない。) [結果2]【乗法群の構造】( p.19の命題(6.4) ) KをQ_pの分岐指数e,剰余指数fの有限次拡大とする。その乗法群は、 Kが1の原始p^r乗根を持つような最大のrをとり、r≠0ならばそれをζとおく。 Z × 1/(p^f-1)Z × Z/(p^r)Z × (Z_p)^(ef) の構造をしている。 具体的には、Kの非零元xは、 x = π^a × ω^b × u [πは素元, ωは1の(p^f-1)乗根, uは主単数] の形で書ける。 主単数群は、位数p^rのtorsionと、ef個のZ_pの直積の構造をしている。 すなわち、r=0の場合はef個、r≠0の場合は(ef+1)個の生成元で生成される。 さらに、次のように生成元を具体的に与えることができる。 ・集合Iを、ep/(p-1)未満の、pと互いに素な正の整数とする(e個となる)。 ・集合Jを、F_qをF_p上の線形空間とみなしたときの基底とする(従ってf個)。 このときに、(1+θ_ij*j*π^i) [i∈I, j∈J] がef個の生成元となる。 (θ_ijは剰余類がF_p*に属するような任意の単数で良い。) ・r≠0 のときは、ep/(p-1)次主単数を1つ追加すると(ef+1)個の生成元を得られる。 [結果3](系) ・k>ep/(p-1)のとき、k次主単数は、ある(k-e)次主単数のp乗となる。 ・k≦ep/(p-1)でkがpの倍数のとき、k次主単数は、ある(k/p)次主単数のp乗に、ζを何回か掛けたものとおける。 (追記:怪しい) ・k≦ep/(p-1)でkがpの倍数でないとき、k次主単数は、p乗数でない。(乗法群の生成元になり得る) 追記:次のように描写したほうが、良さそうである: ・k<e/(p-1)のとき、ちょうどk次主単数は、p乗写像で、ちょうど(pk)次主単数に全射する。 ・k=e/(p-1)のとき、ちょうどk次主単数は、p乗写像で、ちょうど(k+e)次主単数に非全射的に移る。 ・k>e/(p-1)のとき、ちょうどk次主単数は、p乗写像で、ちょうど(k+e)次主単数に全射する。
このノートでは次の具体例で観察し、現象を描写する。 ・K=Q_5 [p=5, e=1] ・K=Q_5(√5) [p=5, e=2] ・K=Q_3(w), w^7=3 [p=3, e=7] ・K=Q_3(π), π^8=-3 [p=3, e=8] 最後に、f≠1の場合を少し説明する。 まずは一番単純な例として、Q_5の場合を観察することから始める。 その整数環であるZ_5の乗法構造に興味がある。 これは、結果として、例えば、次のように記述できる: 「任意の0≠z∈Z_5は、 z = 5^a * 2^b * 6^c [0≦a∈Z, b∈{0,1,2,3}, c∈Z_5] の形で一意的に表せる」 この3つは「素元部分」「剰余体部分」「主単数部分」とでも呼べるだろう。 後ろ2つが、「単数群」をなす。 「剰余体部分」について Z_5が1の原始4乗根を持つことが理解できるなら(ヘンゼルの補題による)、 2^bの部分は、2^bの代わりに1の原始4乗根iを使ってi^bと書くこともできる。 これはタイヒミュラー指標(の像)とも呼ばれる。 この部分は剰余体の構造によるもので、一般の場合には1の原始(p^f-1)乗根で生成される。 「主単数部分」が、一番難しい。この後の考察の中心となる。 この例では主単数が6^c {c∈Z_5}の形で表せるというところが一番興味深い。 これは、xを主単数としたとき、任意の正の数Nに対して6^C≡x (mod 5^N) となるようなCが存在することを意味する。 具体的には例えばx=11に対して 6^2≡11 (mod 25) 6^22≡11 (mod 125) ... というようにして、6^c=11となるc∈Z_5を、c=2+4*5+...と展開する様子である。 [補足] z/(5^a*2^b) が主単数となるようにa,bを一意的に定められるので、 これをxとおくことで、x≡1 (mod 5)ならば、x=6^c, c∈Z_5と表せることに帰着する。このあと: ・初等的な視点(上記の雑な説明をより丁寧にしたもの) x,cの5進展開の係数をxi,ciとおく: x = 1 + x1*5 + x2*25 + x3*5^3 + ... c = c0 + c1*5 + c2*25 + c3*5^3 + ... [h1] 6のべき乗を25で割ったあまりは周期5の挙動をするから(この挙動を既知とする。指数持ち上げの補題。)、  6^c≡1+x1*5 (mod 25) を満たす条件から、cを5で割った余りが決まる。すなわちc0が決まる。 [h2] 6のべき乗を125で割ったあまりは周期25の挙動をするから、  6^c≡1+x1*5+x2*25 (mod 125) を満たす条件から、cを25で割った余りが決まる。すなわちc1が決まる。 (この条件式の125で割ったあまりを25で割ったあまりは[h1]の25で割ったあまりに一致するから、  得られるcを25で割ったあまりを5で割ったあまりは、[h1]のc0と合致する。  従ってc0+c1*5を25で割ったあまりがそれになるようなc1をとることができる。) ... というふうにしてciを順番に決めていくことができて、それぞれのciは一意的に定まる。 ・指数対数準同型 exp(y)=1+y+y^2/2+y^3/6+y^4/24+... log(1+y)=y-y^2/2+y^3/3-y^4/4+... とおくと、y∈Z_5が5の倍数のとき収束する。 そこで、log(x)/log(6)をcとして採用することで目的の準同型を得る。
Q_5の様子を観察した。pが奇素数の時のQ_pは同様の挙動である。 Q_2では少し様子が異なり、複雑となる。 これは、1つの視点では、1の原始p乗根を持つかどうかに由来する。 ・事実:Q_pに1の原始p乗根を添加する拡大は、(p-1)次の順分岐拡大である。言い換えるとV(ζ)=1/(p-1)。 (分かりやすい例には、1の原始3乗根の添加は、√-3を添加と同等である。) これは円分体の判別式の計算で示される。と思う。 だから、Q_3(√-3)の乗法群も、Q_2が持つような複雑さを持つ。 そこで、これらを同時に観察したほうが、その共通点が分かりやすいかもしれない。 しかし、e≠1な例に慣れるために、 先に、e≠1だがこの複雑さがないQ_5(√5)の結果を見ておくことにしよう。 「任意のz∈Z_5(√5)は、 z = (√5)^a * i^b * (1+√5)^c * 6^d [0≦a∈Z, b∈{0,1,2,3}, c∈Z_5, d∈Z_5] の形で一意的に表せる」(ここでiは原始4乗根である。) 中心的な所は、主単数が (1+√5)^c * 6^d と表せる所である。 ・適当な例 1+3√5+2*5+4*5√5+... を実現する例を示しておく。(たぶん読者は自分で考察するのが良い) √5の係数が3だから、c≡3 (mod 5)と決まる。  c=3で計算すると、(1+√5)^3 = (1+3√5+15+5√5) となる。 次に5の係数を2に合わせるためには、(1+5)を4+5N回掛けることになることが分かる。d≡4(mod 5) これは式で書くと、(1+3√5+15+5√5)*(1+5)^d ≡ 1+3√5+(3+d)*5 (mod 5√5) というふうに、 「(1+5)を1回掛けることで、5の係数を1つ増やす結果となる」という仕組みによる。  d=4で計算すると、(1+√5)^3*(1+5)^4 = 1+3√5+2*5+15√5+(25の倍数) となる。 次に5√5の係数を合わせる(これはmod 25で合わせることを意図している)ためには、(1+5√5)を1+5N回掛けることになる。  (1+√5)を5+25N回掛けることに相当する。すなわち、c≡3 (mod 5)が、c≡3+5 (mod 25)と詳しくなった。 こうして、(1+√5)^8*(1+5)^4 = 1+3√5+2*5+4*5√5+(25の倍数) が実現された。 ・たぶん言葉で説明するより手を動かした方が分かると思うけど、状況の説明を改めて試みておく。 πは素元、eは絶対分岐指数であった。π=√5, e=2が上記の例であった。 e<(p-1) [この条件の由来は後に説明する] のときは、上記の例と同様の状況が成り立つ: すなわち任意の主単数uは、 u=(1+π)^c_1 * (1+π^2)*c_2 * ... * (1+π^e)^c_e [c_1,..,c_e∈Z_p] の形で一意的に表せる。 具体的にu=1+a_1*π+a_2*π^2+a_3*π^3+a_4*π^4+... を実現することを考える。 c_1(をpで割ったあまり)を調整して、a_1を合わせる。 c_2(をpで割ったあまり)を調整して、a_2を合わせる。 .. c_e(をpで割ったあまり)を調整して、a_eを合わせる。 次に、 c_1をp刻みで増やしながら、p^2で割ったあまりを調整すると、a_(e+1)が合わせられるのである。 これは、(1+π)^pを展開すると、1+pπ+...+π^pとなることを観察し、 v(pπ)=e+1 であり、残りの項の付値はこれより大きいことに注目する。 (特に最後の項の付値がv(π^p)=pであり、ここが条件e<(p-1)が必要な由来である。) そういうわけで、(1+π)^pを何回か掛ければ π^(e+1)の係数を1からpまでの好きな値にできる。 (ここではf=1の場合に限った説明で、f≠1のときは生成元が複数必要になる。後で少し触れる。) 同様に、(1+π^2)^pを展開すると、1+pπ^2+...+π^2pであり、 同じ議論で、これを何回か掛ければ、π^(e+2)の係数を1からpまでの好きな値にできる。 ・この議論は、[結果1]の3番目の内容に相当する。 e≧p-1の場合も、k>e/(p-1)に限れば、同じ議論ができる: 一般的な主単数のp乗を考えるので、1+π^kの代わりに1+aπ^kのp乗を考える。[v(a)=0] (1+aπ^k)^p を展開すると 1+apπ^k+...+a^p*π^(kp)であり kの条件のおかげで、apπ^kが「支配的」となる。 (残りの項の付値が、apπ^kの付値より大きいということである。) そういうわけで、この場合は、ちょうどk次主単数のp乗は、ちょうど(k+e)次主単数となる。 (これは、初等的な世界で、指数持ち上げの補題として知られている。) [結果1]の他の結果も同様の議論で得られる: ・一方、k<e/(p-1)の場合は、a^p*π^(kp)の項が支配的となる。 そういうわけで、この場合は、ちょうどk次主単数のp乗はちょうど(kp)次主単数となる。 (初等的な世界で見かけないのは、e=1ではこの場合が現れないからである) ・k=e/(p-1)の場合は、k+e=kpであり、2つの項がともに支配的となる。  なので、ちょうどk次主単数のp乗は、(k+e=kp)次主単数であることは言えるが、  ちょうど(k+e=kp)次主単数とは限らない。  実際、1のp乗根は、e/(p-1)次主単数であるが、そのp乗は1だから、∞次主単数になってしまう。 ・ちょうど(k+e=kp)次主単数になると言える状況は以下の通りらしい: ・・Kが1の原始p乗根を持たない場合 ・・Kが1の原始p乗根を持つが、u=(1+a*ζ)とおいたときに、aの剰余類がF_pに属さないとき(f≠1が必要)。
実際にeが大きい例として、p=3, e=7, f=1 の例を観察する。 V(x)=1/(p-1)となるようなxが存在しないほうが簡単である(k=e/(p-1)の場合を考えなくて済む。) Q(π=3^(1/7))を考える。π^7=3。 この場合の結果は: 「I={1,2,4,5,7,8,10}とする。任意の主単数uは、 u=Π(1+π^i)^c_i [i∈I, c_i∈Z_3] の形で一意的に表される。」 先のように、1+a_1*π+a_2*π^2+a_3*π^3+a_4*π^4+... を実現する手順を考える。 (1+π)^3 = 1+π^8+π^9+π^3 (3=π^7を使っている) (1+π^2)^3 = 1+π^9+π^10+π^6 (1+π^4)^3 = 1+π^11+π^12+π^12 という様子に注意する。 (先のV(π^i)=1/(p-1)あるいはv(π^i)=e/(p-1)という境界は、i=7/2であることに注意する。) c_1を3刻みで増やした時にはa_3が調整される c_2を3刻みで増やした時にはa_6が調整される c_4を3刻みで増やした時にはa_11が調整される この違いがややこしさを作っている。 c_1を9刻みで増やした時には、a_9が調整される。 c_2を9刻みで増やした時には、a_13が調整される。 i=7/2を超えたところからは、調整される係数は7個ずつずれる規則的な挙動となるわけである。 そういうわけで c_1を3で割ったあまりを調整して、a_1を合わせる。 c_2を3で割ったあまりを調整して、a_2を合わせる。 c_1を3刻みで増やして、a_3を合わせる。 c_4,c_5 を調整して、a_4,a_5を合わせる。 c_2を3で割ったあまりを調整して、a_6を合わせる。 c_7,c_8を調整して、a_7,a_8を合わせる。 c_1を9刻みで増やして、a_9を合わせる。 c_10を調整して、a_10を合わせる。 c_4,c_5を3刻みで増やして、a_11,a_12を合わせる c_2を9刻みで増やして、a_13を合わせる。 この先 a_kを合わせるには a_(k-7)を合わせるのに使ったものを使えばちょうど良いことになる。 ・一般の p,eを与えられたときにこの集合Iをどうやって構成するか。 実は、「1から順番にpと互いに素な整数をe個書き下せば良い」 これで上記のような仕組みでうまくいくのは、ちょっと不思議・・。
次に、V(x)=1/(p-1)を避けない場合を観察しよう。 具体的には、eが(p-1)の倍数の場合である。 p=3,e=8,f=1 の場合を観察する。 ここでは1の原始3乗根を含むものを考えるために、π^8=-3とする。 また結果から提示する: 「I={1,2,4,5,7,8,10,11,12}とする。任意の主単数uは、 u=Π(1+π^i)^c_i [i∈I, c_i∈Z_3] の形で表されるが、一意的ではない」 ζ=(-1+π^4)/2 が1の原始3乗根であることに注意する。 (これは、1-π^4-π^8+π^12+π^16-π^20-...などとも展開できる。) Iから4を除いたものを I'={1,2,5,7,8,10,11,12} とする。そうすると: 「任意の主単数uは、 u=ζ^k*Π(1+π^i)^c_i [k∈{0,1,2}, i∈I', c_i∈Z_3] の形で表されて、一意的である。」 と記述することができる。 詳細な観察は、省略する・・。 1つの指摘として、(1+π^i)という因子は、あまり必然的でなくて、 v(θ)=0なθを使った (1+θπ^i) の形をしていれば良い。 (実際、元のpdfにはそのような一般的な形で書いてある。) それを今回のi=4の場合に特殊なθを採用すれば、それが1の原始3乗根となって群構造が分かりやすくできる と解釈している。 一般のp,eに対するIの構成は、 「1から順番にpと互いに素な整数をe個書き下して、 i=e'/(p-1)を除いて、i=pe/(p-1)を付け加える」である。 ここで、e'はeのうちp以外の素因子からなる部分である。 (eがpでr回割り切れる場合には、1の原始p^(r+1)乗根を考慮することになる)
f≠1の場合が残っているが、これはそれほど複雑なことはない。 今まで扱ったf=1の場合の主単数の記述は、 ・K=Q_5のとき u=(1+5)^c [c∈Z_5] ・K=Q_5(√5)のとき u=(1+√5)^c * (1+5)^d [c,d∈Z_5] ・K=Q_3(π), π^7=3 のときは I={1,2,4,5,7,8,10} として u=Π(1+π^i)^c_i [c_i∈Z_5] ・K=Q_3(π), π^8=-3 のときは I={1,2,5,7,8,10,11,12} として u=ζ^k*Π(1+π^i)^c_i [k∈{0,1,2}, c_i∈Z_5] であった。 これらに相当するf=2の結果を書く。 ・K=Q_5(√2)のとき u=6^c * (1+5√2)^c' [c,c'∈Z_5] ・K=Q_5(√2,√5)のとき u=(1+√5)^c * (1+√2√5)^c' * (1+5)^d * (1+5√2)^d' [c,c',d,d'∈Z_5] ・K=Q_3(i,π), π^7=3 のときは I={1,2,4,5,7,8,10} として u=Π(1+π^i)^c_i*Π(1+i*π^i)^c'_i [c_i,c'_i∈Z_5] ・K=Q_3(i,π), π^8=-3 のときは I={1,2,5,7,8,10,11,12} として u=ζ^k*Π(1+π^i)^c_i*Π(1+i*π^i)^c'_i [k∈{0,1,2}, c_i,c'_i∈Z_5] となる。 (1+θπ)という因子の所の、θを不分岐拡大の基底だけ増やすようにすれば良い。 そういうわけで、一般的には次のようになる: 【主単数群のZ_p加群構造】 局所体の主単数は、 u = ζ^k * Π(1+θ_j*π^i)*c_ij [k∈{0,..,p^r-1}, i∈I, j∈J, c_ij∈Z_p] |I|=e, |J|=f, ζは1の原始p^r乗根 の形で一意的に表せる。 結局、次のような結果となる。 (Q_pを有限次拡大した局所体について、) 「主単数群の構造は、位数p^rのtorsion(rは0かもしれない)と、ef個のZ_pの直積である。」 ・これは、乗法群の構造を示しているだけでなく、Z_p加群としての位相の様子も示している。
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